姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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11. 氷姫様出現

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 しぶるお兄ちゃん達を部屋に閉じ込めて(監視役はあや姉がやってくれています)部屋から出て会場に向かう。姫野とはお兄ちゃん達に会うといけないから会場の前で会うことにしている。

 長い廊下の先に姫野の姿が見えた。今日は濃紺の細身のスーツにストライプのシャツをあわせている。爽やかイケメンスタイルだ。

 この人の横にまた並ぶ事になるなんてね。学生時代とは違うコンプレックスがでてきそう。

 私に気がついたのか姫野もこちらを向いているが様子がおかしい。口を少し開けたまま固まってるみたい。

 何があったのか気になるから早く姫野の所に行きたいが、ヒールを履いているのでゆっくりしか歩けない。

「あっ」

 あともうすぐで姫野の所だと思った時、気持ちが焦っていたのか足に力が入りすぎたようでバランスを崩してしまい右側に体が倒れそうになった。

「大丈夫か?」

 姫野が急いで駆け寄ってきてくれて、倒れるのを防いでくれた。意図したわけではないが、あや姉の言っていたスタイルになっている。姫野が私の右側に立って左の腰に手をあててくれている。

 この場合は私の左手の位置はどこが正解なんだろう?あや姉に聞いてなかったよ!

「足…痛いのか?」

 プチパニックになっている私を見て心配した姫野が私の顔を覗き込む。

 ち、近い。顔が…顔が近すぎる。

「だ、大丈夫。ありがとう」

 慌てすぎて声が裏返っちゃった。恥ずかしい。

「姉さんから聞いた。このまま行こう」

 え?嘘…このまま行くの。

「いや、でも悪いよ。ゆっくりなら歩けるし」

 そう言っても姫野の手は私から離れない。

「まあそう言うな。婚約者らしくさせてくれ」

 優しく笑う姫野に視線が釘付けになった。

 こんな優しい顔で笑うこともあるんだと思って見ていたら姫野と視線があった。

「どうした?やっぱり足が痛いのか?」

「うううん、優しい笑顔だなと思って見てたの…」

 目線があっていた姫野の顔が私から逸れて横を向いてしまった。どうしたんだろう。

「姫野、どうかした?」

「いや…時間だから行こうか」

「うん」

 何事も無かったかのように、また私の方を見てくれた姫野に安心する。

 今からが勝負だよね。

 私達は会見の会場に入った。

 入った途端に沢山のフラッシュの光を浴びる。どれだけの数の記者さん達がが来ているのかと怖くなった。

 フラッシュの光が落ち着いて辺りが見やすくなると、この話を受けるのでは無かったと後悔した。

 予想していたよりもはるかに多い記者さん達の数だったからだ。姫野の人気を侮っていたのかもしれない。

 ホテルの係の人に席まで案内されて二人で記者さん達に頭を下げて座る。

 座れてよかった…。立ったままだと足が震えていたかもしれない。

 私達が座ったところで姫野が話し始めた。

「本日はこんなに沢山の方々に私達の婚約発表会見にお集まりいただきありがとうございます。ご質問は事前に伺っていたものをお答えさせていただきたいと思います」

 そう、実はアドリブに弱い私の為に姫野が事前質問という形をとってくれたのだ。ありがたいです。

「まずは…そうですね、一番ご質問の多かった馴れ初めからお話をさせていただきます。皆さんご存知の通り私達は幼き頃より顔見知りの間柄でしたが、光がケガでバレーから離れたことで私が自分の気持ちに気がつき私から告白をして付き合う事になり、今に至ります」

 …嘘話をそんなにスラスラと間違うこと無く話せるなんて姫野凄い。横から尊敬の眼差しで見つめるよ。

 そんな私に気がついた姫野が私と目線を合わせて柔らかな笑顔を見せた。

 バシャッ!パシャッ!パシャッ!

 「おおー!!」という声と共に、一斉にカメラのフラッシュが点滅する。

 実は、姫野はバレーの世界では氷姫様(こおりひめさま)と言われるくらい記者さんに対して笑わないことで有名な選手だから笑顔は貴重な写真チャンスらしいんです。

 その貴重な笑顔を記者さん達が見逃すはずがありません。作り笑顔はよく見せているみたいだけど、わかりやすすぎるんだよね…。

「次は…」

 記者会見はこの後もこんな感じで過ぎていき、終了しようとした時でした。一人の女性記者さんが立ち上がり質問をしてきたんです。

「すいません、最後に一つだけよろしいですか?」

 私と姫野はお互いの顔を合わせて、どうするか話をして一つだけならと質問を受けることにした。

「一つだけなら…どうぞ」

 姫野がそう言った時、女性記者が見せた顔に何だか嫌な感じがした。

「実は…先日写真を撮られていた女優さんが二股をかけられていたと本誌に告白をしてくれたのですがその辺りは真実…ということでよろしいですか?」

 二股?それって間違いって姫野が言っていたあの女優さんとの事だよね。

 間違いではなかったってこと…。

 私は心配になり姫野を見た。

 姫野の怒っているのがすぐにわかった。

「どこの方ですか?雑誌名とお名前を教えていただけますか?お祝いの席での最後の質問が間違いの記事についてとは…笑えないドッキリですか?」

 姫野は作り笑いをうかべている。会場の空気が一瞬にして凍ったのは言うまでもない。

 氷姫様、出現です!

 ど、どうなるんだろ~!?

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