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第百十九話 月夜 ※閲覧注意
※今回は、人によっては全然ダメな回です。少しでも危険を感じたら回れ右でお願いします※
【王宮にて:リオ】
時は、少しさかのぼる。
従僕として、王宮に努めるはずのリオは、なぜか後宮のはずれに部屋を与えられた。
(もしかして、後宮の方々の下働きをするってことかな?でもそれって宦官の役目なんじゃ・・・?)
首を傾げたまま数日がたつと、リオにも少しずつ分かってきた。まず、自分に対する宦官の態度は、使用人に対するそれではない。仕事らしき仕事は何も与えられない。ただ、毎日栄養バランスの良い食事をして、散歩をして、美容に気を配り・・・その意味は一つしかない。まさかと思ったが、自分は国王の愛妾(候補?)としてここにいるのだ。
自分の置かれた立場に気が付いたとき、部屋の外で吐いた。
なぜそんなことになったのかも、どうしたら逃げだせるのかもわからない。
部屋の中央には大きなベッドと豪華な夜具。そして、部屋の端にある長持ちがひとつ。
毎日使う水は使用人の子供が運んでくる。
唯一の救いは、まだ一度もお渡りがないことだった。
リオは男性なので、女性の愛妾たちからは隔離されている。男の愛妾は自分一人ではないようだが、それほど頻繁にお渡りがあるわけではないようだ。
「本当に、こんなに良くしていただいて・・・王様に感謝しなければなりませんよ」
リオ付の宦官は死んだ魚のような目をしていた。彼は毎日リオの身体を洗い、改める。『良くしていただいて』とは、宦官に体を洗われることか、それともふんだんに与えられる食料のことなのかわからないが、宦官は折に触れ「感謝」を強要した。
(行ったことはないけど、これが「娼館」というものなんだろうな)
リオは、心の中でつぶやいた。
いつでもお渡りがあってもいいように洗われ、さらにいい香りのする香油を塗りこめられる身体。そして、巨大なベッド。
いままで、さんざん「男娼」って陰口を言われて来たけど、ほんとうに男娼まがいのことをすることになるなんて。
リオにとっては幸いなことに、王はもう、リオへの興味をなくしていた。
帰りの道中では、宿泊先の領主たちから差し出される女たちを日替わりでお召しになっていたし、王宮に戻ってからは不在の間にへそを曲げた王妃や何人もいる愛妾たちの機嫌取りに忙しい。
別に来なくてもいいけど、でも、それならばここに来たくなかった。
ずっとアウレリオ様の傍で、アウレリオ様を支えていたかったのに。
王様はなんでも持ってらっしゃるのに、なぜ俺のような何もない者から奪おうとするんだろう。
(帰っていいって、言われないかな)
淡い期待は、すぐに打ち砕かれることになった。
**************
その日は、今までとは違っていた。
いつもリオの世話をするやる気のない宦官だけではなく、抜け目のない目をしてきびきびと動く宦官がリオの部屋にやってきて、やる気のない宦官に徹底的にダメ出しを続ける。
部屋の掃除、装飾。
美しい花が飾られ、フルーツの盛り合わせやチーズ、ワインが運び込まれてきたときに、気が付いた。
(今日、なんだ・・・)
人形のように心を殺し、宦官の言うままに風呂に入り、体を洗ってもらう。
全身に香油を塗り込まれ、また、敏感なすぼみにまで触れられた。
「何をなさるのですか」
リオが抜け目のなさそうな宦官の腕をつかむと、宦官は手に香油の瓶を持ったまま表情も変えずに言った。
「まさか、国王陛下があなたの後ろ穴をほぐすと思っているんですか?きつすぎて入らなくて、お手打ちになった方もいらっしゃいます。これはあなたのためなんですよ」
そう言うと、指に香油をたっぷりとつけ、リオのすぼみに指を差し込んだ。
「ずいぶんときついですね・・・男は初めてではないんでしょう?今まで何人のお相手をしたんですか?」
「そんなこと」
小声で抗議するが、宦官は聞く耳もたない。
「たまに、王様は珍味が食べたくなるんです。国中から集められた蝶や花のように美しい女性たちに飽きて、あなたのような珍味をね」
「珍味?」
リオの身体からがっくりと力が抜けた。たかが、そんなことで?
「そうそう、上手ですよ。お手打ちにならないように、お願いしますよ。あなたの準備ができていないと私が罰せられることになるんです」
宦官の無遠慮な指がリオのなかを強引に広げた。
快感などかけらもない、ただの・・・準備?
リオは、その屈辱に、歯を食いしばって耐えた。
リオの身体に十分に香油を塗り込めると、次に薄い夜着を着つけられた。
「これは、このひもを引けば、『しつけ』がほどけるようになっているんです」
「?」首を傾げたリオに、「つまり、仮止めが取れて、バラバラになるってことです」とはきはきと伝えてくる。そんなくだらないことを熱心に準備しているなんて。
(ああ、もう、嫌だな)
リオは時間が早く過ぎることだけを願った。
*********
王の高いびきを背に、リオはそっとベッドから抜け出した。
ふり返ると、ベッドは血に染まり、リオの両ももにもべっとりと血が付いていた。
汚らわしい。
この痛みが現実を思い知らせてくる。
もう、アウレリオ様だけに抱かれていた体ではなくなってしまった。
顔向けできない。
王は反抗的なリオに容赦しなかった。
体中に残る殴打のあと。
宦官に言われたように調子を合わせて『男娼』として過ごすべきだったのかもしれない。でも、どうしてもできなかった。
触れた指先が、気持ちが悪くて。
吐き気を抑えるだけで精一杯なのに、どうやって妖艶な演技ができたと言うんだろう?
立ち上がろうと足に力を入れると、後ろ穴に鋭い痛みが走り、つつーと血が伝う。
(飽きてもらえればいい・・・つまらない奴だと、追放してくれればいいのに)
空を見上げると、細い三日月がリオを照らしていた。
足元は氷のように冷たく、冷えが体に上がってくる。
いままで、アウレリオがどれほど大切にリオを抱いていたのか、今日思い知った。
ただの「モノ」として扱われることがどういうことなのか。
ただただ、終わる時を待つだけの屈辱的な時間が、心をどれだけ殺すのか。
(この月が、アウレリオ様のことも照らしてくれていたらいいのにな)
身分の隔てなく、月は優しくリオを照らす。
(どうか、アウレリオ様のお心が平穏でありますように。そして、もしかして同時に空を見上げていたら、うれしいな)
************
お読みいただきましてありがとうございました。
読者様の心が折れないことだけを切に願っております。
色々迷ったのですが、当初のプロット通りに最後まで進めます。
今後とも読んでいただければ幸いです。
♡と広告をありがとうございました。
読んでくれる方は少なくても、好きと言ってくださる方がいらしゃって、本当にうれしいです。
【王宮にて:リオ】
時は、少しさかのぼる。
従僕として、王宮に努めるはずのリオは、なぜか後宮のはずれに部屋を与えられた。
(もしかして、後宮の方々の下働きをするってことかな?でもそれって宦官の役目なんじゃ・・・?)
首を傾げたまま数日がたつと、リオにも少しずつ分かってきた。まず、自分に対する宦官の態度は、使用人に対するそれではない。仕事らしき仕事は何も与えられない。ただ、毎日栄養バランスの良い食事をして、散歩をして、美容に気を配り・・・その意味は一つしかない。まさかと思ったが、自分は国王の愛妾(候補?)としてここにいるのだ。
自分の置かれた立場に気が付いたとき、部屋の外で吐いた。
なぜそんなことになったのかも、どうしたら逃げだせるのかもわからない。
部屋の中央には大きなベッドと豪華な夜具。そして、部屋の端にある長持ちがひとつ。
毎日使う水は使用人の子供が運んでくる。
唯一の救いは、まだ一度もお渡りがないことだった。
リオは男性なので、女性の愛妾たちからは隔離されている。男の愛妾は自分一人ではないようだが、それほど頻繁にお渡りがあるわけではないようだ。
「本当に、こんなに良くしていただいて・・・王様に感謝しなければなりませんよ」
リオ付の宦官は死んだ魚のような目をしていた。彼は毎日リオの身体を洗い、改める。『良くしていただいて』とは、宦官に体を洗われることか、それともふんだんに与えられる食料のことなのかわからないが、宦官は折に触れ「感謝」を強要した。
(行ったことはないけど、これが「娼館」というものなんだろうな)
リオは、心の中でつぶやいた。
いつでもお渡りがあってもいいように洗われ、さらにいい香りのする香油を塗りこめられる身体。そして、巨大なベッド。
いままで、さんざん「男娼」って陰口を言われて来たけど、ほんとうに男娼まがいのことをすることになるなんて。
リオにとっては幸いなことに、王はもう、リオへの興味をなくしていた。
帰りの道中では、宿泊先の領主たちから差し出される女たちを日替わりでお召しになっていたし、王宮に戻ってからは不在の間にへそを曲げた王妃や何人もいる愛妾たちの機嫌取りに忙しい。
別に来なくてもいいけど、でも、それならばここに来たくなかった。
ずっとアウレリオ様の傍で、アウレリオ様を支えていたかったのに。
王様はなんでも持ってらっしゃるのに、なぜ俺のような何もない者から奪おうとするんだろう。
(帰っていいって、言われないかな)
淡い期待は、すぐに打ち砕かれることになった。
**************
その日は、今までとは違っていた。
いつもリオの世話をするやる気のない宦官だけではなく、抜け目のない目をしてきびきびと動く宦官がリオの部屋にやってきて、やる気のない宦官に徹底的にダメ出しを続ける。
部屋の掃除、装飾。
美しい花が飾られ、フルーツの盛り合わせやチーズ、ワインが運び込まれてきたときに、気が付いた。
(今日、なんだ・・・)
人形のように心を殺し、宦官の言うままに風呂に入り、体を洗ってもらう。
全身に香油を塗り込まれ、また、敏感なすぼみにまで触れられた。
「何をなさるのですか」
リオが抜け目のなさそうな宦官の腕をつかむと、宦官は手に香油の瓶を持ったまま表情も変えずに言った。
「まさか、国王陛下があなたの後ろ穴をほぐすと思っているんですか?きつすぎて入らなくて、お手打ちになった方もいらっしゃいます。これはあなたのためなんですよ」
そう言うと、指に香油をたっぷりとつけ、リオのすぼみに指を差し込んだ。
「ずいぶんときついですね・・・男は初めてではないんでしょう?今まで何人のお相手をしたんですか?」
「そんなこと」
小声で抗議するが、宦官は聞く耳もたない。
「たまに、王様は珍味が食べたくなるんです。国中から集められた蝶や花のように美しい女性たちに飽きて、あなたのような珍味をね」
「珍味?」
リオの身体からがっくりと力が抜けた。たかが、そんなことで?
「そうそう、上手ですよ。お手打ちにならないように、お願いしますよ。あなたの準備ができていないと私が罰せられることになるんです」
宦官の無遠慮な指がリオのなかを強引に広げた。
快感などかけらもない、ただの・・・準備?
リオは、その屈辱に、歯を食いしばって耐えた。
リオの身体に十分に香油を塗り込めると、次に薄い夜着を着つけられた。
「これは、このひもを引けば、『しつけ』がほどけるようになっているんです」
「?」首を傾げたリオに、「つまり、仮止めが取れて、バラバラになるってことです」とはきはきと伝えてくる。そんなくだらないことを熱心に準備しているなんて。
(ああ、もう、嫌だな)
リオは時間が早く過ぎることだけを願った。
*********
王の高いびきを背に、リオはそっとベッドから抜け出した。
ふり返ると、ベッドは血に染まり、リオの両ももにもべっとりと血が付いていた。
汚らわしい。
この痛みが現実を思い知らせてくる。
もう、アウレリオ様だけに抱かれていた体ではなくなってしまった。
顔向けできない。
王は反抗的なリオに容赦しなかった。
体中に残る殴打のあと。
宦官に言われたように調子を合わせて『男娼』として過ごすべきだったのかもしれない。でも、どうしてもできなかった。
触れた指先が、気持ちが悪くて。
吐き気を抑えるだけで精一杯なのに、どうやって妖艶な演技ができたと言うんだろう?
立ち上がろうと足に力を入れると、後ろ穴に鋭い痛みが走り、つつーと血が伝う。
(飽きてもらえればいい・・・つまらない奴だと、追放してくれればいいのに)
空を見上げると、細い三日月がリオを照らしていた。
足元は氷のように冷たく、冷えが体に上がってくる。
いままで、アウレリオがどれほど大切にリオを抱いていたのか、今日思い知った。
ただの「モノ」として扱われることがどういうことなのか。
ただただ、終わる時を待つだけの屈辱的な時間が、心をどれだけ殺すのか。
(この月が、アウレリオ様のことも照らしてくれていたらいいのにな)
身分の隔てなく、月は優しくリオを照らす。
(どうか、アウレリオ様のお心が平穏でありますように。そして、もしかして同時に空を見上げていたら、うれしいな)
************
お読みいただきましてありがとうございました。
読者様の心が折れないことだけを切に願っております。
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