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第百二十六話 そしてまた現実に。
鳥の鳴き声とともに、リオは体を起こした。
隣で眠るアウレリオは穏やかで、来た時に感じた不安定な魔力はすっかり落ちついていた。
自分自身も肌はつやつやで、王のつけた不快な痕や打撲痕、小さな傷までなくなっている。不思議なことにアウレリオが付けた情交の痕だけはくっきりと残っていた。
とんと足を床につけると、同時に体内からアウレリオの出したものが流れ出す。
早く掻き出さないとお腹を壊してしまうのに・・・でも、わかっていても少しでもアウレリオの名残を体内に残したい。
しかも、なぜか腹の奥がぽかぽかと温かくなり、いつまでもアウレリオがとどまっているようなきぶんになれるから。
(外に流れたものだけで大丈夫だろう)
リオは太ももに流れ出たものだけをリネンで丁寧にふき取り、身支度を始めた。
以前使っていた長持を確認すると、長持の中はリオがここを出ていった日のまま、何も変わっていなかった。
まるで、指一本触れていないかのように、おいていったお仕着せもちょこんとしまわれたままだった。
(いいかな?)
伯爵家からしてみれば、リオが何年間も来たお仕着せなんてぼろきれ同然だろう。あの下品な薄物はもうぼろぼろになって、服の役目を果たさないし。かつての従僕時代の習慣で、床に散らばった薄物を拾い集め、小さく丸めた。リオの全身を覆っていたはずのそれは、まとめると手のひらに程度の大きさになった。こんな汚らわしいごみを処分させるのも申し訳なく、リオは薄物を丸めてポケットに突っ込んだ。
今回、王は最初から、滞在を一晩だけと決めていた。
前回追い出されたことは王にとって屈辱的だったらしい。
翌日の早朝の出発に間に合うように申し付けられていたのに、遅れてしまった。
慌てて玄関に走って行ったが、リオが着いたとき、王は馬車の中で高いびきをかいていた。
「おい、お前、陛下と同じ馬車に乗って、お世話してくれ」
王の侍従が不機嫌に命令してきた。
いつもならばその侍従が同席するのだが、おそらく一晩中王の粗相の面倒を見ていたんだろう。いつもは完璧に整えてある髪は櫛すら通っておらず、服のボタンが一つ外れていた。彼は、すっかり疲れ切って見えた。
「粗相なさるかもしれん・・・リネンと水はキャビンに積んであるから、よろしくな」
侍従はそう言って、吐しゃ物を受けるための桶をリオの手に押し込み、キャビンの後ろに回ってしまった。
リオがキャビンに入ると、耳を聾するような大きないびきが響き渡っていた。王は座席の上で大の字になって寝転がっている。リオは王に触れないように細心の注意を払いながら、隅に腰かけた。
急に、現実に戻ってきた。
(せっかくアウレリオ様に再会できたのに。一緒にいると、あっという間に時が過ぎてしまう。次に会うのはいつになることか・・・もう、会えないかも)
不意によぎった不穏な考えに大きく首を横に振る。
(5月の約束がある。行けなくたって、心は必ず空色の丘に戻るんだ。それに、月をながめれば、いつだって一緒だ。だから・・・だから、大丈夫なんだ)
御者が、掛け声とともに馬に鞭を当てた。
リオを乗せた馬車はゆっくりと、動き出した。
*********
アウレリオが目を覚ますと、日は高く昇っていた。
久しぶりのすっきりした目覚めだ。
ずっと澱のようにたまっていた魔力はどこかに行ってしまい、肩は軽く、頭はクリアだ。
リオがいない日々は本当につらかった。
手を伸ばして所在を確かめる。
「リオ?」
アウレリオの手はむなしくベッドを叩くだけ。リオの滑らかな身体はどこにもなかった。
「リオ?どこに行ったんだ?」
見回しても、どこにもいない。あのいまいましい薄物もどこにもない。
なぜいなくなったんだ?
今回、つくづく思い知った。自分にとってどれほどリオが大切なのか。
リオがいなくなってからは、魔力が完全に抜ける感覚がなくなり、自分の中の人と魔の間の境界線が危うくなってきていた。
リオさえいれば、そのバランスが人間に傾き、魔にとらわれるような感覚がなくなる。
やはり、リオは私を人間側に結び付ける何か・・・おそらくそういった種類の力の持ち主なんだろう。目立つ能力ではないから、知られていない何か。むしろ、アウレリオだけが知っていればいい力の種類で・・・森にとっては邪魔な存在。
アウレリオの胸がずきんと大きな音を立てた。
以前リオが森に誘い込まれたことがあった。
あの時の自分は正気だった。リオがいたから。
でも、リオを奪われて、魔と人間の境界が危うくなってきた。
その時、森は、どうしてた?
言いようのない不安に胸がずきずきとうずく。今すぐリオの顔を見なければ。焦燥感でのどがカラカラに乾く。
「リオ!」
大きな声で叫ぶと、従僕が顔を出した。
「リオならとっくに帰りましたよ。いま、洗顔の水を・・・」
「帰る?あれの居場所はここだろう?」
「アウレリオ様、もうお忘れになったんですか?リオはもう、国王陛下の愛じ・・・あたっ」
そこまで言ったところで、従僕の頭にアウレリオの投げたゴブレットが当たった。
「侍従長を呼べ」地獄のように恐ろしい声。
「はいっ!」
リオが来ていた間は元のアウレリオ様に戻っていたが、いなくなったとたんにこれだ。殺されないうちに逃げ出さないと。
従僕は風のように走り、侍従長を呼びに行った。
***********
お読みいただきましてありがとうございました。
いつも♡と広告もありがとうございます。
今日、小説の紹介文を書き直しましたが、私、これ書くのがめちゃめちゃ苦手です。
なんか、気に入らない。
他の方の上手な文章を読んで研究しないとね・・・
ついでにタグ付けも苦手です。
タグのアイディアあれば、ぜひ教えてください。
お待ちしておりますm(__)m
隣で眠るアウレリオは穏やかで、来た時に感じた不安定な魔力はすっかり落ちついていた。
自分自身も肌はつやつやで、王のつけた不快な痕や打撲痕、小さな傷までなくなっている。不思議なことにアウレリオが付けた情交の痕だけはくっきりと残っていた。
とんと足を床につけると、同時に体内からアウレリオの出したものが流れ出す。
早く掻き出さないとお腹を壊してしまうのに・・・でも、わかっていても少しでもアウレリオの名残を体内に残したい。
しかも、なぜか腹の奥がぽかぽかと温かくなり、いつまでもアウレリオがとどまっているようなきぶんになれるから。
(外に流れたものだけで大丈夫だろう)
リオは太ももに流れ出たものだけをリネンで丁寧にふき取り、身支度を始めた。
以前使っていた長持を確認すると、長持の中はリオがここを出ていった日のまま、何も変わっていなかった。
まるで、指一本触れていないかのように、おいていったお仕着せもちょこんとしまわれたままだった。
(いいかな?)
伯爵家からしてみれば、リオが何年間も来たお仕着せなんてぼろきれ同然だろう。あの下品な薄物はもうぼろぼろになって、服の役目を果たさないし。かつての従僕時代の習慣で、床に散らばった薄物を拾い集め、小さく丸めた。リオの全身を覆っていたはずのそれは、まとめると手のひらに程度の大きさになった。こんな汚らわしいごみを処分させるのも申し訳なく、リオは薄物を丸めてポケットに突っ込んだ。
今回、王は最初から、滞在を一晩だけと決めていた。
前回追い出されたことは王にとって屈辱的だったらしい。
翌日の早朝の出発に間に合うように申し付けられていたのに、遅れてしまった。
慌てて玄関に走って行ったが、リオが着いたとき、王は馬車の中で高いびきをかいていた。
「おい、お前、陛下と同じ馬車に乗って、お世話してくれ」
王の侍従が不機嫌に命令してきた。
いつもならばその侍従が同席するのだが、おそらく一晩中王の粗相の面倒を見ていたんだろう。いつもは完璧に整えてある髪は櫛すら通っておらず、服のボタンが一つ外れていた。彼は、すっかり疲れ切って見えた。
「粗相なさるかもしれん・・・リネンと水はキャビンに積んであるから、よろしくな」
侍従はそう言って、吐しゃ物を受けるための桶をリオの手に押し込み、キャビンの後ろに回ってしまった。
リオがキャビンに入ると、耳を聾するような大きないびきが響き渡っていた。王は座席の上で大の字になって寝転がっている。リオは王に触れないように細心の注意を払いながら、隅に腰かけた。
急に、現実に戻ってきた。
(せっかくアウレリオ様に再会できたのに。一緒にいると、あっという間に時が過ぎてしまう。次に会うのはいつになることか・・・もう、会えないかも)
不意によぎった不穏な考えに大きく首を横に振る。
(5月の約束がある。行けなくたって、心は必ず空色の丘に戻るんだ。それに、月をながめれば、いつだって一緒だ。だから・・・だから、大丈夫なんだ)
御者が、掛け声とともに馬に鞭を当てた。
リオを乗せた馬車はゆっくりと、動き出した。
*********
アウレリオが目を覚ますと、日は高く昇っていた。
久しぶりのすっきりした目覚めだ。
ずっと澱のようにたまっていた魔力はどこかに行ってしまい、肩は軽く、頭はクリアだ。
リオがいない日々は本当につらかった。
手を伸ばして所在を確かめる。
「リオ?」
アウレリオの手はむなしくベッドを叩くだけ。リオの滑らかな身体はどこにもなかった。
「リオ?どこに行ったんだ?」
見回しても、どこにもいない。あのいまいましい薄物もどこにもない。
なぜいなくなったんだ?
今回、つくづく思い知った。自分にとってどれほどリオが大切なのか。
リオがいなくなってからは、魔力が完全に抜ける感覚がなくなり、自分の中の人と魔の間の境界線が危うくなってきていた。
リオさえいれば、そのバランスが人間に傾き、魔にとらわれるような感覚がなくなる。
やはり、リオは私を人間側に結び付ける何か・・・おそらくそういった種類の力の持ち主なんだろう。目立つ能力ではないから、知られていない何か。むしろ、アウレリオだけが知っていればいい力の種類で・・・森にとっては邪魔な存在。
アウレリオの胸がずきんと大きな音を立てた。
以前リオが森に誘い込まれたことがあった。
あの時の自分は正気だった。リオがいたから。
でも、リオを奪われて、魔と人間の境界が危うくなってきた。
その時、森は、どうしてた?
言いようのない不安に胸がずきずきとうずく。今すぐリオの顔を見なければ。焦燥感でのどがカラカラに乾く。
「リオ!」
大きな声で叫ぶと、従僕が顔を出した。
「リオならとっくに帰りましたよ。いま、洗顔の水を・・・」
「帰る?あれの居場所はここだろう?」
「アウレリオ様、もうお忘れになったんですか?リオはもう、国王陛下の愛じ・・・あたっ」
そこまで言ったところで、従僕の頭にアウレリオの投げたゴブレットが当たった。
「侍従長を呼べ」地獄のように恐ろしい声。
「はいっ!」
リオが来ていた間は元のアウレリオ様に戻っていたが、いなくなったとたんにこれだ。殺されないうちに逃げ出さないと。
従僕は風のように走り、侍従長を呼びに行った。
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