そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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3 ヒロインへの道

152 ガウデン候と晩餐

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晩餐の時間、コンラッド家の長であるガウデン候にお目にかかることになった。
当面の庇護者である、ガウデン侯は予想通り、ムキムキマッチョの筋肉の塊みたいな人だった。
明るくて、まっすぐな愛妻家。そして、一人娘のリーラには甘い。
めったにないくらいわかりやすい人で安心する。

辺境では、自分を取り繕っている人は少ないみたい。
でも、その中でもこの人は真っ直ぐな情熱家で素敵な人だった。

「これは、お美しい!」
私が挨拶した後の第一声がこれ。
私が戸惑って手を引こうとすると、にっこり笑って「ゆっくりしていってください。兵士たちも喜びますから」と言ってくれた。

私がお礼を言うと、公爵の指示でケイレブが私の席までエスコートしてくれた。
瞳の奥に輝く賞賛にまだ慣れない。
こんな風にあけっぴろげに賞賛されることがこれまでなかったので、どう対処したらいいのかわからないのだ。
そう言えば、学園ではいつもセオやハル様が見守ってくれていたので、こういうことはなかったよなあ。
椅子を引いて主賓の席に座らされると、お尻の下がもぞもぞするような気がした。

隣にはジョセフが座ったけど、私が来る前に一悶着あったみたい。
本当は、剣も持ち込み禁止だけど、聖女の護衛騎士だからって特別に帯剣を許されたそう。
なんなら私の後ろに立ってますって言うジョセフをリーラと夫人が説得したらしい。

コンラッド家の3兄弟は、長男のケイレブが魔の森を守り、次男のエイダンが剣の名手として兵の訓練を担当している。三男のオーウェンは馬が好きで、馬の調教や訓練を担当してるんだって。
リーラは、いつかは家の為になる人と結婚して、後方から領地を守るつもりでいるって話を聞いたときには、自分の甘さを突きつけられたような気分になった。

「そう言えば、妙なことがあるんですよ」
ケイレブが肉に二股のフォークを突き刺しながら言った。

「ここんところ、急に森が落ち着いてるんです」
「森が落ち着いている?」
ガウデン候の目が光った。

「ここ数日の出来事なんだけど、小動物の魔獣化が収まっているんです。つい3日前には、魔獣化した鹿が目撃されたってのに、ネズミもうさぎもすっかり大人しくなっちまって、今日は魔獣化していないうさぎを捕獲したんです」
「魔獣化?」
ジョセフが顔を上げた。
「あー、他所から来た人にはわからないですよね。ここは魔の森と繋がってる土地なんですけど、数年前から時々小動物が魔獣化するんです。理由はわかりません。多分、魔の森の奥に魔物がいるんじゃないかって言われてるんですが、森の奥まで誰も辿り着けていないのでわからないんです。外からやってきた冒険者たちも魔の森に出かけていってそれっきり戻ってこないんでね」
「ケイレブ兄様」リーラが非難するような瞳でケイレブを見た。
「おっと、聖女様の前でする話じゃなかったかな」
「そうよ。まったくデリカシーに欠けるんだから」
「だって、ここにはそんなことにひるむ女性はいないしなあ?」
ケイレブが頭をかいた。
「私なら大丈夫です。聞かせてください」
私がそう言うと、ケイレブは私とジョセフと夫人を交互に見た。
夫人が小さく頷くと、続きを話す気になったらしい。
「魔獣化ってのは、小動物がいきなり凶暴になって、人間を襲う状態のことです。ネズミもうさぎも普段は人を襲いません。でも、魔獣化すると、草食動物のはずのうさぎですら人を襲うんです。子供なんかはひとたまりもないです」
「兄様、言い方!」
「くそ、難しいな。俺は女性の前で話すなんて慣れてないんだよ」
「大丈夫、ですから」
私はなんとか言葉を押し出した。
正直、小動物が魔獣化して人を襲うなんてショックだ。
でも、聞かなければならない話だと思う。

ケイレブは私を見ると、とりあえず話を終わらせようと考えたらしい。
「まあ、それで!最近は狼とか鹿が魔獣化して問題になっていたんです。でも、急に森が静かになったんです」
「静かになった?」
ジョセフがケイレブを食い入るように見つめている。
「そう、静かになった。というか賑やかになった?鳥は歌うし、虫は鳴くし。元の普通の森に戻ったんだよ」
「確かに、それは妙だな」
ガウデン候があごに右手をつけ考え込むように言った。
「森が普通の姿に戻った・・・?」

「兄様、それっていつから?」
リーラが爛々と目を輝かせた。
「2日前ぐらいかな?3日前には魔獣化した鹿が出て大騒ぎになったし」
「まさか・・・!」
「そんなことが・・・!」
リーラとジョセフが同時に声を上げると、私を見た。

ん?どうしたの?


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