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15. 姫サイド その3
しおりを挟むヤバイ、ヤバイ、ヤバイだろ!なんだあの綺麗さ!!!姉さん、完全にやりすぎだ!こういうのは俺達の結婚式に…いや…なんだ…その…。
これが婚約発表会見前に王子の姿を見た俺の感想だった。
あまりの綺麗さに王子に見とれていたら、ふらついてこけそうになっている王子に気がついた。猛ダッシュで王子に駆け寄り体を支えた。
細い腰だな…。
姉さんから事前に王子のエスコートについてレクチャーを受けらされたのでどうするかは理解はしていたが、こんな至近距離で体を密着させながら、この細い腰に触れたままで歩くなんて…俺の理性が持つのか?
王子の足も心配だが俺の理性も心配だ。
それなのに王子は俺の気持ちも知らないで、また可愛いことを言ってくる。
俺の笑顔が優しい笑顔だと?
お前の笑顔の方が優しいぞ!
しかも、そんな事を言うのは王子くらいだ。俺はお前にしかこんな顔にならないと、いっそ王子に言ってやりたい。どんな顔を見せるのだろうか。
はあ~、どうしよう。
王子を見れば見るほど婚約発表会見を止めたくなってきた。
こんなに綺麗な王子をあんな大勢の人の前に出す?無いだろ!!王子のこんな綺麗な姿は俺の前だけで見せてくれれば良いんだ。他の奴になんて見せたくないし、教えたくない。
王子は昔からなぜか自分に自信がなかったから、今もきっと過小評価をしているんだろうけどな…。
幼い頃からプロの写真家にとってもらえる機会も多くて二人で撮影に行くことも度々あったが、王子はどんなに大人達に「可愛い」と褒められてもお世辞を言われていると思っているようだった。
まあ、俺から見れば王子は可愛いではなく綺麗だと思っていたけどな。
そう言えば…王子には直接言ったことなかったな…。
今思えばあの頃の王子は子供から大人へと変化する時期の独特な雰囲気と、少年と少女の中間的な雰囲気を醸し出して大人達は魅力的に感じていたのかもしれない。
あの頃の俺は王子に寄ってくる、変な大人を蹴散らすのに苦労してたからな。頑張ってたよな俺。
当の本人は凄い鈍感力で天然スルーしてたけど…。
それは今も変わってなさそうだな。
ふ~、本当は今すぐに抱きしめたいし、もっと触れあいたいけど、今の王子だとすぐに逃げられるだろうというのが俺にもわかるからできない。
ジレンマ…か。まさか俺がこんな風になるなんてな。
王子を甘やかしてもっとあの可愛い笑顔を俺にだけ向けて欲しい。
独占欲の強い男は嫌われる!と姉さんから言われたが仕方ないだろ!俺だってこんな自分に戸惑っているんだ。
親からも無表情だとか何事も淡白すぎだと言われてきた俺が、王子に対してだけは執着が凄くて家族から引かれたくらいだ。
犯罪者にはなるなよ…と親父に肩を叩かれた時にはさすがに驚いた。
だが、家族から見た俺はそれぐらいおかしいらしい。
でも王子の事だけは諦められない。
それは絶対だ。
今回の海外の名門バレーチームからのスカウトの話は二人の関係を王子に考えてもらう良いきっかけになると思った。
海外に俺が行く事になると必然的に会うことが難しくなる。王子はきっと寂しいと言ってくれるんじゃないかと期待した。…が、反応は違っていた。
単純に俺の活躍を喜んでくれている王子を見て複雑な気持ちになった。
王子は俺が離れる事を寂しいと思わないのか…。
落ち込みそうになっていたら、王子が俺の為に頑張ると口にしたんだ。
え…可愛すぎるだろ?
王子は新手の小悪魔なのか?
俺と離れるのは寂しくないくせに、俺の為には頑張れるんだ。
俺は考えるよりも先に体が動いて、気がついたら王子を抱きしめていた。
柔らかな感触と体温、それと女性の香り…。
静かな時間が流れる中で、俺の腕の中にいる王子がもぞもぞと動いているのがわかった。
あっ…しまった!
これ、きっとどうして良いかわからずに困ってる。正直に可愛いから抱きしめた…なんて言ったら明日からまともに話をできない可能性がある。
どうする俺…。考えろ!
案の定、王子が俺になぜ抱きしめたのかと聞いてきたぞ!
王子に拒否されず、疑われない言い訳…。
そうだ!よく外国人選手が言っているあれを使おう!
感謝の気持ちだ。
俺は咄嗟にチームに在籍する外国人選手がよく「ありがとう」とカタコトで話ながらハグをしてくる時に話していた事を思い出した。彼らいわく感謝の気持ちを表している、ボディーランゲージだよ…と言っていたんだ。
ドキドキしたが、王子は納得してくれたみたいでほっとした。
そういえば、今日は頼んでいたものが出来上がると連絡がきていたのを思い出した。
他の男を牽制するために、少しでも早く王子にアレを渡したい。
そうだ、この流れで食事に誘えば不自然じゃないよな。
その時にサプライズプレゼント!
いける!これは良いよな。
食事に誘うと王子も喜んでくれたみたいだし、プレゼントを見た時の王子の反応が楽しみだな…。
喜んでくれるよな…。
たぶん…。
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