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第百三十六話 覚醒 ※閲覧注意
※残酷な描写を含みます。苦手な方はご注意ください。
アウレリオがイサークを睨みつけた。
まなざしで人が殺せるのなら、一瞬で息絶えたはずだ。
「おお、怖い。ちょっとした冗談も許されないのかよ」
イサークは大げさに自分の身を抱くようなしぐさをした。
「おやめくださいな、食事の席で」
第三王女が冷たく言った。
「あなたという方は、あれだけ恥をさらしたのに、まだわからないのですか?ご自分がどれほど恵まれているか、いつになったら理解できるんですか。兄には子がおりません。わたくしの子が王位を継ぐ可能性だってあるんですよ」
「なんだと?」
「わたくしはこの国の第三王女なのです。キャンベル伯爵夫人でもありますが、あなたよりもはるかに身分が高いのです。つまり、あなたはわたくしを尊敬し、大切にする義務がある」
第三王女セラフィーナは満面に笑みを浮かべた。
「もちろん、そうしてくださるでしょう?」
「・・・」
「さあ、そろそろその薄気味悪い金色の目は元に戻してください。感情が昂るとその瞳になるのでしょう?私は空色の瞳が好きだと言いましたよね?主君の要望に応えるのが、臣下の務め。違いますか?あの男娼も死んでよかったわ。空気がよくなりました」
「本当にそうですこと!」
ジョゼフィーヌが両手を打ち合わせて調子を合わせた。
「あのような者、風紀が乱れるばかりです。子供のころから大人を誘惑したり、本当にろくでもない人間でしたよ。まさか、そんな手管に伯爵家の主人が引っかかるなんて」
「僕なら、絶対に大丈夫ですよ、お姫様。生涯心を込めてお仕えします」
「そう?」セラフィーナは鼻で笑った。「わたくしはどうしたらいいのかしら?旦那様?」
アウレリオはぎらぎらと金色に光る眼で一同を見回した。
「こんな・・・こんな奴らが。そして、使用人まで。なぜわからなかったんだ。ここまでくだらない連中だと」
「ほら、いい加減にぎらぎらと目を光らせるのはおやめなさい。下品ですよ」姫は苦笑しながら、子どもに諭すように言う。
アウレリオの金色の目にこめられた魔力は、ただの人ならば恐ろしくたまらないものだ。だが、第三王女は高貴な血が流れているため、恐ろしい、という感情がなく、ただ自分に逆らう夫が単純に不快なだけだった。
アウレリオの爪が黒く染まり、少しずつ伸びていく。
首筋のうろこは全身に広がりはじめ、もう止めることができなかった。
「私は人間か?」地を這うような声。
「え?当り前じゃないの」姫はポカンとしてアウレリオを見た。ぎらぎらとした目をしていようが、爪が黒く染まろうが大した問題ではない。姫の目には、相変わらずアウレリオは頼もしくハンサムに見えていた。
「いや。当たり前ではない。私の光る眼が・・・下品だと?人のことわりに収めておきたいのなら、私からリオを奪うべきではなかった」
「何ですって?」
まだあの男娼に未練があるというの?あれほどの恥ずかしめとむごい死を与えてやったのに、理解ができないの?
姫は腹立たしく思ったが、同時に急激に寒くなったことにも気が付いた。寒さのあまり、カタカタと歯の根が鳴る。
「あれは、私を人間にしておくための存在だったんだ」
「何ですって?」
「私はこの地の魔物に与えられた生贄だ。リオは、ともすれば魔に飲まれそうになる私を救う存在だった」
「何をばかばかしい」セラフィーナはそっぽを向いた。だが、本音を言うと少し怖くなり始めていた。夫の爪が黒すぎる。しかも、長く鋭い。首すじにぱりぱりと音を立ててはえているのは、うろこ?まるで、まるで・・・
「そうか。そう思っていればいい」アウレリオの目がぎらぎらと光り、部屋の中は霜でびっしりと埋め尽くされた。
目の前のグラスの水は凍っている。
「や、やめて。怖い」人間じゃない。
「安心しろ。すぐに何も感じなくなる」
そう言うと、アウレリオの長い爪が、同じテーブルに座っていたイサークとジョゼフィーヌの首を跳ね飛ばした。ごろごろとテーブルの上を転がってく二人の・・・。
「ひっ!!!」
「こいつらには情け深すぎる最後だったな。もっと苦しませてやりたいところだが、これ以上息を吸うのも許せない」
「な、なに、これ・・・どういうこと・・・」
目の前で起こっていることが理解できない。
セラフィーナが椅子の背に手を乗せ立ち上がろうとしたが、足ががくがくして立ち上がれなかった。
体勢を崩して床に転んでしまうと、目の前に給仕や使用人たちの生首が音もなく転がってきた。
「いやあああああ」
叫び声に合わせるように、時間差で使用人たちの首をなくしたからだがくずおれる。
「ははははははは!気分がいいな!なぜもっと早くこうしなかったんだ!」
アウレリオが振り返り、姫を見るとにやりと笑った。
セラフィーナは腰を抜かし、足が震えて立てない。
見回しても、誰も助けられそうな人はいない。
「そ、ソフィアは」
「わが産み手なる母上殿か?ショックで気を失ったらしいな。期待をかけた息子が魔物に変わればそうなるものなのかもな」
アウレリオが哄笑し、セラフィーナに右手を伸ばした。
その手は悪魔のように黒く長い爪が伸びている。全体的に黒ずんだ手は、もう人間のものとは思えなかった。
「た、た、たすけ・・・」
「くだらない人間ごときが。どれほど傲慢なんだ。その罪は自分の命で贖うがいい」
「おねが」
アウレリオの長い指が首筋を回り、締め付けた。
「もう少し、血はとっておけ。お前の高貴な血は役に立つからな」
(ば、化け物・・・)
そう思ったが声はもう出ない。
国一番と謳われた姫は、助けを求めるように右手をあげ、そして意識を失った。
ありがとうございました。
体調不良のため、携帯からあげているので、後日修正の可能性ありです。インフルエンザウイルスと闘い中(今のところワクチン頑張ってます)
アウレリオがイサークを睨みつけた。
まなざしで人が殺せるのなら、一瞬で息絶えたはずだ。
「おお、怖い。ちょっとした冗談も許されないのかよ」
イサークは大げさに自分の身を抱くようなしぐさをした。
「おやめくださいな、食事の席で」
第三王女が冷たく言った。
「あなたという方は、あれだけ恥をさらしたのに、まだわからないのですか?ご自分がどれほど恵まれているか、いつになったら理解できるんですか。兄には子がおりません。わたくしの子が王位を継ぐ可能性だってあるんですよ」
「なんだと?」
「わたくしはこの国の第三王女なのです。キャンベル伯爵夫人でもありますが、あなたよりもはるかに身分が高いのです。つまり、あなたはわたくしを尊敬し、大切にする義務がある」
第三王女セラフィーナは満面に笑みを浮かべた。
「もちろん、そうしてくださるでしょう?」
「・・・」
「さあ、そろそろその薄気味悪い金色の目は元に戻してください。感情が昂るとその瞳になるのでしょう?私は空色の瞳が好きだと言いましたよね?主君の要望に応えるのが、臣下の務め。違いますか?あの男娼も死んでよかったわ。空気がよくなりました」
「本当にそうですこと!」
ジョゼフィーヌが両手を打ち合わせて調子を合わせた。
「あのような者、風紀が乱れるばかりです。子供のころから大人を誘惑したり、本当にろくでもない人間でしたよ。まさか、そんな手管に伯爵家の主人が引っかかるなんて」
「僕なら、絶対に大丈夫ですよ、お姫様。生涯心を込めてお仕えします」
「そう?」セラフィーナは鼻で笑った。「わたくしはどうしたらいいのかしら?旦那様?」
アウレリオはぎらぎらと金色に光る眼で一同を見回した。
「こんな・・・こんな奴らが。そして、使用人まで。なぜわからなかったんだ。ここまでくだらない連中だと」
「ほら、いい加減にぎらぎらと目を光らせるのはおやめなさい。下品ですよ」姫は苦笑しながら、子どもに諭すように言う。
アウレリオの金色の目にこめられた魔力は、ただの人ならば恐ろしくたまらないものだ。だが、第三王女は高貴な血が流れているため、恐ろしい、という感情がなく、ただ自分に逆らう夫が単純に不快なだけだった。
アウレリオの爪が黒く染まり、少しずつ伸びていく。
首筋のうろこは全身に広がりはじめ、もう止めることができなかった。
「私は人間か?」地を這うような声。
「え?当り前じゃないの」姫はポカンとしてアウレリオを見た。ぎらぎらとした目をしていようが、爪が黒く染まろうが大した問題ではない。姫の目には、相変わらずアウレリオは頼もしくハンサムに見えていた。
「いや。当たり前ではない。私の光る眼が・・・下品だと?人のことわりに収めておきたいのなら、私からリオを奪うべきではなかった」
「何ですって?」
まだあの男娼に未練があるというの?あれほどの恥ずかしめとむごい死を与えてやったのに、理解ができないの?
姫は腹立たしく思ったが、同時に急激に寒くなったことにも気が付いた。寒さのあまり、カタカタと歯の根が鳴る。
「あれは、私を人間にしておくための存在だったんだ」
「何ですって?」
「私はこの地の魔物に与えられた生贄だ。リオは、ともすれば魔に飲まれそうになる私を救う存在だった」
「何をばかばかしい」セラフィーナはそっぽを向いた。だが、本音を言うと少し怖くなり始めていた。夫の爪が黒すぎる。しかも、長く鋭い。首すじにぱりぱりと音を立ててはえているのは、うろこ?まるで、まるで・・・
「そうか。そう思っていればいい」アウレリオの目がぎらぎらと光り、部屋の中は霜でびっしりと埋め尽くされた。
目の前のグラスの水は凍っている。
「や、やめて。怖い」人間じゃない。
「安心しろ。すぐに何も感じなくなる」
そう言うと、アウレリオの長い爪が、同じテーブルに座っていたイサークとジョゼフィーヌの首を跳ね飛ばした。ごろごろとテーブルの上を転がってく二人の・・・。
「ひっ!!!」
「こいつらには情け深すぎる最後だったな。もっと苦しませてやりたいところだが、これ以上息を吸うのも許せない」
「な、なに、これ・・・どういうこと・・・」
目の前で起こっていることが理解できない。
セラフィーナが椅子の背に手を乗せ立ち上がろうとしたが、足ががくがくして立ち上がれなかった。
体勢を崩して床に転んでしまうと、目の前に給仕や使用人たちの生首が音もなく転がってきた。
「いやあああああ」
叫び声に合わせるように、時間差で使用人たちの首をなくしたからだがくずおれる。
「ははははははは!気分がいいな!なぜもっと早くこうしなかったんだ!」
アウレリオが振り返り、姫を見るとにやりと笑った。
セラフィーナは腰を抜かし、足が震えて立てない。
見回しても、誰も助けられそうな人はいない。
「そ、ソフィアは」
「わが産み手なる母上殿か?ショックで気を失ったらしいな。期待をかけた息子が魔物に変わればそうなるものなのかもな」
アウレリオが哄笑し、セラフィーナに右手を伸ばした。
その手は悪魔のように黒く長い爪が伸びている。全体的に黒ずんだ手は、もう人間のものとは思えなかった。
「た、た、たすけ・・・」
「くだらない人間ごときが。どれほど傲慢なんだ。その罪は自分の命で贖うがいい」
「おねが」
アウレリオの長い指が首筋を回り、締め付けた。
「もう少し、血はとっておけ。お前の高貴な血は役に立つからな」
(ば、化け物・・・)
そう思ったが声はもう出ない。
国一番と謳われた姫は、助けを求めるように右手をあげ、そして意識を失った。
ありがとうございました。
体調不良のため、携帯からあげているので、後日修正の可能性ありです。インフルエンザウイルスと闘い中(今のところワクチン頑張ってます)
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