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第1章
第14話 引き継がれるもの
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地方大会が終わり、
三年生は引退となった。
次の練習が、
三年生にとって最後の部活だった。
体育館に入ると、
いつもより音が少ない。
誰も、先に打ち始めない。
それだけで、
今日が特別な日だと分かった。
佐藤 優真(さとう ゆうま)は、
三年生の背中を目で追っていた。
この人たちは、
もうすぐいなくなる。
頭では分かっていたが、
実感は、今になって強くなっていた。
練習は短かった。
軽くラリーをして、
最後に少しだけ試合形式。
強打はない。
でも、一球一球が丁寧だった。
練習が終わると、
全員が中央に集められた。
三枝コーチが前に立つ。
いつもの笑顔。
けれど、今日は少し落ち着いている。
「まずは、三年生」
一拍置いてから言う。
「お疲れさまでした」
拍手は控えめだった。
それでも、全員が顔を上げていた。
「結果は、
正直、悔しかったと思う」
圧城中との試合が、
自然と頭に浮かぶ。
「でも、
このチームは、ちゃんと強くなった」
三年生の誰かが、
小さくうなずいた。
三枝コーチは、
視線を下級生に移す。
「ここからは、新しいチーム」
「もう
“先輩がいるから”は使えない」
笑顔のまま、
逃げ道をふさぐ言い方だった。
山下 登(やました のぼる)先生が、
一歩前に出る。
「新体制を発表します」
体育館が、静まり返る。
「次の部長は、
二年生の水野」
水野が、
一瞬だけ息をのむ。
そして、
まっすぐ前を見て返事をした。
「はい」
その声は、
少し硬かった。
「副部長は、
二年生から一名」
名前が呼ばれ、
もう一人の二年生が前に出る。
山下先生は、
少し間を置いて続けた。
「それから――」
一年生を見る。
「1年代表を一名」
優真の胸が、
わずかに跳ねた。
「一年生、
佐藤 優真」
一瞬、
耳を疑った。
「……はい」
返事をしながら、
頭が追いつかない。
三枝コーチが、
横から口を出す。
「試合に出てないから、じゃない」
軽い口調。
「見てた。
考えてた」
それだけ。
佐伯 仁(さえき じん)と
岡崎 拓也(おかざき たくや)が、
一瞬こちらを見る。
二人は、
コートで評価されている。
自分は、
別のところを見られている。
その違いが、
はっきり分かった。
「一週間後から夏休み」
三枝コーチが言う。
「夏は、
チームが一番変わる」
「覚悟しといて」
三年生が、
最後にラケットを片づける。
「頼むぞ」
それだけ言って、
体育館を出ていった。
優真は、
その背中を見送った。
引き継がれたのは、
役職だけじゃない。
悔しさ。
時間。
次は勝て、という無言の圧。
新体制。
夏が、
もうすぐ始まる。
三年生は引退となった。
次の練習が、
三年生にとって最後の部活だった。
体育館に入ると、
いつもより音が少ない。
誰も、先に打ち始めない。
それだけで、
今日が特別な日だと分かった。
佐藤 優真(さとう ゆうま)は、
三年生の背中を目で追っていた。
この人たちは、
もうすぐいなくなる。
頭では分かっていたが、
実感は、今になって強くなっていた。
練習は短かった。
軽くラリーをして、
最後に少しだけ試合形式。
強打はない。
でも、一球一球が丁寧だった。
練習が終わると、
全員が中央に集められた。
三枝コーチが前に立つ。
いつもの笑顔。
けれど、今日は少し落ち着いている。
「まずは、三年生」
一拍置いてから言う。
「お疲れさまでした」
拍手は控えめだった。
それでも、全員が顔を上げていた。
「結果は、
正直、悔しかったと思う」
圧城中との試合が、
自然と頭に浮かぶ。
「でも、
このチームは、ちゃんと強くなった」
三年生の誰かが、
小さくうなずいた。
三枝コーチは、
視線を下級生に移す。
「ここからは、新しいチーム」
「もう
“先輩がいるから”は使えない」
笑顔のまま、
逃げ道をふさぐ言い方だった。
山下 登(やました のぼる)先生が、
一歩前に出る。
「新体制を発表します」
体育館が、静まり返る。
「次の部長は、
二年生の水野」
水野が、
一瞬だけ息をのむ。
そして、
まっすぐ前を見て返事をした。
「はい」
その声は、
少し硬かった。
「副部長は、
二年生から一名」
名前が呼ばれ、
もう一人の二年生が前に出る。
山下先生は、
少し間を置いて続けた。
「それから――」
一年生を見る。
「1年代表を一名」
優真の胸が、
わずかに跳ねた。
「一年生、
佐藤 優真」
一瞬、
耳を疑った。
「……はい」
返事をしながら、
頭が追いつかない。
三枝コーチが、
横から口を出す。
「試合に出てないから、じゃない」
軽い口調。
「見てた。
考えてた」
それだけ。
佐伯 仁(さえき じん)と
岡崎 拓也(おかざき たくや)が、
一瞬こちらを見る。
二人は、
コートで評価されている。
自分は、
別のところを見られている。
その違いが、
はっきり分かった。
「一週間後から夏休み」
三枝コーチが言う。
「夏は、
チームが一番変わる」
「覚悟しといて」
三年生が、
最後にラケットを片づける。
「頼むぞ」
それだけ言って、
体育館を出ていった。
優真は、
その背中を見送った。
引き継がれたのは、
役職だけじゃない。
悔しさ。
時間。
次は勝て、という無言の圧。
新体制。
夏が、
もうすぐ始まる。
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