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3 ヒロインへの道
134 悪意の楔
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「信じてくださる方もそうではない方もいらっしゃるかもしれませんが、真実は一つです。ルシアナ様のおっしゃるとおり」
「ステラ」
ハル様がかばうように私の肩を抱き、退出を促した。
「ルシアナ、後で話を聞こう」
ハル様の静かな声が響く。
そのまま出口へと向かう途中、ルシアナ様の鋭い声がかかった。
「婚約は解消していただきますわよ!」
ピタリと立ち止まったハル様が振り返る。
ハル様の全身から冷気が立ちのぼった。
「婚約解消はしない」
言葉で人を凍らせることができたなら、そのままその場にいた者たちの足元は凍りついてしまったに違いない。
でもルシアナ様は負けていなかった。
「何か勘違いしてらっしゃるようですが、殿下?」
ねっとりと絡みつくように、丁寧な口調でルシアナ様がハル様に言う。
「そもそも、聖女じゃなければ、王族と男爵家の私生児の婚姻なんて成り立ちません。なんなら後宮にお入れになってはいかがですか?」
嘲るような口調が空気中を舞った。
「もしくは、王太子の地位をお降りになってもよろしいかもしれません。我がアドランテ一族は、男爵家の私生児を正妃にお迎えになるような方にお仕えする気はございませんので。もちろん私一人でここまでできるとはお思いにならないでしょう?王妃様も同意見でしたよ」
「お前‥‥‥」
「そうそう、弟様がいらっしゃいましたよね?第二王子様も英明な方と伺っておりますよ。まだ婚約者もいらっしゃらなかったはず」
ルシアナ様は堪えきれない、というようにくすくすと笑い声を漏らした。
その笑い声は、緊迫したこの場面には妙に不似合いな狂気にも似た執着を感じさせた。
「お次は、学園などという中途半端な場所ではありませんわよ。国王陛下と評議員たちの前で、ステラの罪について断罪させていただきます。今まで散々聖女ぶって、男遊びをなさってきた方ですもの、断罪までに色々とご準備なさったら?お得意でしょ。そういうことは。」
「ルシアナ、いい加減にしろ!」
ハル様の声はどんどん低く、床を滑るように響いた。
「魅了を受けた王太子など、この後が見ものですわ。これまで私のことを便利屋のごとく使ったことを後悔なさるのね。私はこの国の筆頭公爵家の公女ですのよ。よく覚えていらして」
これって‥‥‥可愛さ余って憎さ百倍ってやつ?
ルシアナ様、いえルシアナの顔はハル様への怒りと私への憎しみで醜く歪んでいる。
この方はずっと、仕返しの機会を狙っていたんだ。
ずっとルシアナからの好意と見せかけた助力を受けるたびに不安になったのは、私を陥れるための地ならしをしていたに違いない。
今思えばそうだった。
いつだって、高貴で親切なルシアナ様と無知で傍若無人なステラと見えるように誘導されていた。そのことに気がついてはいたけれど、最高位にある令嬢からのお誘いを断れるわけもなく。
断れば聖女気取りだの聖女であることを嵩にきて調子に乗っているだの言われただろう。
「さ、ドアはあちらですわよ?」
ルシアナはにこやかにドアを指し示した。
その姿からは、長い期間かけて後ろ盾を得ているもの特有の自信が垣間見えた。
「それから、ステラさん?身の程をお知りになりなさい。そうでないと、いろいろ困ったことになるでしょうからね。」
ルシアナは私たちの間に楔を打ち込むように言い放つと、野良犬を追い払うかのような仕草で手を振った。もう、用はない、と。
ルシアナはずっと、私を引き摺り下ろす機会を伺っていたのだ。
だって、彼女は悪役令嬢だから。
ルシアナに比べればアリアなんて小者だった。
底浅い感情的な小娘。
でもルシアナは違う。じっくりと計画的に、自分の立場や身分をフルに使って私を潰そうと考えてたんだ。
美しいけど、狡猾。さすが、悪役令嬢だった。
「ステラ」
ハル様がかばうように私の肩を抱き、退出を促した。
「ルシアナ、後で話を聞こう」
ハル様の静かな声が響く。
そのまま出口へと向かう途中、ルシアナ様の鋭い声がかかった。
「婚約は解消していただきますわよ!」
ピタリと立ち止まったハル様が振り返る。
ハル様の全身から冷気が立ちのぼった。
「婚約解消はしない」
言葉で人を凍らせることができたなら、そのままその場にいた者たちの足元は凍りついてしまったに違いない。
でもルシアナ様は負けていなかった。
「何か勘違いしてらっしゃるようですが、殿下?」
ねっとりと絡みつくように、丁寧な口調でルシアナ様がハル様に言う。
「そもそも、聖女じゃなければ、王族と男爵家の私生児の婚姻なんて成り立ちません。なんなら後宮にお入れになってはいかがですか?」
嘲るような口調が空気中を舞った。
「もしくは、王太子の地位をお降りになってもよろしいかもしれません。我がアドランテ一族は、男爵家の私生児を正妃にお迎えになるような方にお仕えする気はございませんので。もちろん私一人でここまでできるとはお思いにならないでしょう?王妃様も同意見でしたよ」
「お前‥‥‥」
「そうそう、弟様がいらっしゃいましたよね?第二王子様も英明な方と伺っておりますよ。まだ婚約者もいらっしゃらなかったはず」
ルシアナ様は堪えきれない、というようにくすくすと笑い声を漏らした。
その笑い声は、緊迫したこの場面には妙に不似合いな狂気にも似た執着を感じさせた。
「お次は、学園などという中途半端な場所ではありませんわよ。国王陛下と評議員たちの前で、ステラの罪について断罪させていただきます。今まで散々聖女ぶって、男遊びをなさってきた方ですもの、断罪までに色々とご準備なさったら?お得意でしょ。そういうことは。」
「ルシアナ、いい加減にしろ!」
ハル様の声はどんどん低く、床を滑るように響いた。
「魅了を受けた王太子など、この後が見ものですわ。これまで私のことを便利屋のごとく使ったことを後悔なさるのね。私はこの国の筆頭公爵家の公女ですのよ。よく覚えていらして」
これって‥‥‥可愛さ余って憎さ百倍ってやつ?
ルシアナ様、いえルシアナの顔はハル様への怒りと私への憎しみで醜く歪んでいる。
この方はずっと、仕返しの機会を狙っていたんだ。
ずっとルシアナからの好意と見せかけた助力を受けるたびに不安になったのは、私を陥れるための地ならしをしていたに違いない。
今思えばそうだった。
いつだって、高貴で親切なルシアナ様と無知で傍若無人なステラと見えるように誘導されていた。そのことに気がついてはいたけれど、最高位にある令嬢からのお誘いを断れるわけもなく。
断れば聖女気取りだの聖女であることを嵩にきて調子に乗っているだの言われただろう。
「さ、ドアはあちらですわよ?」
ルシアナはにこやかにドアを指し示した。
その姿からは、長い期間かけて後ろ盾を得ているもの特有の自信が垣間見えた。
「それから、ステラさん?身の程をお知りになりなさい。そうでないと、いろいろ困ったことになるでしょうからね。」
ルシアナは私たちの間に楔を打ち込むように言い放つと、野良犬を追い払うかのような仕草で手を振った。もう、用はない、と。
ルシアナはずっと、私を引き摺り下ろす機会を伺っていたのだ。
だって、彼女は悪役令嬢だから。
ルシアナに比べればアリアなんて小者だった。
底浅い感情的な小娘。
でもルシアナは違う。じっくりと計画的に、自分の立場や身分をフルに使って私を潰そうと考えてたんだ。
美しいけど、狡猾。さすが、悪役令嬢だった。
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