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60. 婚約者の店
しおりを挟むクリフ様に相談したらアルス様の提案は辞めた方が良いと言われてしまったけど…。
他に両親が納得するような案がない。
どうしよう…。
「レオン、今日は出掛けるから準備しなさい」
突然部屋に入ってきたのはお母様だ。
外出するなんて聞いてませんが…何処に行くのだろうか。
「何処に行くのですか?」
お母様は何を聞いているのだという感じで、片方の眉が上がった。
「決まっているでしょ。貴方の婚約者の所に行くのよ」
何となくそうかなと思っていたけど…。
ここで抵抗しても無駄だろうな…行くしかないか。
「わかりました」
1時間後お母様に連れて行かれたのは、屋敷ではなくお店だった。
わりと大きな建物だ。
貴族相手の商売らしく内装も高級感がある作りになっている。
「これは奥様、よくいらっしゃいました。旦那様がお待ちです、こちらへどうぞ」
お母様は目線だけで挨拶をしたみたいだ。
店員に店の奥に案内される。
重そうなドアを開けるとナナリーと父親ともう一人少年がいた。
「お久しぶりです奥様、レオン様。ようこそ、我が商店へ」
父親は相変わらず胡散臭い笑顔で挨拶をしている。
ナナリーも前回と同じで下を向いている。
少年は私を睨んでいるみたいだ。
ナナリーのお兄さんなんだろうか…。
「ほら、ナナリーお部屋にご案内しなさい。お父様達はお話があるから…」
「…はい」
消え入りそうな小さな声でナナリーは返事した。
少年も一緒みたいだ。
部屋を出ると少年とナナリーはしっかりと手を繋いでいた。
「2人は兄妹ですか?」
少年がジロッと私を睨む。
「違う、俺はこの店の見習い…です。ナナリ-とは幼馴染み」
兄妹ではないのか…。
「名前を聞いても?」
「ルナロ…です」
ルナロは言葉使いを注意するように言われているのかな…取って付けたような語尾だ。
それに、私からナナリーを守ろうとしているのがわかる。
歳のはなれた貴族なんて幼女趣味の変態と思われても仕方ないか…。
「ルナロはナナリーが好きなのかな?」
凄い勢いで睨んできた。
顔は真っ赤になっているけど。
言葉は出ないが、頷いた。
初恋かな…。
「秘密だけど…私はナナリーと結婚する気はないから安心して良いよ」
ナナリーとルナロはお互いの顔を見てから私の方を見た。
「本当に!嘘じゃないの…」
初めてナナリーの元気な声を聞いた。
「うん。本当だよ、だけどね…これは秘密だよ、誰にもまだ言ってはいけないよ。わかったかい?」
「「うん」」
2人は元気良く返事した。
私はこの時、忘れていた。
何故、お母様がここに来たのか…。
ナナリーの父親と何を話しに来たのか…。
その事を聞くことを…。
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