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3 ヒロインへの道
164 カニ穴の浄化にチャレンジ
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私は、カニの穴から発生している瘴気を払うため、森や湖にも協力を求めた。
(どうか、この汚染を食い止めて正常な森に戻れますように。)
そう祈りながら、気を集めていく。
少しずつ、少しずつそこかしこから力が集まってくる。
(力を貸して、お願い)
心から願うと、だんだんと大きな力が集まってきた。
手の中に大きな光の玉ができる。
人の頭より一回り大きいぐらいの光の玉。多分このくらい集まれば、十分浄化できるだろう。
周りの兵士たちは目を丸くして佇んでいる。
みんなの顔に「ありえない」、と顔に書いてある。
周りの兵士たちと顔を見合わせて「何が起こってるんだ?」とヒソヒソ話し始めると、ケイレブが鋭い目で声の方向を見つめた。
皆、棒を飲んだような顔になり、直立不動になった。
さすが、辺境の地の跡取り様。威圧感ハンパない。
でも、皆さんの気持ちもわかるんだ。
ありえないって。まあ、確かにそう思うよね。
頭も顔も隠した妙な女が、怪しげな魔術を披露しているようにしか見えないよね。
でも今は、浄化を優先しないと。
私は、カニの穴に近づき、光の玉をそっと近づけ、入口から押し込もうとした。
すると、突然一つにまとまった光がコロコロと小さな光の玉に分かれ、水面を転がり、散らばってしまった。
「え?なんで?」
そう思った瞬間、気が散った。
同時に光の玉はパッと小さく瞬き、消えた。
さっきまでと何も変わらない風景に戻る。
少しだけ、瘴気が減ってるくらい。でも全然消えてない。
「え?え?え?なんで?どうして?」
なんで、光がどこかにいっちゃったの?なんで浄化できないの?
水で弾かれた?
「とりあえず、もう一回・・・」
私は気をとりなおし力を集め直す。
もう一度光の玉を作る。さっきよりも大きいから今度は大丈夫だろう。
そっと瘴気溜まりに近づき、今度こそと瘴気が出ている穴に光の玉を近づけた。
ぱん!
弾かれた!
今度はさっきとは違う。
誰かの手で払いのけられたような感触。
明らかな拒絶だ。
その時、目の前を走る光の玉にカニがハサミを突っ込んだ。
ぱん!
泡が弾けるような音がして、光の玉が小さくなっていく。
(え?どうして?)
今度は光の玉にカニが触れるとどんどん小さくなり、次第に消えていってしまう。
光は大気に還っていくのか、水に吸い込まれていくのかわからない。ただ粉々になって水面に散っていく。
「も、もう一回・・・」
私が目をつむり、力を集める。
「スー、そこまでだ」
ジョセフが私の肩を掴んだ。
「これ以上やったら倒れる。やめろ」
「ジョセフ、何が起こってるのかわからない。なんで弾かれちゃうの?」
「それはわからない。とりあえず戻ってから考えよう」
「でも、だって、こんなに汚染が広がってるのに」
「スー、落ち着け。今日はここまでだ」
「私におまかせください、聖女様!!!」
その時、聞こえた声を頼もしいと感じてしまった私は少し頭がおかしくなっていたのかもしれない。
そこにいたのは、ま、ある意味頼りにはなるけど、信用ならない相手だった。
「このリカルド、聖女様のお役に立つために、不眠不休にて馳せ参じました!!」
満面の笑みで立っているリカルド。
でもその姿は・・・ボロボロ。
白いはずの法衣にはあちこち泥のシミがつき、破れている。髪には葉や枝まで刺さっている。
攻略対象者効果でイケメンだったはずなんだけど・・・にっこり笑ったその口元の歯が一本欠けていた。
しかも、ちょっと、いやかなり臭いよ?リカルド。
あ、もうだめ。くさーい・・・
臭すぎるリカルドのせいか、それとも力を使いすぎたせいか、私はくずおれるように意識を失った。
(どうか、この汚染を食い止めて正常な森に戻れますように。)
そう祈りながら、気を集めていく。
少しずつ、少しずつそこかしこから力が集まってくる。
(力を貸して、お願い)
心から願うと、だんだんと大きな力が集まってきた。
手の中に大きな光の玉ができる。
人の頭より一回り大きいぐらいの光の玉。多分このくらい集まれば、十分浄化できるだろう。
周りの兵士たちは目を丸くして佇んでいる。
みんなの顔に「ありえない」、と顔に書いてある。
周りの兵士たちと顔を見合わせて「何が起こってるんだ?」とヒソヒソ話し始めると、ケイレブが鋭い目で声の方向を見つめた。
皆、棒を飲んだような顔になり、直立不動になった。
さすが、辺境の地の跡取り様。威圧感ハンパない。
でも、皆さんの気持ちもわかるんだ。
ありえないって。まあ、確かにそう思うよね。
頭も顔も隠した妙な女が、怪しげな魔術を披露しているようにしか見えないよね。
でも今は、浄化を優先しないと。
私は、カニの穴に近づき、光の玉をそっと近づけ、入口から押し込もうとした。
すると、突然一つにまとまった光がコロコロと小さな光の玉に分かれ、水面を転がり、散らばってしまった。
「え?なんで?」
そう思った瞬間、気が散った。
同時に光の玉はパッと小さく瞬き、消えた。
さっきまでと何も変わらない風景に戻る。
少しだけ、瘴気が減ってるくらい。でも全然消えてない。
「え?え?え?なんで?どうして?」
なんで、光がどこかにいっちゃったの?なんで浄化できないの?
水で弾かれた?
「とりあえず、もう一回・・・」
私は気をとりなおし力を集め直す。
もう一度光の玉を作る。さっきよりも大きいから今度は大丈夫だろう。
そっと瘴気溜まりに近づき、今度こそと瘴気が出ている穴に光の玉を近づけた。
ぱん!
弾かれた!
今度はさっきとは違う。
誰かの手で払いのけられたような感触。
明らかな拒絶だ。
その時、目の前を走る光の玉にカニがハサミを突っ込んだ。
ぱん!
泡が弾けるような音がして、光の玉が小さくなっていく。
(え?どうして?)
今度は光の玉にカニが触れるとどんどん小さくなり、次第に消えていってしまう。
光は大気に還っていくのか、水に吸い込まれていくのかわからない。ただ粉々になって水面に散っていく。
「も、もう一回・・・」
私が目をつむり、力を集める。
「スー、そこまでだ」
ジョセフが私の肩を掴んだ。
「これ以上やったら倒れる。やめろ」
「ジョセフ、何が起こってるのかわからない。なんで弾かれちゃうの?」
「それはわからない。とりあえず戻ってから考えよう」
「でも、だって、こんなに汚染が広がってるのに」
「スー、落ち着け。今日はここまでだ」
「私におまかせください、聖女様!!!」
その時、聞こえた声を頼もしいと感じてしまった私は少し頭がおかしくなっていたのかもしれない。
そこにいたのは、ま、ある意味頼りにはなるけど、信用ならない相手だった。
「このリカルド、聖女様のお役に立つために、不眠不休にて馳せ参じました!!」
満面の笑みで立っているリカルド。
でもその姿は・・・ボロボロ。
白いはずの法衣にはあちこち泥のシミがつき、破れている。髪には葉や枝まで刺さっている。
攻略対象者効果でイケメンだったはずなんだけど・・・にっこり笑ったその口元の歯が一本欠けていた。
しかも、ちょっと、いやかなり臭いよ?リカルド。
あ、もうだめ。くさーい・・・
臭すぎるリカルドのせいか、それとも力を使いすぎたせいか、私はくずおれるように意識を失った。
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