そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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3 ヒロインへの道

153 魔の森近くの砦

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もしかするともしかするから、と説得され、翌日は魔の森付近に慰問に行くことになった。
魔の森なんて行くの嫌じゃないかって?
いや、別に全然問題ないよ?だって慰問に来たんだもん。

翌朝、「いきなり魔の森なんて刺激が強すぎるんじゃないかしら」と心配する夫人をよそに、ケイレブに先導されて、魔の森付近の砦に向かった。

私は絶対に魔の森の近くではケイレブや兵士たちの言うことに従うこと、森の中に一人で入らないようにとなんども言い聞かせられた。
どんだけ言うこと聞かないと思われてるのかしら。

森に近づくにつれ、石畳の道はなくなり、土を踏み固めただけの道へと変わっていった。馬車がすれ違える程広かった道はだんだんと細く、馬が2頭すれ違えるだけの道に変わっていく。通るだけで草いきれが香り、まわりの緑が濃く、緑の力が増していくのを感じる。
魔の森・・・なのかなあ?邪悪な感じや嫌な感じはしないけど。
とりあえず、探検した人が戻ってこられないってことは魔の森って名付けられても仕方ないのかもしれない。

細い道をジョセフと並んで馬を走らせ、しばらくすると砦についた。
魔の森の砦には石造りの物見の塔と、兵士たちが暮らす住居や指令室が入っている建物から成っている。
砦には馬小屋や鍛治ができる施設もあるらしい。
ここでは300人ほどの兵士たちが暮らしているので、生活に必要な施設や武器を修理できる施設が備えられているとか。
ケイレブはいつもはここに常駐していて、昨夜は私を歓迎するために来てくれたそうだ。

私たちは迎えに出た兵士に馬を預けると、そのまま歩きながら砦を案内してもらった。
兵士が私の顔を見て目を丸くすると、ケイレブが「黙ってろ」と唸るように言い、兵士は転がるようにその場からかけ戻っていった。
ケイレブが私の頭の上から自分のマントをかぶせる。
「とりあえず、宿舎まではそれを被っててください」
ケイレブは苦虫をかみつぶしたようなしかめっ面をしながら「周りから顔が見えないように」と注意された。
えーっとおもったけど、砦の中ではケイレブの言うことを聞かないといけない、と思って口をつぐむ。

「300人ってのは一見多いようですけど、それほどじゃないんです。いざってときにはほぼ全員討ち死にしてもおかしくないぐらいの少人数なんで、うちの中でも優秀な兵士を選抜してここに置いてるんですよ」
ケイレブの話に身が引き締まるような思いがする。
確かに、この森の奥から魔獣が一斉に押し寄せてきたり、隣国の兵が攻撃してきたら、300人ではひとたまりもないのかもしれない。静かな森の近くには、薄い皮一枚の下に、ピリピリするくらいの緊張が走っているような気分がした。

砦全体は柵で囲まれていて、魔獣から兵士たちの身を守っている。
ここのところ、魔獣の動きが活発化していたので、兵士の奥さんや小さな子供たちは、皆城壁の中にある宿舎に避難しているそう。
「身を守る手段を持たない子供は、魔獣化したネズミにも対抗できないんでね」
そう言いながら目を伏せたケイレブの姿から、過去に痛ましい事故が起こったのだろうことがわかる。
傷ついた心を少しでも慰めたくて、そっとケイレブの腕に手を乗せると、ケイレブは驚いたように私を見て、そして目をそらした。

「スー」
ジョセフが私の肘を引っ張る。
「あ、ごめんなさい。勝手に触ったりして」
慌ててケイレブの腕に乗せた手を引くと、ケイレブは困ったような笑顔を浮かべた。
「俺としちゃ、大歓迎だけど。あんた、王太子の想い人だろ?」
私は目を見開いた。ハル様となんの関係が?
「あんたみたいな美人は、男を迷わしちゃうから、気をつけないと」
そう言ってケイレブはまた何事もなかったようにに砦の説明を続けた。

「迷わせる・・・?」
「ケイレブの言う通りだ」
ジョセフがボソッと呟いた。

「ごめんなさい。そんなつもりは・・・」
「わかってるって」
タチアナ様に言われてたのに。近すぎる距離は、勘違いさせてしまうから気をつけるようにって。
私がうつむくと、ジョセフがポンと肩を叩いた。
ほんっと、凹む。いまだに自分がヒロインの「美少女」てことに慣れないんだよね。
美人って大変なんだね。
前世では美人な友達が羨ましいって思ってたけど。
「顔だけを評価されるようで嫌だ」って言葉、一回でいいから言ってみたいもんだと思ってたもんね?

「まあ、まずは森の中を見てもらいましょう」
ケイレブがそう言い、森の中の哨戒ポイントまで案内されることになった。


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