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86. やっぱり…
しおりを挟む「あの人素敵ね…」
私の近くにいる女性2人組がどうやら賢人さんの事を話しているようです。
私はレストランの近くで下ろされて、賢人さんは少し離れた駐車場に車を停めに行ってくれているので待っている状態なのです。
多分、私が賢人さんの彼女だと思っていないので目の前で話しています。
「本当だ、爽やかなイケメンだね。それに優しそう。1人なのかな?」
「そんな訳ないでしょ。きっと彼女が何処かで待ってるんだよ」
2人が周りをキョロキョロしながら彼女らしき人を探している様子です。
「誰だろ?あのハイヒールの人かな?」
ハイヒール…見つけましたわ。艶やかな黒髪のストレートヘアーのボブスタイルで白シャツにロングスカートの爽やかスタイルの綺麗な女性です。
確かに、賢人さんと並ぶと美男美女と言った感じになりますね。
「え~、あの人は近くにいるあの男性の彼女でしょ。それよりあっちの可愛い系の人じゃないかしら」
可愛い系…あの人かな?ブラウンヘアーにふんわりとパーマがかかったヘアースタイルでワンピースにカーディガンを羽織っています。確かこの人と並んでも納得できますわ。
「あ、こっちに来るわよ。どちらが当たっているか分かるわね」
残念ながらお2人とも外れです。あなた方がスルーした私が彼女ですから…。やっぱりメイクを少し変えただけでは駄目みたいですわね。
「お待たせ。行こうか」
「はい…」
先程まで話していた女性達は驚きの目で私達を見ていた。
「…え!嘘…聞かれていたかな…」
2人はすぐ後ろにいた私がまさか彼女だとは思わずに話していましたからね。全部聞いていましたよ。
「まさか、だったね」
「うん」
いや、それも聞こえてますからね。
「はぁ~…」
「どうしたの?疲れた?」
思わず出てしまった溜め息に賢人さんが反応します。
「すいません、何でもありません。待っている間に少し考え事をしていたので…」
「そうなの?僕で良ければ相談にのるよ」
賢人さんの事で悩んでいますから相談はできませんよね。
「ありがとうございます」
今は気持ちを切り替えてランチを楽しまないといけません。
お店に到着すると賢人さんが予約してくれていたのでスムーズに席に案内されました。
イタリアンのお店みたいです。
「ここはピザが美味しい事で有名なんだよ。シェフがこだわってピザ釜を作ったらしいからね」
「へぇ~、そうなんですね。楽しみです」
「あれ…菫様?こんな所でお会いできるなんて光栄です」
この声は…!
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