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3 ヒロインへの道
133 断罪されました。2
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「それだけではありません。聖女の実家であることをかさにきて、ディライト領では粗雑な絹を高値で売りつけています。」
すでにひそひそ声はざわざわ声にまで音量が上がっていった。
噂が噂を呼ぶということなのだろうか、勝手に納得するものまで出始めた。
私の反論なんてまるで無視。
ハル様は魅了を受けている存在として、反論を封じられた格好だ。
「さらに、義母である男爵夫人は孤児を集め、人身売買をしているとの噂まであります」
「そんなの犯罪だろ!」
誰かが大声で叫ぶと、生徒たちは蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
「いままで、騙されてたってこと?」
「嘘でしょ」
「でも、ルシアナ様がおっしゃってるんだから間違いない」
「そんなまさか」
「王太子殿下も私たちも騙されているの?」
「なんて女」
「前から憎らしいと思っていたのよ」
「みなさん、このような女が将来の王妃になることを認めてもよろしいんでしょうか。今日私のこの告発を先生方はなぜ止めないのでしょうか。その理由は明らかです。先生方もご存知だからです。正義の鉄槌が下るのを妨害してはならないとご理解いただいているからです!」
会場の中は大混乱になった。
大声で私を非難する者、泣き出す者、そういえばと無責任な噂を撒き散らす者、無言を貫く者と、てんでんばらばらな反応であふれかえった。
「そして一番大切なことをおしらせしなければなりません!」
ルシアナの声に生徒たちは息を飲んだ。
一番大切なこと、とは?十分すぎるほどの告発にこれ以上があるのか?
針が落ちても聞こえるほどの静寂の中、ルシアナが、さも苦しいといいたげな表情をうかべながら、秘密を打ち明けるように囁いた。
「ステラ嬢は聖女ではありません」
「聖女じゃないって、どういうことだよ!」
誰かが大きな声で叫んだ。
「その通りの意味です。ステラ嬢は聖女ではありません。そしてそのことは誰よりも本人がご存知なはず。そうですよね?ステラさん?」
会場にいた全員の視線がステラに集中した。
ステラは大きな瞳を揺らめかせながら、俯いた。
「本当のことをおっしゃいなさいな。聖女様?」
こみ上げる笑いを抑えられないというように、ルシアナの頬がかすかに歪んだ。
「どうんなんだよ!」
「はっきりしろよ!」
会場内をヤジが飛ぶ。
ハル様がヤジを飛ばした生徒を見ると、その生徒はヒョイっと首をすくめた。
「ルシアナ、お前というやつは‥‥‥」
ハル様が唸るように言うと、ルシアナ様はバカにしたように嗤った。
そこには愛情も尊敬の念もない。ただ、恨みだけが募って真っ黒に染め上がった心が見えた。
この人の本音が初めて見えた。
それがこんなに真っ黒な心だなんて、すごく残念だ。
「‥‥‥そもそも、聖女とは、自ら名乗って聖女になるものではありません。」
「どういうこと?あなた特別な力もなしに聖女だって名乗って皆を騙してたってこと?」
「騙したつもりはありません。でも私はまだ聖女の認定は受けていないのは事実です」
「ふざけるな!」
「どういうつもりだ!!」
怒号が飛び、何人かの生徒が私に詰め寄ってきた。
こわい、そう思った瞬間に、ジョセフが私の前に立った。
「手を触れるな」
ジョセフは普段の穏やかな顔とは全く違う、鋭い視線で周囲を見回した。
大柄なジョセフから睨みつけられると、軽い気持ちでステラを糾弾していた者たちは腰が引け始める。
「聖女とふしだらな関係にある方って、ジョセフさま?」
「まさか‥‥‥」
ヒソヒソと囁かれる声が聞こえたのか、一瞬眉をひそめたジョセフは私を振り返り、
「大丈夫か」
と小声で尋ねた。
私が目だけで頷くと、ジョセフは生徒たちを振り返り、堂々と言い放った。
「私は王太子殿下から直々にステラ様の護衛を任されている。下賎な噂に惑わされるな」
「そのとおりだ。ステラに害をなす者は私に弓引く者とみなす。品のない話をするな。」
壇上から降りてきたハル様が私の側に立ち、周囲を見回した。
魅了を受けている疑いがあるとしても王太子からの視線の鋭さには耐えきれず、生徒たちは視線をあちこちにさまよわせた。
「ルシアナ、本日の告発とやらは一体どういうことだ」
ハル様の冷たい声が響く。
「そもそも、この式典が始まるまでは、ステラの身の回りで頼まれもしないのに世話を焼いていただろう。あれは全て偽りか」
「偽りではございません」
ルシアナは鼻をツンと上に向けた。
「でも、本日必ず聖女様に出席していただくために少しお手伝いを差し上げたまで。私とて、心から聖女様をお慕いしておりましたのに、このような結末は残念でなりません。でも真実は一つでございます。どんなに辛くても‥‥‥」
声を震わせるルシアナの告白に、涙を流している者までいる。
「このような猿芝居、騙される輩がいるのか」
ハル様が呟きながら、目を眇め、会場を見回した。
ハル様の視線で私を退出させようとしていることがわかった。
すっと指をあげると、影の者が了解したことを知らせる光が一瞬走る。
「お待ちください」
私は思わず声を上げた。
「私が聖女の認定をまだ受けていないのは事実です。ですが、男爵領について言われたことは全て事実無根です。領民の名誉のために反論させていただきます。魅了やふしだらな関係とやらもそのような事実はありません。」
すでにひそひそ声はざわざわ声にまで音量が上がっていった。
噂が噂を呼ぶということなのだろうか、勝手に納得するものまで出始めた。
私の反論なんてまるで無視。
ハル様は魅了を受けている存在として、反論を封じられた格好だ。
「さらに、義母である男爵夫人は孤児を集め、人身売買をしているとの噂まであります」
「そんなの犯罪だろ!」
誰かが大声で叫ぶと、生徒たちは蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
「いままで、騙されてたってこと?」
「嘘でしょ」
「でも、ルシアナ様がおっしゃってるんだから間違いない」
「そんなまさか」
「王太子殿下も私たちも騙されているの?」
「なんて女」
「前から憎らしいと思っていたのよ」
「みなさん、このような女が将来の王妃になることを認めてもよろしいんでしょうか。今日私のこの告発を先生方はなぜ止めないのでしょうか。その理由は明らかです。先生方もご存知だからです。正義の鉄槌が下るのを妨害してはならないとご理解いただいているからです!」
会場の中は大混乱になった。
大声で私を非難する者、泣き出す者、そういえばと無責任な噂を撒き散らす者、無言を貫く者と、てんでんばらばらな反応であふれかえった。
「そして一番大切なことをおしらせしなければなりません!」
ルシアナの声に生徒たちは息を飲んだ。
一番大切なこと、とは?十分すぎるほどの告発にこれ以上があるのか?
針が落ちても聞こえるほどの静寂の中、ルシアナが、さも苦しいといいたげな表情をうかべながら、秘密を打ち明けるように囁いた。
「ステラ嬢は聖女ではありません」
「聖女じゃないって、どういうことだよ!」
誰かが大きな声で叫んだ。
「その通りの意味です。ステラ嬢は聖女ではありません。そしてそのことは誰よりも本人がご存知なはず。そうですよね?ステラさん?」
会場にいた全員の視線がステラに集中した。
ステラは大きな瞳を揺らめかせながら、俯いた。
「本当のことをおっしゃいなさいな。聖女様?」
こみ上げる笑いを抑えられないというように、ルシアナの頬がかすかに歪んだ。
「どうんなんだよ!」
「はっきりしろよ!」
会場内をヤジが飛ぶ。
ハル様がヤジを飛ばした生徒を見ると、その生徒はヒョイっと首をすくめた。
「ルシアナ、お前というやつは‥‥‥」
ハル様が唸るように言うと、ルシアナ様はバカにしたように嗤った。
そこには愛情も尊敬の念もない。ただ、恨みだけが募って真っ黒に染め上がった心が見えた。
この人の本音が初めて見えた。
それがこんなに真っ黒な心だなんて、すごく残念だ。
「‥‥‥そもそも、聖女とは、自ら名乗って聖女になるものではありません。」
「どういうこと?あなた特別な力もなしに聖女だって名乗って皆を騙してたってこと?」
「騙したつもりはありません。でも私はまだ聖女の認定は受けていないのは事実です」
「ふざけるな!」
「どういうつもりだ!!」
怒号が飛び、何人かの生徒が私に詰め寄ってきた。
こわい、そう思った瞬間に、ジョセフが私の前に立った。
「手を触れるな」
ジョセフは普段の穏やかな顔とは全く違う、鋭い視線で周囲を見回した。
大柄なジョセフから睨みつけられると、軽い気持ちでステラを糾弾していた者たちは腰が引け始める。
「聖女とふしだらな関係にある方って、ジョセフさま?」
「まさか‥‥‥」
ヒソヒソと囁かれる声が聞こえたのか、一瞬眉をひそめたジョセフは私を振り返り、
「大丈夫か」
と小声で尋ねた。
私が目だけで頷くと、ジョセフは生徒たちを振り返り、堂々と言い放った。
「私は王太子殿下から直々にステラ様の護衛を任されている。下賎な噂に惑わされるな」
「そのとおりだ。ステラに害をなす者は私に弓引く者とみなす。品のない話をするな。」
壇上から降りてきたハル様が私の側に立ち、周囲を見回した。
魅了を受けている疑いがあるとしても王太子からの視線の鋭さには耐えきれず、生徒たちは視線をあちこちにさまよわせた。
「ルシアナ、本日の告発とやらは一体どういうことだ」
ハル様の冷たい声が響く。
「そもそも、この式典が始まるまでは、ステラの身の回りで頼まれもしないのに世話を焼いていただろう。あれは全て偽りか」
「偽りではございません」
ルシアナは鼻をツンと上に向けた。
「でも、本日必ず聖女様に出席していただくために少しお手伝いを差し上げたまで。私とて、心から聖女様をお慕いしておりましたのに、このような結末は残念でなりません。でも真実は一つでございます。どんなに辛くても‥‥‥」
声を震わせるルシアナの告白に、涙を流している者までいる。
「このような猿芝居、騙される輩がいるのか」
ハル様が呟きながら、目を眇め、会場を見回した。
ハル様の視線で私を退出させようとしていることがわかった。
すっと指をあげると、影の者が了解したことを知らせる光が一瞬走る。
「お待ちください」
私は思わず声を上げた。
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