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85. 番外編 1 〈アデル視点〉
しおりを挟むはああ~。
サファイアが屋敷からいなくなって数ヵ月が経った。
僕の心は穴が空いたみたいに満たされない…。
「まさか、坊っちゃんがここまで誰かに執着されるなんて…驚きです」
侍女のイルラがお茶をいれながら言った。
そうだろうね、僕自信がビックリだからね。
まさか、僕が女性に執着する日がくるなんて…思ってなかったんだから。
自分で言うのもどうかと思うけど、物心がついた頃から既に女性に囲まれていた。
僕の身分が好きな者、僕の見た目が好きな者…。
成長するほど、それは酷くなっていった。
その頃の僕は女性の化粧や香水の匂いを嗅ぐだけで気分が悪くなるくらい女性を拒否していたのだ。
しだいに、動物達と過ごす時間の方が長くなり、人間を遠ざけるようになっていった。
王都から離れたここで暮らすようになったのも、その頃だ。
まさか、こんな運命が待っているなんてその頃の僕に教えてあげたいくらいだよ。
猫の姿のサファイアはすごく可愛いかったから…なのかな?
長老もザジも可愛いいけど、それとは最初から違っていたような気がする。
初めて人間の姿のサファイアを見た時の感動は今でも忘れられない…。
妖精なのかと思うくらい、儚げで綺麗な姿だった。
僕が一目惚れをするなんて王都の皆が聞いたらビックリすると思う。
一番驚いているのは僕だけど(笑)
本当に人の人生なんてどうなるか、わからないんだな…。
普通は、初恋は実らないっていうのに僕の場合は実って結婚する事になったしね。
もし、サファイアと出会わなければ…政略結婚でもして愛のない家庭になっていたかもな…。
そう考えるとサファイアとの出会いは運命だったのかもしれない…。
あー、サファイア…早く屋敷に帰って来ないかな。
後、半年くらいあるのかな…待てないよ。
礼儀作法とか僕が手取り足取り教えてあげるのに…。
ん?視線を感じる。
「坊っちゃん…何か良からぬ事を考えていらっしゃいますね」
何でわかったんだ…。
流石だな…。
「坊っちゃん…サファイア様と出会えて良かったですね…」
え?
「どうしたんだイルラ?」
「…私は嬉しいのです。坊っちゃんが人を愛する事が出来て…。坊っちゃんは人を愛する事ができないのかと心配しておりましたから…」
「イルラ…」
そんな風に思っていたのか…。
「私が元気な内に坊っちゃんの世継ぎが抱けそうで嬉しいです…」
イルラの目に涙が溢れた。
イルラの横で執事のバルダも泣いている。
2人が泣いている姿を見るのは初めてだ。
「2人共、心配してくれていたんだね…ありがとう」
僕は今まで周りが見えていなかったのかな…。
こんなに心配させていたなんて…。
気づかせてくれたサファイアに感謝だね。
サファイア…早く帰っておいで…。
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