136 / 247
3 ヒロインへの道
132 断罪されました。
しおりを挟む
「ステラ・ディライト!あなたを告発いたします。」
新年を祝う祝賀会の開会を宣言するためステージに上がったルシアナ様が突然、宣言した。
落ち着きのあるその声は、会場の中を滑るように響き渡った。
それまで、年が明け久しぶりに会う友人たちと笑いながら挨拶を交わしていた生徒たちは、突然の告発に静まり返った。
一体、何が起こったんだろう?とステージに注目する。
名家の令嬢らしく、高級シルクで誂えた真白なドレスがライトの光に照らされ、神々しく輝いている。背筋をピンと伸ばし、顎を心なしか上向けたルシアナは、迷える子羊たちに啓示を下す女神のようだ。
その視線はステージ下にいる私をひるむことなくまっすぐに見つめている。
どちらに正義があるのかは明らかだ、とでもというように。
私はぽかんとしてルシアナ様を見返してしまった。
告発って、何?
今まで、ルシアナ様と敵対していたつもりはなかったけど、どう言うことなんだろう。
でも、そうだ。いつも予感はあった。いつだって不安だった。
底のしれないルシアナ様と話すことがいつも不安だった。
だって、あの方からはなんの感情も伝わって来なさすぎた。
私に対する不平不満も好意もなんの感情も伝わって来なかったんだ。
だからおかしいとは思っていた。
でも、どういうこと?
告発って?
私は静かにステージ上にいるルシアナ様を見つめた。
恥じるようなことはない。
聖女ぶったりもしていない。
聖女であることをかさにきてもいない。
であれば、何?
ルシアナ様が私を見下ろした。
嫌悪。
憎悪。
ぞっとするほどの憎しみが私に伝わってきた。
こんなに憎まれていたんだ。
この人は、こんなに私を長いこと憎んでいた。怖いくらい。
ここまで強い憎しみを受けたことはない。
暴力的とも言えるその感情に涙が出そうになる。
でも、引けない。
「何事だ」
ルシアナ様の次に、挨拶をする予定だったハル様が割って入った。
「告発とは穏やかではないな。新年を祝う会にふさわしくもない。副会長ともあろう者が場もわきまえず、どうした」
冷静なハル様の声にほっとする。
「お控えください」
硬く、冷たい声。ルシアナ様の静かな怒りが伝わってくる。
この人はハル様のことも怒っているらしい。
突然始まった断罪劇に生徒たちは混乱ているようだ。
ルシアナ様はハル様の元婚約者候補だったけど、ずっと前に穏便に解消されているし、しかも穏やかに生徒会の役員を一緒に務めていたはずなのに?
「皆さん、お静かに」
ルシアナ様が声を上げると、生徒たちはルシアナに注目した。
もしや、これは愛憎のもつれ?ロイヤルな三角関係とか、こんな面白いイベント、見逃せない!
全校生徒がルシアナが次に何を言い出すのかワクワクし始めた。
ちょっと、みんな鼻息が荒いって。そりゃ、当事者じゃないからってさあ。
私はセオドアと顔を見合わせると、ステージ上のルシアナ様を見つめた。
「王太子殿下は、聖女を名乗るステラ嬢に『魅了』をかけられていらっしゃいます」
「えっ?」
「はああ?」
「魅了?」
「やっぱり!」
ホール内がどよめいた。
魅了とは、噂にしか聞いたことのない禁術ではないのか。
戦争兵器として開発された魅了は、王族や軍人など国の中枢にいる者や情報を持つ者に対して使われる呪いの一種だ。呪いをかけられた者はどのような事情があろうと、かけ手に夢中になり、判断を誤るという。
さざ波のように生徒たちの間にひそひそ声が広がる。
王太子は聖女に会ってすぐに婚約者候補たちとのお茶会を中止し、ステラを婚約者として求めたという。
今まで生徒たちが憧れ、胸をときめかせたロマンスは魅了によるものだったのか。
「うまく行き過ぎだと思ったのよ」
「おかしいと思ってた」
どこかから声が聞こえてくる。
アリアとか、ルシアナ様の取り巻きがルシアナ様を応援するように声を上げている。
ただ、魅了って、私だって噂にしか聞いたことないし、どうやったらかけられるのかわからない。
でも、かけてないことを証明することももしかして難しいんじゃないの?
これは「チカンやってません」理論?
いや、そんなこと考えてる場合じゃない、ルシアナ様の私への攻撃は終わってない。
「聖女を名乗るステラ嬢は、さらに周りの男子生徒たちも魅了し、ふしだらな関係を持っています」
「えっ」
誰かが思わず発した大きな声を合図にしたように、ひそひそ声のトーンが少しずつ上がっていった。
「ちょっと、待ってください。なんのことかすらわかりません。魅了って具体的になんなのかすらわかりません。しかも、周りの男子生徒とふしだらな関係って、事実無根すぎて反論する必要すらないほど、バカバカしい嘘です。なぜ突然こんな嘘で私を貶めようとするのですか。しかも私だけじゃありません、王太子殿下や私の周りにいる男子生徒たちにも失礼ではありませんか」
私が反論すると、ルシアナ嬢はせせらわらうような表情で私を見た。
「もうこれ以上は騙されませんよ。証拠は上がってるんですから」
新年を祝う祝賀会の開会を宣言するためステージに上がったルシアナ様が突然、宣言した。
落ち着きのあるその声は、会場の中を滑るように響き渡った。
それまで、年が明け久しぶりに会う友人たちと笑いながら挨拶を交わしていた生徒たちは、突然の告発に静まり返った。
一体、何が起こったんだろう?とステージに注目する。
名家の令嬢らしく、高級シルクで誂えた真白なドレスがライトの光に照らされ、神々しく輝いている。背筋をピンと伸ばし、顎を心なしか上向けたルシアナは、迷える子羊たちに啓示を下す女神のようだ。
その視線はステージ下にいる私をひるむことなくまっすぐに見つめている。
どちらに正義があるのかは明らかだ、とでもというように。
私はぽかんとしてルシアナ様を見返してしまった。
告発って、何?
今まで、ルシアナ様と敵対していたつもりはなかったけど、どう言うことなんだろう。
でも、そうだ。いつも予感はあった。いつだって不安だった。
底のしれないルシアナ様と話すことがいつも不安だった。
だって、あの方からはなんの感情も伝わって来なさすぎた。
私に対する不平不満も好意もなんの感情も伝わって来なかったんだ。
だからおかしいとは思っていた。
でも、どういうこと?
告発って?
私は静かにステージ上にいるルシアナ様を見つめた。
恥じるようなことはない。
聖女ぶったりもしていない。
聖女であることをかさにきてもいない。
であれば、何?
ルシアナ様が私を見下ろした。
嫌悪。
憎悪。
ぞっとするほどの憎しみが私に伝わってきた。
こんなに憎まれていたんだ。
この人は、こんなに私を長いこと憎んでいた。怖いくらい。
ここまで強い憎しみを受けたことはない。
暴力的とも言えるその感情に涙が出そうになる。
でも、引けない。
「何事だ」
ルシアナ様の次に、挨拶をする予定だったハル様が割って入った。
「告発とは穏やかではないな。新年を祝う会にふさわしくもない。副会長ともあろう者が場もわきまえず、どうした」
冷静なハル様の声にほっとする。
「お控えください」
硬く、冷たい声。ルシアナ様の静かな怒りが伝わってくる。
この人はハル様のことも怒っているらしい。
突然始まった断罪劇に生徒たちは混乱ているようだ。
ルシアナ様はハル様の元婚約者候補だったけど、ずっと前に穏便に解消されているし、しかも穏やかに生徒会の役員を一緒に務めていたはずなのに?
「皆さん、お静かに」
ルシアナ様が声を上げると、生徒たちはルシアナに注目した。
もしや、これは愛憎のもつれ?ロイヤルな三角関係とか、こんな面白いイベント、見逃せない!
全校生徒がルシアナが次に何を言い出すのかワクワクし始めた。
ちょっと、みんな鼻息が荒いって。そりゃ、当事者じゃないからってさあ。
私はセオドアと顔を見合わせると、ステージ上のルシアナ様を見つめた。
「王太子殿下は、聖女を名乗るステラ嬢に『魅了』をかけられていらっしゃいます」
「えっ?」
「はああ?」
「魅了?」
「やっぱり!」
ホール内がどよめいた。
魅了とは、噂にしか聞いたことのない禁術ではないのか。
戦争兵器として開発された魅了は、王族や軍人など国の中枢にいる者や情報を持つ者に対して使われる呪いの一種だ。呪いをかけられた者はどのような事情があろうと、かけ手に夢中になり、判断を誤るという。
さざ波のように生徒たちの間にひそひそ声が広がる。
王太子は聖女に会ってすぐに婚約者候補たちとのお茶会を中止し、ステラを婚約者として求めたという。
今まで生徒たちが憧れ、胸をときめかせたロマンスは魅了によるものだったのか。
「うまく行き過ぎだと思ったのよ」
「おかしいと思ってた」
どこかから声が聞こえてくる。
アリアとか、ルシアナ様の取り巻きがルシアナ様を応援するように声を上げている。
ただ、魅了って、私だって噂にしか聞いたことないし、どうやったらかけられるのかわからない。
でも、かけてないことを証明することももしかして難しいんじゃないの?
これは「チカンやってません」理論?
いや、そんなこと考えてる場合じゃない、ルシアナ様の私への攻撃は終わってない。
「聖女を名乗るステラ嬢は、さらに周りの男子生徒たちも魅了し、ふしだらな関係を持っています」
「えっ」
誰かが思わず発した大きな声を合図にしたように、ひそひそ声のトーンが少しずつ上がっていった。
「ちょっと、待ってください。なんのことかすらわかりません。魅了って具体的になんなのかすらわかりません。しかも、周りの男子生徒とふしだらな関係って、事実無根すぎて反論する必要すらないほど、バカバカしい嘘です。なぜ突然こんな嘘で私を貶めようとするのですか。しかも私だけじゃありません、王太子殿下や私の周りにいる男子生徒たちにも失礼ではありませんか」
私が反論すると、ルシアナ嬢はせせらわらうような表情で私を見た。
「もうこれ以上は騙されませんよ。証拠は上がってるんですから」
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる