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3 ヒロインへの道
163 カニの穴
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(注意)瘴気の影響をうけたカニが出てきます。苦手な方は自衛願います。
翌朝早く、ケイレブとリーラ、ジョセフ、ビルと合わせて10人の兵士達と共に、湖の近くにある瘴気溜まりに向かかうことになった。
窓の外から、馬達の世話をする人の声や蹄の音が聞こえてくる。
私は扉の外に立ち、大きく深呼吸した。
鳥の歌声と綺麗な空気。朝露が陽に輝き、神の恵みを感じる。
清浄な空気を吸い込むと、心がすっきりした。
ハル様は元気かな。同じ空の下、どこかで繋がっているといいな。
今日、早く起きて私のことを思い出していてくれるといいな。
それともまだ寝てるかな。鍛錬してるかな。
胸の奥がきゅんと音を立てた。
「おはよう、ステラ」
「おはよう、リーラ」
男物のシャツとズボンを身にまとい、キリッと髪を一つに縛ったリーラが朝食のトレーを持って立っていた。
二人で朝食を食べてすぐに前庭に向かうと、私たち以外は全員が揃っていた。
私はリーラと同じように男物のシャツとズボンだけど、髪の毛を茶色に染めて、前髪で瞳を隠し、鼻から下をチーフで覆って隠している。
ぶっちゃけ相当怪しい。
兵士たちはむしろ気を使って私の顔を見ないようにしてくれた。
ケイレブはわざとらしく気がつかないふりしてるけど、不自然だよね?
まあ、でもそれは今はどうでもいいこと。気にしないことにしよう。
カニの穴に向かって馬を進めると、途中、爽やかな森の空気が急に不穏な気配に変わっていった。
瘴気の影響を受けている場所だ。
ケイレブの指示で全員が鼻と口を布で覆う。
さっきまで明るかった雰囲気は一変した。
だんだんと捻れてくる木と静かになっていく森。
鳥も虫も沈黙を保っている。
自分の体内の音が聞こえるぐらいの静けさに耐えきれず、叫びだしたくなるほどだ。
その時、突然ボーボーと地を這うような鳴き声が聞こえてきた。
「ひっ」
誰かが息を飲む。
私も喉の奥から悲鳴がこぼれそうになった。
「カエルだ」
ケイレブがボソッと言う。
静かすぎる森に時折聞こえるカエルの鳴き声。
ただのカエルと思っても、不安がどんどんと増していく。
それから15分ぐらい馬を進めると、カニの穴の付近に到着した。
「ここからは馬を降りて歩いてもらいます」
ライがそう声をかけて先導していく。
(あれ、あの後ろ姿、どこかで見たことあるような?でも夕べが初対面だよね?)
私はライの後ろ姿に違和感を覚えた。
なんでどこかで見たことあるような気がするんだろう?
いや、見たことあるわけない。誰かに似てる?
うーん?
そんなことを考えていると草に足を取られた。
「うわっ」
転びそうになり、ジョセフが後ろから抱きとめてくれる。
「あ、ありがと」
「いや、気をつけろ」
そう言うと、すぐに私のお腹の前に回した手が離れた。
手が離れるその一瞬、迷いが伝わり、そのまま煙のように消え去った。
「?」
「ここかー」
「確かに気味が悪いな」
疑問に思ったのもつかの間、前方から男達の声が響いてくる。
少し遅れて、カニの穴までたどり着くと、湖のすぐ脇にあるその穴からは、ウジャウジャと無数のカニが湧き出していた。
穴の大きさは20センチくらいとそれほど大きくはない。でも、穴の入り口にはひたひたと湖の水が被り、そこから黒いモヤモヤが広がっていた。
もやもやの中でうごめいているのは、赤や青の極彩色のカニだった。
でもなんとなく、違和感。それもそのはず、カニの足が12本とか、それ以上とかある。
それだけじゃない。目玉の数もおかしくなっている。4つあるのが少なく思えるぐらい、甲羅にびっしりと目玉を付けているカニまでいる。
(うわ、気持ち悪い)
私はあまりに不自然なそのカニ達の姿にぞーっと寒気が走った。
シャカシャカと機械的に動き、辺りに広がっていくカニの姿に軽く恐怖すら覚える。
「焼き払いますか」
誰かが口に出した。
確かに焼くのも一つの手だけど、実際にここでは難しい。
油を使えば湖を汚染してしまうし、どうせ湖の水にすぐに火は消されてしまうだろう。
そもそも火がつくとも思えない。
「難しいが、水をせき止めて数日待てばなんとかなるか」
ビルがケイレブの了解を得るように話しかけている。
「うむ」
ケイレブが考え込んでいる。
「私にやらせてください」
私は一歩前に進み出た。
「皆さん選りすぐりの方なのでしょう?きっと黙っててくれますよ」
「そうだな、それが一番いいだろう。頼む」
一瞬迷ったケイレブは優秀な指揮官としてその場で最善の選択を下し、兵士たちを振り返ると低い声で言った。
「お前達、今からここで起こることは他言無用だ。いいな」
翌朝早く、ケイレブとリーラ、ジョセフ、ビルと合わせて10人の兵士達と共に、湖の近くにある瘴気溜まりに向かかうことになった。
窓の外から、馬達の世話をする人の声や蹄の音が聞こえてくる。
私は扉の外に立ち、大きく深呼吸した。
鳥の歌声と綺麗な空気。朝露が陽に輝き、神の恵みを感じる。
清浄な空気を吸い込むと、心がすっきりした。
ハル様は元気かな。同じ空の下、どこかで繋がっているといいな。
今日、早く起きて私のことを思い出していてくれるといいな。
それともまだ寝てるかな。鍛錬してるかな。
胸の奥がきゅんと音を立てた。
「おはよう、ステラ」
「おはよう、リーラ」
男物のシャツとズボンを身にまとい、キリッと髪を一つに縛ったリーラが朝食のトレーを持って立っていた。
二人で朝食を食べてすぐに前庭に向かうと、私たち以外は全員が揃っていた。
私はリーラと同じように男物のシャツとズボンだけど、髪の毛を茶色に染めて、前髪で瞳を隠し、鼻から下をチーフで覆って隠している。
ぶっちゃけ相当怪しい。
兵士たちはむしろ気を使って私の顔を見ないようにしてくれた。
ケイレブはわざとらしく気がつかないふりしてるけど、不自然だよね?
まあ、でもそれは今はどうでもいいこと。気にしないことにしよう。
カニの穴に向かって馬を進めると、途中、爽やかな森の空気が急に不穏な気配に変わっていった。
瘴気の影響を受けている場所だ。
ケイレブの指示で全員が鼻と口を布で覆う。
さっきまで明るかった雰囲気は一変した。
だんだんと捻れてくる木と静かになっていく森。
鳥も虫も沈黙を保っている。
自分の体内の音が聞こえるぐらいの静けさに耐えきれず、叫びだしたくなるほどだ。
その時、突然ボーボーと地を這うような鳴き声が聞こえてきた。
「ひっ」
誰かが息を飲む。
私も喉の奥から悲鳴がこぼれそうになった。
「カエルだ」
ケイレブがボソッと言う。
静かすぎる森に時折聞こえるカエルの鳴き声。
ただのカエルと思っても、不安がどんどんと増していく。
それから15分ぐらい馬を進めると、カニの穴の付近に到着した。
「ここからは馬を降りて歩いてもらいます」
ライがそう声をかけて先導していく。
(あれ、あの後ろ姿、どこかで見たことあるような?でも夕べが初対面だよね?)
私はライの後ろ姿に違和感を覚えた。
なんでどこかで見たことあるような気がするんだろう?
いや、見たことあるわけない。誰かに似てる?
うーん?
そんなことを考えていると草に足を取られた。
「うわっ」
転びそうになり、ジョセフが後ろから抱きとめてくれる。
「あ、ありがと」
「いや、気をつけろ」
そう言うと、すぐに私のお腹の前に回した手が離れた。
手が離れるその一瞬、迷いが伝わり、そのまま煙のように消え去った。
「?」
「ここかー」
「確かに気味が悪いな」
疑問に思ったのもつかの間、前方から男達の声が響いてくる。
少し遅れて、カニの穴までたどり着くと、湖のすぐ脇にあるその穴からは、ウジャウジャと無数のカニが湧き出していた。
穴の大きさは20センチくらいとそれほど大きくはない。でも、穴の入り口にはひたひたと湖の水が被り、そこから黒いモヤモヤが広がっていた。
もやもやの中でうごめいているのは、赤や青の極彩色のカニだった。
でもなんとなく、違和感。それもそのはず、カニの足が12本とか、それ以上とかある。
それだけじゃない。目玉の数もおかしくなっている。4つあるのが少なく思えるぐらい、甲羅にびっしりと目玉を付けているカニまでいる。
(うわ、気持ち悪い)
私はあまりに不自然なそのカニ達の姿にぞーっと寒気が走った。
シャカシャカと機械的に動き、辺りに広がっていくカニの姿に軽く恐怖すら覚える。
「焼き払いますか」
誰かが口に出した。
確かに焼くのも一つの手だけど、実際にここでは難しい。
油を使えば湖を汚染してしまうし、どうせ湖の水にすぐに火は消されてしまうだろう。
そもそも火がつくとも思えない。
「難しいが、水をせき止めて数日待てばなんとかなるか」
ビルがケイレブの了解を得るように話しかけている。
「うむ」
ケイレブが考え込んでいる。
「私にやらせてください」
私は一歩前に進み出た。
「皆さん選りすぐりの方なのでしょう?きっと黙っててくれますよ」
「そうだな、それが一番いいだろう。頼む」
一瞬迷ったケイレブは優秀な指揮官としてその場で最善の選択を下し、兵士たちを振り返ると低い声で言った。
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