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2 学園編
67 タチアナ様最強!
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「あー、ゴホンゴホン」
セオドアがわざとらしく咳払いをしてみせる。
いきなりハルとステラが抱き合って口から魂が飛び出すほど驚きながらも頑張って空気に徹していたが、もう限界だ。
抱き合っていた二人は慌てて身体を離す。
離れた瞬間に驚くほど寂しい気持ちになり、思わずまた抱きつきそうになってしまう。けれども。
「タチアナ様がおいでになりました。」
セオドアが告げた。
「あー」そうだ、タチアナを呼んでおいたのだった。
すっかり忘れていた。ハルヴァートは頬が熱くなるのを感じていた。
ステラを見るとステラの頬も真っ赤に紅潮していた。
まるで真っ赤に熟れた果実のようだ。
(‥‥‥かわいいな)
初めて浮かんだその感想に、ハルヴァートははっとする。
(落ち着け、落ち着くのだ。そう、ここにいるのは騎士団の‥‥‥)
冷静になるために騎士団の中でもっとも筋肉質で毛むくじゃらの騎士の姿を思い浮かべる。
騎士の体臭まで思い出した瞬間にすっと頭から血が下がり、冷静になった。
(よし)
「入れ」いつもの声に戻ったハルヴァートがドアに向かって声をかける。
「失礼します。」
タチアナはいつもどおりの落ち着いた雰囲気で部屋に入ってきた。
「お呼びでしょうか」
うっすらと微笑みを浮かべながら、問いかける。
「うむ。」平常心、平常心‥‥‥
ハルヴァートはこの幼馴染の前で初めてと言えるぐらい動揺していたが、本人は完璧に隠せていると思っていた。
が。
タチアナの瞳が面白そうにキラリと光る。
「あー、ごほん。えー、その、ステラの相談によく乗ってやってくれ。」
うん、いつもどおりに話せている。
タチアナの瞳がもの言いたげに輝いているように見えるが気のせいに違いない。
「よろしく頼む」
ハルヴァートはそれだけ言うとタチアナの返事も待たずに部屋から出ていった。
ハルヴァートが退出し、ドアが閉まると同時にタチアナは悪戯っぽく目を煌めかせて笑いながら二人を振り返った。
「一体、何をやらかしたんですか?あの殿下があそこまで冷静さを失うなんて、初めてじゃないですか!」
「えっ?氷みたいに冷たかったじゃないですか?いつもどーり!」
ステラが慌てて言う。セオドアの目が半目になってるけどここは無視。
「いえいえ、超熱くなってましたよね?冷静さのカケラもないほど」
タチアナの目はキラキラといたずらっぽく輝いている。まるで新しいおもちゃを見つけた時のように。
バレてる。なんで?私とセオドアは顔を見合わせた。
「あんなに余裕のない殿下は初めて見ましたよ!」
「いえいえ、怒ってた時はめちゃ怖かったですから!」
必死で言い繕うけど、全然響かないみたい。これが、幼馴染パワーってこと?
「まあ、慣れればそれほどじゃないですよ。多分?もっと前は怖かったです。機械にしか見えなかったので。ステラ様が現れてからは殿下も人間みたいになってきましたからね~」
「タチアナ様、何気に超失礼なんじゃ‥‥」
「人間みたいって‥‥‥一応人間なのでは?」
私たちは戸惑うばかりだ。
あんなにおっかない王太子相手にこの方は何を言っているんだろうか。
さっきはちょっとだけ優しかったけどさぁ。その前までは鬼だよ、鬼!
「子どもの頃は本気でネジ探しちゃったぐらい、機械っぽかったんですよね~」
「タチアナ様って、結構‥‥」
「実は最強じゃね?」
「まあ、機械相手でもなんとかなりますからね~おほほほほ~~」
タチアナ様は楽しそうに高笑いした。あの氷の王太子を相手にしながらこの状況を楽しんでいる強メンタル!
セオと私はこの瞬間、タチアナ様を敵に回してはいけないと確信したのだった。
「で、何があったのか教えてくださいな」
タチアナがにっこり笑うと、二人は正直にその日にあったことを話したのだった。だって、最強すぎて隠すとか無理だって!でも、ハグのところだけはナイショだよ?
「ステラ様は、街に歌がないことが気になったと。その理由が教会にあると思って探しに行かれたという理解でよろしかったですか?」
タチアナ様は私の下手な説明をうまくまとめてくれた。
「はいそうです。」
「なぜリカルド先生に聞こうと思わなかったのですか?それが一番手っ取り早いのでは?」
私とセオドアは思わず目を見合わせてしまった。
「単なるカンですが。リカルド先生はちょっとヤバイと思います。聖女狂を拗らせているというか‥‥‥」
「ついて行ったら二度と戻れない予感しかありませんでしたよ。この間の授業では」
タチアナ様は「そうですか」と言って考え込んだ。
「とりあえず、最低限の知識を急ぎ吸収しなければならないようですね。そこはハルヴァート様を使いましょう!」
「つ、使うって‥‥一国の王太子をそんな露骨な‥‥‥」
タチアナ様はにっこりと笑った。
「王太子とはいえ、ハルヴァート様はステラ様の婚約者ではありませんか。この際、婚約者としての特権をフルに活用しましょう!」
セオドアがわざとらしく咳払いをしてみせる。
いきなりハルとステラが抱き合って口から魂が飛び出すほど驚きながらも頑張って空気に徹していたが、もう限界だ。
抱き合っていた二人は慌てて身体を離す。
離れた瞬間に驚くほど寂しい気持ちになり、思わずまた抱きつきそうになってしまう。けれども。
「タチアナ様がおいでになりました。」
セオドアが告げた。
「あー」そうだ、タチアナを呼んでおいたのだった。
すっかり忘れていた。ハルヴァートは頬が熱くなるのを感じていた。
ステラを見るとステラの頬も真っ赤に紅潮していた。
まるで真っ赤に熟れた果実のようだ。
(‥‥‥かわいいな)
初めて浮かんだその感想に、ハルヴァートははっとする。
(落ち着け、落ち着くのだ。そう、ここにいるのは騎士団の‥‥‥)
冷静になるために騎士団の中でもっとも筋肉質で毛むくじゃらの騎士の姿を思い浮かべる。
騎士の体臭まで思い出した瞬間にすっと頭から血が下がり、冷静になった。
(よし)
「入れ」いつもの声に戻ったハルヴァートがドアに向かって声をかける。
「失礼します。」
タチアナはいつもどおりの落ち着いた雰囲気で部屋に入ってきた。
「お呼びでしょうか」
うっすらと微笑みを浮かべながら、問いかける。
「うむ。」平常心、平常心‥‥‥
ハルヴァートはこの幼馴染の前で初めてと言えるぐらい動揺していたが、本人は完璧に隠せていると思っていた。
が。
タチアナの瞳が面白そうにキラリと光る。
「あー、ごほん。えー、その、ステラの相談によく乗ってやってくれ。」
うん、いつもどおりに話せている。
タチアナの瞳がもの言いたげに輝いているように見えるが気のせいに違いない。
「よろしく頼む」
ハルヴァートはそれだけ言うとタチアナの返事も待たずに部屋から出ていった。
ハルヴァートが退出し、ドアが閉まると同時にタチアナは悪戯っぽく目を煌めかせて笑いながら二人を振り返った。
「一体、何をやらかしたんですか?あの殿下があそこまで冷静さを失うなんて、初めてじゃないですか!」
「えっ?氷みたいに冷たかったじゃないですか?いつもどーり!」
ステラが慌てて言う。セオドアの目が半目になってるけどここは無視。
「いえいえ、超熱くなってましたよね?冷静さのカケラもないほど」
タチアナの目はキラキラといたずらっぽく輝いている。まるで新しいおもちゃを見つけた時のように。
バレてる。なんで?私とセオドアは顔を見合わせた。
「あんなに余裕のない殿下は初めて見ましたよ!」
「いえいえ、怒ってた時はめちゃ怖かったですから!」
必死で言い繕うけど、全然響かないみたい。これが、幼馴染パワーってこと?
「まあ、慣れればそれほどじゃないですよ。多分?もっと前は怖かったです。機械にしか見えなかったので。ステラ様が現れてからは殿下も人間みたいになってきましたからね~」
「タチアナ様、何気に超失礼なんじゃ‥‥」
「人間みたいって‥‥‥一応人間なのでは?」
私たちは戸惑うばかりだ。
あんなにおっかない王太子相手にこの方は何を言っているんだろうか。
さっきはちょっとだけ優しかったけどさぁ。その前までは鬼だよ、鬼!
「子どもの頃は本気でネジ探しちゃったぐらい、機械っぽかったんですよね~」
「タチアナ様って、結構‥‥」
「実は最強じゃね?」
「まあ、機械相手でもなんとかなりますからね~おほほほほ~~」
タチアナ様は楽しそうに高笑いした。あの氷の王太子を相手にしながらこの状況を楽しんでいる強メンタル!
セオと私はこの瞬間、タチアナ様を敵に回してはいけないと確信したのだった。
「で、何があったのか教えてくださいな」
タチアナがにっこり笑うと、二人は正直にその日にあったことを話したのだった。だって、最強すぎて隠すとか無理だって!でも、ハグのところだけはナイショだよ?
「ステラ様は、街に歌がないことが気になったと。その理由が教会にあると思って探しに行かれたという理解でよろしかったですか?」
タチアナ様は私の下手な説明をうまくまとめてくれた。
「はいそうです。」
「なぜリカルド先生に聞こうと思わなかったのですか?それが一番手っ取り早いのでは?」
私とセオドアは思わず目を見合わせてしまった。
「単なるカンですが。リカルド先生はちょっとヤバイと思います。聖女狂を拗らせているというか‥‥‥」
「ついて行ったら二度と戻れない予感しかありませんでしたよ。この間の授業では」
タチアナ様は「そうですか」と言って考え込んだ。
「とりあえず、最低限の知識を急ぎ吸収しなければならないようですね。そこはハルヴァート様を使いましょう!」
「つ、使うって‥‥一国の王太子をそんな露骨な‥‥‥」
タチアナ様はにっこりと笑った。
「王太子とはいえ、ハルヴァート様はステラ様の婚約者ではありませんか。この際、婚約者としての特権をフルに活用しましょう!」
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