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第九十三話 不埒 ※
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「リオ」
優しい声が名を呼び、そっと後ろから抱きしめた。
首筋に鼻を付け、リオの香りを吸い込む。
「うん?泣いていたのか?」
「あ、アウレリオ様?・・・どうして?」
「かわいい恋人が泣いているのに、慰めなくてどうする?」
「だって・・・今日は」
アウレリオはリオの口元に人差し指を当てた。
「しっ」
戸惑いながら見上げたリオの顔は涙にぬれていた。
アウレリオはその顔に口づけ、唇で涙をぬぐった。
「そんなに、泣くな」
「だって」
だって、愛する人の結婚式に参列するなんて、こんなに悲しいこと、あるわけない。
「うわああん」
リオは子供のように泣き出してしまった。
「わ、わかってても・・・か、かなしい・・・うえええん」
涙が滝のようにあふれてくる。
「ま、まて。勘違いするな。これはただの政略結婚なんだ」
「せ、せいりゃく、けっこん?」
「どうせ私も王女も結婚しなければならない。私は跡取りを設けなければならないし、王女だって、いつまでも王宮に独身の王女としていてはだんだん肩身が狭くなってくる。だから、互いに条件が一致しただけなんだ」
「条件が・・・一致?」
そんなこと・・・あるのかも。
貴族の方は、条件で結婚すると聞いたことがある。
「でも・・・王女様は、アウレリオ様のことがお好きですよね?」
「は?」
アウレリオはぽかんとして、次にリオを探るように見た。
「お前は一体何を言ってるんだ?」
「だって・・・王女様がアウレリオ様のことをお好きなのはわかります。今日だってにこにこしていらしたし」
「それは当然だ。あの方は王女なんだから、生まれたときからそういう技術は身につけているさ」
「でも、おれにはわかるんです!」
「ははは、心配性だな」
アウレリオがリオを抱きしめた。
「それは、間違いなく勘違いだ。この結婚を決めるとき、王女に確認したんだ。万が一にも余計な感情があってはならないからな」
「余計って」
「私には恋人がいる。だが跡取りは必要だ。この地を守る一族の長として責任がある」
「でも」
「王女には笑われたよ。私には気がないそうだ」
「・・・でも、アウレリオ様はそれを信じたんですか?」
「ばかだな、リオ」
アウレリオはリオを抱きしめた。
「まともな人間なら私を恐れる。そういうものだ」
「なぜですか?俺はアウレリオ様のこと、全然怖くありません」
「それは・・・私が、この地と結び付けられている存在だから。金色の目は薄気味悪い、ということもある」
「わかりません」
リオはアウレリオの頬をなでた。
「だって、アウレリオ様はアウレリオ様なのに?」
アウレリオはリオの手に自分の手を重ね、その手のひらに口づけた。
「お前は・・・特別だから」
リオの心臓がぎゅっとなった。
どうして、こんな日の夜に、甘いことを言うんだろう。
「でも、でも、でも・・・」
もう、今まで通りのわけもないのに。
アウレリオはリオの両頬に順に口づけ、鼻、おでこ、あごにも軽くキスすると最後に唇にちゅっとキスをした。
「かわいいリオ。お前が心配することは何もない。必要があれば『対応』はするが、まあ、もうちょっと先の話になるだろう。それは、お前が心配するようなことではない。仕事だ」
「でも、本当にいいんでしょうか」
リオの心はまだ揺れ動いていた。
アウレリオの言葉を信じたい。でも、本当にそんなに簡単なことなんだろうか。
あの時の姫の目は間違いなく、アウレリオへの好意が浮かんでいた。
「あー、疲れたなあ」
アウレリオがふざけてリオに体重を預けてきた。
「もう立っていられないかもしれない。それなのに、私の恋人は、休ませてくれないんだ」
「そ、そんなこと・・・」
リオは肩にアウレリオの体重を預けられ、よろめきそうになり、窓枠につかまった。
「アウレリオ様!」
「ん?」
アウレリオがリオの首筋を甘噛みする。
途端にリオの不埒な体にはぞくりと快感が走った。
「リーオ。かわいいリオ」
シャツの下からアウレリオの手が侵入し、リオの乳首に触れた。
「ひゃっ」
思いもかけない接触に声が漏れる。
アウレリオがくすくすと笑いだした。
「うちのリオは敏感だから、どこまで抵抗できるのかな。試してみるのも面白そうだ」
「あ、アウレリオ様!」
「心配性の私の従者。かわいいリオ。なんて呼んだらいい?」
「な、なんで・・・」
どうしてアウレリオ様はこんな戯れをなさるのか。
リオは戸惑い、きょろきょろとあたりを見回した。とはいえ、リオがすがれるものはなにもない。
「リオ、私の服を脱がせてくれ。いい加減、この窮屈な衣装を脱ぎたいんだ」
「あっ!すみません」
リオが慌てると、アウレリオは笑った。
「それから、ここに入りたい」
そういってリオの白い腹を手のひらで押す。
「知ってるか?お前の薄い腹は、私がここを突くとぼこぼこ動くんだ」
「あ、あ、アウレリオ様!!」
リオの顔は真っ赤に染まった。
「なあ、リオ。今日も見せてくれ」
耳元でささやかれると、リオの身体から力が抜けた。
ぐにゃぐにゃになって、溶けてしまいそう。
こんな誘惑。どうしたってかわすことができない。
「もう」
リオはアウレリオのクラバットに手をかけ、ほどき始めた。
************
お読みいただきまして、ありがとうございました。
本日は、書き置きしておいたデータが飛びました。
なんとか今日中にアップできてよかったです。
ふう。
今日も♡と広告をありがとうございました。
励みになります。
今日は、皆様の年末の交通安全を願っておきます。
※変な宗教には入っていないのでご安心ください。※
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首筋に鼻を付け、リオの香りを吸い込む。
「うん?泣いていたのか?」
「あ、アウレリオ様?・・・どうして?」
「かわいい恋人が泣いているのに、慰めなくてどうする?」
「だって・・・今日は」
アウレリオはリオの口元に人差し指を当てた。
「しっ」
戸惑いながら見上げたリオの顔は涙にぬれていた。
アウレリオはその顔に口づけ、唇で涙をぬぐった。
「そんなに、泣くな」
「だって」
だって、愛する人の結婚式に参列するなんて、こんなに悲しいこと、あるわけない。
「うわああん」
リオは子供のように泣き出してしまった。
「わ、わかってても・・・か、かなしい・・・うえええん」
涙が滝のようにあふれてくる。
「ま、まて。勘違いするな。これはただの政略結婚なんだ」
「せ、せいりゃく、けっこん?」
「どうせ私も王女も結婚しなければならない。私は跡取りを設けなければならないし、王女だって、いつまでも王宮に独身の王女としていてはだんだん肩身が狭くなってくる。だから、互いに条件が一致しただけなんだ」
「条件が・・・一致?」
そんなこと・・・あるのかも。
貴族の方は、条件で結婚すると聞いたことがある。
「でも・・・王女様は、アウレリオ様のことがお好きですよね?」
「は?」
アウレリオはぽかんとして、次にリオを探るように見た。
「お前は一体何を言ってるんだ?」
「だって・・・王女様がアウレリオ様のことをお好きなのはわかります。今日だってにこにこしていらしたし」
「それは当然だ。あの方は王女なんだから、生まれたときからそういう技術は身につけているさ」
「でも、おれにはわかるんです!」
「ははは、心配性だな」
アウレリオがリオを抱きしめた。
「それは、間違いなく勘違いだ。この結婚を決めるとき、王女に確認したんだ。万が一にも余計な感情があってはならないからな」
「余計って」
「私には恋人がいる。だが跡取りは必要だ。この地を守る一族の長として責任がある」
「でも」
「王女には笑われたよ。私には気がないそうだ」
「・・・でも、アウレリオ様はそれを信じたんですか?」
「ばかだな、リオ」
アウレリオはリオを抱きしめた。
「まともな人間なら私を恐れる。そういうものだ」
「なぜですか?俺はアウレリオ様のこと、全然怖くありません」
「それは・・・私が、この地と結び付けられている存在だから。金色の目は薄気味悪い、ということもある」
「わかりません」
リオはアウレリオの頬をなでた。
「だって、アウレリオ様はアウレリオ様なのに?」
アウレリオはリオの手に自分の手を重ね、その手のひらに口づけた。
「お前は・・・特別だから」
リオの心臓がぎゅっとなった。
どうして、こんな日の夜に、甘いことを言うんだろう。
「でも、でも、でも・・・」
もう、今まで通りのわけもないのに。
アウレリオはリオの両頬に順に口づけ、鼻、おでこ、あごにも軽くキスすると最後に唇にちゅっとキスをした。
「かわいいリオ。お前が心配することは何もない。必要があれば『対応』はするが、まあ、もうちょっと先の話になるだろう。それは、お前が心配するようなことではない。仕事だ」
「でも、本当にいいんでしょうか」
リオの心はまだ揺れ動いていた。
アウレリオの言葉を信じたい。でも、本当にそんなに簡単なことなんだろうか。
あの時の姫の目は間違いなく、アウレリオへの好意が浮かんでいた。
「あー、疲れたなあ」
アウレリオがふざけてリオに体重を預けてきた。
「もう立っていられないかもしれない。それなのに、私の恋人は、休ませてくれないんだ」
「そ、そんなこと・・・」
リオは肩にアウレリオの体重を預けられ、よろめきそうになり、窓枠につかまった。
「アウレリオ様!」
「ん?」
アウレリオがリオの首筋を甘噛みする。
途端にリオの不埒な体にはぞくりと快感が走った。
「リーオ。かわいいリオ」
シャツの下からアウレリオの手が侵入し、リオの乳首に触れた。
「ひゃっ」
思いもかけない接触に声が漏れる。
アウレリオがくすくすと笑いだした。
「うちのリオは敏感だから、どこまで抵抗できるのかな。試してみるのも面白そうだ」
「あ、アウレリオ様!」
「心配性の私の従者。かわいいリオ。なんて呼んだらいい?」
「な、なんで・・・」
どうしてアウレリオ様はこんな戯れをなさるのか。
リオは戸惑い、きょろきょろとあたりを見回した。とはいえ、リオがすがれるものはなにもない。
「リオ、私の服を脱がせてくれ。いい加減、この窮屈な衣装を脱ぎたいんだ」
「あっ!すみません」
リオが慌てると、アウレリオは笑った。
「それから、ここに入りたい」
そういってリオの白い腹を手のひらで押す。
「知ってるか?お前の薄い腹は、私がここを突くとぼこぼこ動くんだ」
「あ、あ、アウレリオ様!!」
リオの顔は真っ赤に染まった。
「なあ、リオ。今日も見せてくれ」
耳元でささやかれると、リオの身体から力が抜けた。
ぐにゃぐにゃになって、溶けてしまいそう。
こんな誘惑。どうしたってかわすことができない。
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