男装令嬢の願い

縁 遊

文字の大きさ
30 / 88

30. 断れない…

しおりを挟む


お姉様からの手紙が届いた…。

…手紙を読むのが怖い。

女性が誰なのか、わかってしまうとクリフ様にお伝えしないといけない。

…勇気を出して、手紙を読んだ。

驚きだ…。

女性は私…。

その日はウィッグをつけて外出していたらしい。

その時、クリフ様に会ったんだ…。

クリフ様…偶然にしてはできすぎね。

しかも、クリフ様には、女性には相手がいると紹介したと書いてあった。

複雑な気持ちだ…。

もちろん、クリフ様が私の事を気にしてくださった事は嬉しい…けど、レオナとは知らないのだから別の女性に惹かれているとも言える…。

あ~…自分でもこの感情をどう処理して良いのかわからない…。

…考えを整理しないと。

まずは、クリフ様が探していた女性は私だった。

クリフ様にそれをどう言うか…これが問題。

まさか、私です…何て言えないし。

もうひとつ問題なのは相手がいると知っていて何故私に聞いたのか…。

そこまで、惹かれているというこですよね…。

手紙にお姉様は…もし、どうしても聞きたいと言われたら「婚約者がいる女性を不幸にするおつもりですか?」と言えば良い…と書いてあった。
そんな事を言えるはずがない…。

しかも、私に婚約者はいないし…。

はあ~。

「レオン!やっと会えたわ」

不意に声をかけられた。

「姫様…」

クリフ様部屋に入る直前に姫様に呼び止められた。

「お久しぶりですね、姫様」

「そうよ!レオンってば私に何も言わずに休暇なんて…酷いわ」

姫様が拗ねているようだ。

「申し訳ございません。急いでいたものですから…」

「お兄様から聞いたわ…体調が悪かったのでしょう?もう大丈夫なの…」

「ご心配ありがとうございます。もう、大丈夫です」

そうか、私は体調不良で休暇をもらったんだ…。

「良かったわ…。レオンの顔を見られてホッとしたわ」

ガチャッ…。

クリフ様の部屋の扉が開いた。

「人の部屋の前で何をしているのかな?」

笑顔でクリフ様があらわれた。

「お兄様ってば、妬いてるのね…私とレオンが仲が良いから」

「ああ、そうだね。エルナはレオンが大好きだからね。兄としては悔しいよ」

クリフ様がおどけてみせる。

「では、お兄様…お部屋でお茶を頂けますか?」

姫様もおどけてみせる。

「かしこまりました、エルナ姫様の為に美味しいお茶を御用意させて頂きます」

   「「「プッハハハ…」」」

3人で顔を見合わせて笑った。

結局…本当にクリフ様の部屋でお茶を頂くことになりました。

クリフ様とエルナ姫と私の3人で…。

穏やかな時間を過ごしていたのだが…。

「…そう言えば噂を聞きました。レオンが婚約するって…本当ですの?」

空気が変わりましたね…。

そんな噂が流れているとは知らなかった…。

エルナ姫は誰から聞いたのでしょうか?

「そんな相手はいませんよ。…ただ、両親からは早く婚約者を決めるように言われていますね…」

「レオンもなのか…」

クリフ様が呟いた…。

「あら、お兄様は来月のお休みの日に婚約者を決めるパーティーを開かれるのでしょう?」

…婚約者。

「……ああ。王妃様のお決めになった事だ。なあ、レオン…この前の女性は来てくれないだろうか」

え?!どうしよう…。どう答える…。

「…私にはわかりません。本人に聞いてみないと…」

クリフ様の顔が明るくなった。

「では、聞いてくれないかな。頼む!」

…断れない。

「わかりました…。聞いてみるだけですよ。期待しないで下さい」

「ああ、わかってる」

スゴイ笑顔だな…。
絶対に期待している。

あー…簡単に引き受けてしまったけど…どうしよう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...