203 / 247
4 決戦
199 セオドアの訪問
しおりを挟む
それから1週間経ってもジョセフは目覚めなかった。
柔らかく輝く銀色の光に包まれ、ずっと静かに眠り続けている。
あまりの静けさに心配になり、口元に耳を近づけ呼吸音を確認したことも一度ではない。
生きてはいる。命の灯は確かに灯っている。
でも、本当に生きているのかわからない、この世とあの世の境目にいるような状態が続いていた。
(本当に目覚めてくれるのかな)
寝ても覚めてもそのことばかりが気にかかる。
リカルドに聞いても、過去に事例がないからわからないとあっさり言われてしまった。
私のこと以外は、本当に塩対応。もうちょっと親身になってくれてもいいのに。
「リカルド先生♡うふふ、お食事はお済みですか?」
無理矢理に笑顔を作ってリカルドから情報を聞き出そうとしても、「本当にわからないんですよ、記録にないんです」とため息で返されてしまった。
私の方はといえば、少しずつ回復し、無理に食べようとすれば食事を取れるまでになってきている。
相変わらず肉は食べられないけど、野菜のスープや魚をちょっとだけならいただける。
本当はあまり食べたくないんだけど、心配されてしまうので、食べられる分だけをお願いしてお皿に盛ってもらっていた。
その辺はリカルドが上手に説明してくれた。
騎士団長のお屋敷で肉を食べないなんてありえないと料理人に泣かれてしまったので。
騎士たちはみんな肉が好きなんだよね。
でもね。わたし動物の気持ちがわかるんです。無理です。とは言えないけどね。
私の体調もだいぶ落ち着き、ジョセフが目を覚まさないことも、辺境の騎士たちが騎士団長のお屋敷にお世話になっていることも、ただの日常になってきた頃、セオドアが訪ねてきた。
「スー、痩せたね」
セオドアの声を聞いた途端涙がこぼれた。
「セオ・・・」
思わずぎゅっと抱きついてしまう。
「スー。いろいろ大変だったんだね」
そう言うと私のことを抱きしめてくれた。
懐かしい私の兄弟。いろいろなことがあったの。セオとたくさん話がしたかった。
「たくさん話があるんだよ」
セオが言う。私も!!思わず破顔してしまった。笑ったのは久しぶりかもしれない。
「でも今日きたのは、あまりいい話じゃないんだ。でも悪い知らせこそ早く知らせないとと思って」
リーラに勧められ、応接室の椅子に二人とも腰掛ける。
「ここにいることは、リーラから知らせを受けて聞いていたんだけど、ジョセフの容体が悪いって話も聞いていたし、お邪魔になるかもと思ってすぐに訪問するのは遠慮していたんだ。でもね・・・」セオドアは紅茶を一口口に含み、言葉をつなぐ勇気をためていた。
「エリザベスに、男爵領の絹のことでお世話になってから、色々と情報も知らせてくれるようになったんだ。それで、内々にと教えてもらったんだけど」
セオは両手で私の手を包んだ。
「スー。王太子殿下に魅了の痕跡が見つかった話は知ってるよね?」
「うん」
「魅了は国で禁止されている禁術だ。そして、それを理由にアドランテ家が大評議会を開き、お前を尋問するように要求した」
「だいひょうぎかい?」
「そう。国王陛下と王妃陛下ご臨席のもとに、全評議会員10名と大神官と神官等3名が集まって訴えの審議を執り行う。審議は公開だけど、事前に筋書きが決まっているとも言われているし、それに現在の筆頭評議員はフォーク公爵、つまりルシアナ様のお父上だ。正直有利とは思えない」
「そうだね。不利だね」
私は素直に返事をした。セオの気持ちが伝わってくる。不安と心配ではちきれそうだ。
「でもさ、こうなったら仕方ないよ。正直にぶつかる以外ないと思う。だって逃げたら魅了を認めたってことで死罪でしょ?良くて国外追放?幽閉?どっちみち未来はないよ。しかも、ディライト家だってお取り潰しになるかもしれない。とうさまやセオだって近親者だから死罪とか、爵位召し上げの上領外追放とかでしょ?じゃ、もうどうしようもないじゃん。真っ向勝負するしかないって」
セオドアはため息をついた。
「そういうところは親子なんだよね」
「どういう意味よ」
「男爵様もさ、何も恥ずべきことはしてないんだから、堂々と申し開きをするって言ってるんだよ」
「そりゃそうでしょ。じゃ聞くけどさ、魅了ってどうやってかけるのさ」
「さあ?」
「私だって知らないよ。なんか、薬物中毒と呪いの半分半分だとは聞いたことあるけど。そんなこと聞いたってよくわからないよ。おっかないなってぐらいで」
「まあそうだよな」
「正直第一だよ。嘘ついたって続かないもん」
「そっか。そうだよな。腹くくるしかないんだな。スーのそういうところ、すごいよな」
「んー?あんまり考えないからかな」
「まあ、もうちょっと考えた方がいいかもね」
「ぶー」
相変わらずだ。セオと話すと安心する。
「ま、がんばんなよ。僕も頑張るからさ」
セオが椅子から立ち上がった。
「ん、セオも」
「言っとくけど。近日中に正式な使者が出頭命令を持ってくるはずだから。覚悟しときなね」
「・・・はーい」
セオはニヤッと笑うと、「がんばろーな」と私の肩を叩き帰っていった。
セオドアが帰った後、ケイレブがそばに寄ってきた。
「なあなあ。ものすごい美人の男が来たけど、聖女様の弟なんだって?美形兄弟ってすごいな」
何がすごいんだかわからないけど、褒められたんだろうか。一応。
柔らかく輝く銀色の光に包まれ、ずっと静かに眠り続けている。
あまりの静けさに心配になり、口元に耳を近づけ呼吸音を確認したことも一度ではない。
生きてはいる。命の灯は確かに灯っている。
でも、本当に生きているのかわからない、この世とあの世の境目にいるような状態が続いていた。
(本当に目覚めてくれるのかな)
寝ても覚めてもそのことばかりが気にかかる。
リカルドに聞いても、過去に事例がないからわからないとあっさり言われてしまった。
私のこと以外は、本当に塩対応。もうちょっと親身になってくれてもいいのに。
「リカルド先生♡うふふ、お食事はお済みですか?」
無理矢理に笑顔を作ってリカルドから情報を聞き出そうとしても、「本当にわからないんですよ、記録にないんです」とため息で返されてしまった。
私の方はといえば、少しずつ回復し、無理に食べようとすれば食事を取れるまでになってきている。
相変わらず肉は食べられないけど、野菜のスープや魚をちょっとだけならいただける。
本当はあまり食べたくないんだけど、心配されてしまうので、食べられる分だけをお願いしてお皿に盛ってもらっていた。
その辺はリカルドが上手に説明してくれた。
騎士団長のお屋敷で肉を食べないなんてありえないと料理人に泣かれてしまったので。
騎士たちはみんな肉が好きなんだよね。
でもね。わたし動物の気持ちがわかるんです。無理です。とは言えないけどね。
私の体調もだいぶ落ち着き、ジョセフが目を覚まさないことも、辺境の騎士たちが騎士団長のお屋敷にお世話になっていることも、ただの日常になってきた頃、セオドアが訪ねてきた。
「スー、痩せたね」
セオドアの声を聞いた途端涙がこぼれた。
「セオ・・・」
思わずぎゅっと抱きついてしまう。
「スー。いろいろ大変だったんだね」
そう言うと私のことを抱きしめてくれた。
懐かしい私の兄弟。いろいろなことがあったの。セオとたくさん話がしたかった。
「たくさん話があるんだよ」
セオが言う。私も!!思わず破顔してしまった。笑ったのは久しぶりかもしれない。
「でも今日きたのは、あまりいい話じゃないんだ。でも悪い知らせこそ早く知らせないとと思って」
リーラに勧められ、応接室の椅子に二人とも腰掛ける。
「ここにいることは、リーラから知らせを受けて聞いていたんだけど、ジョセフの容体が悪いって話も聞いていたし、お邪魔になるかもと思ってすぐに訪問するのは遠慮していたんだ。でもね・・・」セオドアは紅茶を一口口に含み、言葉をつなぐ勇気をためていた。
「エリザベスに、男爵領の絹のことでお世話になってから、色々と情報も知らせてくれるようになったんだ。それで、内々にと教えてもらったんだけど」
セオは両手で私の手を包んだ。
「スー。王太子殿下に魅了の痕跡が見つかった話は知ってるよね?」
「うん」
「魅了は国で禁止されている禁術だ。そして、それを理由にアドランテ家が大評議会を開き、お前を尋問するように要求した」
「だいひょうぎかい?」
「そう。国王陛下と王妃陛下ご臨席のもとに、全評議会員10名と大神官と神官等3名が集まって訴えの審議を執り行う。審議は公開だけど、事前に筋書きが決まっているとも言われているし、それに現在の筆頭評議員はフォーク公爵、つまりルシアナ様のお父上だ。正直有利とは思えない」
「そうだね。不利だね」
私は素直に返事をした。セオの気持ちが伝わってくる。不安と心配ではちきれそうだ。
「でもさ、こうなったら仕方ないよ。正直にぶつかる以外ないと思う。だって逃げたら魅了を認めたってことで死罪でしょ?良くて国外追放?幽閉?どっちみち未来はないよ。しかも、ディライト家だってお取り潰しになるかもしれない。とうさまやセオだって近親者だから死罪とか、爵位召し上げの上領外追放とかでしょ?じゃ、もうどうしようもないじゃん。真っ向勝負するしかないって」
セオドアはため息をついた。
「そういうところは親子なんだよね」
「どういう意味よ」
「男爵様もさ、何も恥ずべきことはしてないんだから、堂々と申し開きをするって言ってるんだよ」
「そりゃそうでしょ。じゃ聞くけどさ、魅了ってどうやってかけるのさ」
「さあ?」
「私だって知らないよ。なんか、薬物中毒と呪いの半分半分だとは聞いたことあるけど。そんなこと聞いたってよくわからないよ。おっかないなってぐらいで」
「まあそうだよな」
「正直第一だよ。嘘ついたって続かないもん」
「そっか。そうだよな。腹くくるしかないんだな。スーのそういうところ、すごいよな」
「んー?あんまり考えないからかな」
「まあ、もうちょっと考えた方がいいかもね」
「ぶー」
相変わらずだ。セオと話すと安心する。
「ま、がんばんなよ。僕も頑張るからさ」
セオが椅子から立ち上がった。
「ん、セオも」
「言っとくけど。近日中に正式な使者が出頭命令を持ってくるはずだから。覚悟しときなね」
「・・・はーい」
セオはニヤッと笑うと、「がんばろーな」と私の肩を叩き帰っていった。
セオドアが帰った後、ケイレブがそばに寄ってきた。
「なあなあ。ものすごい美人の男が来たけど、聖女様の弟なんだって?美形兄弟ってすごいな」
何がすごいんだかわからないけど、褒められたんだろうか。一応。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる