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30. 王様との話し
しおりを挟む扉が開いて部屋の中が見えた。
すごい広いな…。大理石か?ピカピカとひかっている石の床と壁。天井には沢山の花の絵が描かれている。そこから豪華なシャンデリアが沢山吊り下げられていて…おいおい外見と中身のミスマッチ感が半端じゃないんだけど。
俺は少しこの空間に違和感を感じつつも父さんと一緒に遠くに見える王様を目指して歩いていった。
「やっと会えたな。私がこの国の王、殿様 家康(とのさま いえやす)だ。 」
……。俺は笑いを必死に堪えてクールな表情を維持した。
いや、殿様って!家康って!
突っ込みどころが満載なんですけど!
やっぱりこの異世界はかなり日本の影響を受けているとしか考えられない。
しかも王様は日本人と同じ真っ黒な髪と瞳をしている。顔はタヌキ顔をしているな。
「遅くなり申し訳ございません。息子はまだ8歳の子供ですので何かとマナーについて教える事が多くお日にちをいただきました。」
父さんの汗がすごい出ているのが見える。
嘘ついているからね。マナーなんてとっくに習得しているよ。今回は王様対策を練っていて時間がかかったんだ。
「お初にお目にかかります。八岐 竜と申します。お会いできて光栄です。」
俺はなるべく子供らしく聞こえるように話し、王様に笑顔を見せた。
「おお、可愛らしい子供だな。確か…男の子と聞いていたが間違いはないか?」
「はい。」
王様は俺が女の子の様に見えたんだな。よく言われます。
「ほう…これは将来が楽しみな美少年だな。」
王様は高笑いをしながら俺を下から上まで確かめるように見ている。
何だろう…寒気を感じる。蛇に睨まれた蛙ってこんな感じなんだろうなとふと思った。
「今回、竜を城に呼んだのは聞きたい事があるからだ。」
いよいよ本題にはいりますね。
「はい。」
「…そうだ忘れておった、まずは礼を言わねばならなかったのだ。今回の事件に協力してくれていたのであろう。ご苦労であったな。」
これって…引っかけなのか?父さんとの話し合いては俺は直接この事件に関わっていないことにしようと決めていた。報告書にも俺の名前は書かなかったときいている。それなのに…俺に事件解決のお礼を言うということは、俺が事件に関わっていることを確認したいと思っている?
答え方が難しいな…。
「いえ、お礼を言われる事はしていません。私はただお父様に無理を言って一緒にあの領地まで連れて行ってもらい、そこの領民の皆さんとお話をしただけです。」
王様は不敵な笑みを顔に浮かべた。上手く答えられたと思ったんだけど…ダメだった?
「フッハハハッ!」
王様が豪快に笑いだした。え?!何?!何が起こったの?!
「いろいろとお前の事を調べさせたが…やはり一筋縄ではいかない子供だな。安心しろ罰する為に呼んだのではない。」
え?そうなのですか。だって父さんが「神の使い」って領民の皆さんが言っていることが問題だって言っていたのに…。あれ、違うのか?
「正直に申してみよ、本当の事が知りたいのだ。王妃の進退にも関係している事だからな。」
正直に…。どこから話すの?
俺は父さんの方をチラッと見た。父さんも俺の方を見ていた。父さんの顔色悪!!!
報告書が嘘だとバレたんだから仕方ないけど…。大丈夫なのか?
それよりどうするの?俺は正直に話して良いのか?
「大丈夫だ、八岐の報告書も罪に問わない。何か事情があったのだろう。だから素直に話せ。」
父さんが安堵の溜め息を吐き出したのが聞こえてきた。顔色も…良くなってきているね。
んー、話しても良いかな。王様に龍達の事を理解してもらえればこれ程強い味方はいないしね。
僕は王様に事件の事を話す事に決めた。
「どこから話せば良いのでしょうか?」
「そうだな、まずは…なぜお前が父親について行くことになったのか。うん、そこからだな。」
最初からということですね。
「信じていただけるかは分かりませんが、僕は龍神様から"龍の使い"にになるようにお告げを受けました。その後に龍の呪いが原因で土地が荒れているというのを耳にして調べてみたくなったのです。」
王様は黙って俺の話を聞いてくれていた。
「"龍の使い"とは何だ?」
俺は龍の使いについて王様に説明した。
「そんな職業は始めて聞いたな。」
そうだと思います。この国に居ないから異世界から来たんですよ。とは言えないけど。
「なぜついて行ったのかは理解した。次はどうやって不正を暴けたのかだ。」
「それはお父様の報告書の内容と変わりがありません。」
別に龍達の力を少し借りた事は言わなくても良いだろう。
「そうか…。」
王様は何かを考えているみたいだ。沈黙の時間が緊張を誘う。
早く帰りたいな…。父さんも限界が近いよね。
「話しは変わるが、竜は学校に行きたいと言っているらしいな。」
そこまで調べられているんだ!
「はい。」
「どこに行くのかは決まっているのか?」
それは父さんからまだ聞かされていないんだよね。
「実は…今選んでいる最中なのです。」
父さんが冷や汗を拭きながら答えている。今更だけど、父さんってよく国防相に勤められているよね。そんな感じで大丈夫なの?
「そうか、それなら私が選んでも良いだろうか?」
「「王様がですか?!」」
父さんと声が被ったよ。俺はどこにやられるわけ?
「それは…どこかお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ…それは…。」
「「それは…?」」
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