17 / 43
17. 王子再び驚く
しおりを挟む今日は久しぶりに柚菜ちゃんと直接会う約束をしている。電話やメールで連絡は取り合っていたのですが、柚菜ちゃんの職業柄から時間が折り合わず、なかなか会えなかったんです。
売れっ子の漫画家さんって締め切りとかに追われていて大変みたい。
その柚菜ちゃんにお兄さんの悠人さんが連絡をしたみたいで、以前に言っていた食事会を今日することになったんですよね。私が聞いた時は暫く忙しいから無理かもしれないと言っていたのに大丈夫だったのかな?
そう言えば…柚菜ちゃんてお兄さんの悠人さんの言うことは絶対なんだって前に言っていたな。あの時は柚菜ちゃんって、ブラコンなのかな~としか思わなかったけど…今回も悠人さんが言ったからなのかな。
でも、悠人さんって怖い人でもないし、力で物を言うタイプでもないし…何をあんなに恐れていたのか今考えれば謎かもしれない。
謎と言えば、姫野もだけどね。
なぜか悠人さん達との食事会の時には絶対に連絡するようにと言われていたから連絡をしたんだけど、どうやら今日は前に言っていた海外の有名チームの人と話をする予定があったみたいで来れないらしい。
本人は「食事会の日にちを変更できないのか?」と聞いてきたけど、それを悠人さんに話したら「ごめんね、僕も妹も今日しか無理なんだ」と言われたんだよね。なので結局は姫野抜きでの食事会になりました。
しかも…柚菜ちゃんの家の車のお迎え付きです。黒塗りの運転手付き高級車が我が家の前に止まったら家族が驚くので家の近くの駐車場での待ち合わせになりました。
約束の時間より少し早めに出たはずなんだけど…。
「すいません!お待たせしました」
もうお迎えの車が停まっていました。運転手さんが車の後部座席のドアを開けてくれて見えたのは柚菜ちゃんが中には入れと手招きをしている姿でした。
入ると柚菜ちゃんの隣には悠人さんが座っていて「女性を待たせたくないから早めに来たんだ。遅れてないから安心してほしい。驚かせてごめんね」と笑顔を見せられた。
海外にいただけあってレディーファーストの精神なんでしょうか。
隣で一言も話さない柚菜ちゃんが気になりつつも会話をすること無く車が発進してしまいました。
どこのお店かは教えてもらってないから車の外の景色も気になってしまう。
あれ?高速道路に入った…。
「柚菜ちゃん、どこに行くのか知ってる?」
小さな声で隣に座っている柚菜ちゃんに話しかけた。
「私も知らないの。お兄様しか知らない。知りたかったら直接聞いてみて」
チラリと悠人さんを横目で見つつ柚菜ちゃんが教えてくれた。
「悠人さん、この車はどこに向かっているんですか?」
「秘密だよ。楽しみにしてて」
きいたけどおしえてくれないのか…。
隣の柚菜ちゃんが溜め息をついた。
車窓の景色がどんどん変化していく。もう1時間以上車に乗っている。本当にどこに向かっているんだろう?
すると車が高速道路を降りて下道を走り出した。
「そろそろ着くよ」
「え?でもここって…」
到着したのは空港だった。
「お兄様の悪い癖…出たわ」
柚菜ちゃんがポツリと呟いやいた後、私にこっそり尋ねてきた。
「明日は予定ある?たぶん今から北海道か九州辺りに行くと思うよ。泊まりになるんじゃないかな?」
「え!?嘘でしょ…」
驚いて柚菜ちゃんを見れば首を横に振っている。嘘じゃないってことか…。
「さあ、今から美味しいものを食べに北海道に行こう!」
本当だった!?
「何も準備をしてきていないのですが…」
私が戸惑った感じで悠人さんに話しかけると、笑顔を返された。
「大丈夫だよ。あちらで買えば良い。全て僕の奢りだからね」
全然大丈夫ではない。気を遣いますよ!
「言い出したら聞かないから…行こう」
諦めきった顔をした柚菜ちゃんが私の手を引いて空港の中にと進む。
先頭を歩く悠人さんだけがとても楽しそうにしている。
「まったく…海外に行って少しは性格が変わったかと思っていたけどこれは変わらなかったのか…。人を巻き込むのだけはやめてほしかったわ」
柚菜ちゃんのぼやきが止まらない。どうやら昔から悠人さん関連で苦労してきたみたいだね。わかるよ!私もお兄ちゃん達で苦労してきたからね。
そしてあっと言う間に北海道に到着しました。
うわぁ、初めての北海道だ。
いざ来てみるとテンションが上がってます。
キョロキョロと周りを見ていたら私の携帯電話の着信音が鳴り始めた。
画面を見ると姫野からだった。
「もしもし?」
「あ、王子か?俺の用事が終わりそうだから合流したいと思うんだけど今どこにいる?」
…正直に言っても信じてくれるかな。
「え…とね、たぶん合流は無理だと思うよ」
「は?」
「今ね…北海道にいるの」
「はあああぁぁ~!!!」
電話越しから充分に伝わる姫野の驚きの声。
隣にいた柚菜ちゃんも驚いている。
「な、何でそんなとこにいるんだ?」
そうだよね。私もそう思ってる。
一人で納得して頷いていたら、悠人さんがいつの間にか隣にいて私の手から電話を取った。
「王子ちゃんは今日は僕と泊まりになるから心配しなくて良いよ」
と言うと、電話を切った。
…2人だけだと誤解されそうな言い方だったけど大丈夫かな?
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
如月 そら
恋愛
「二度目は偶然だが、三度目は必然だ。三度目がないことを願っているよ」
(三度目はないからっ!)
──そう心で叫んだはずなのに目の前のエリート役員から逃げられない!
「俺と君が出会ったのはつまり必然だ」
倉木莉桜(くらきりお)は大手エアラインで日々奮闘する客室乗務員だ。
ある日、自社の機体を製造している五十里重工の重役がトラブルから莉桜を救ってくれる。
それで彼との関係は終わったと思っていたのに!?
エリート役員からの溺れそうな溺愛に戸惑うばかり。
客室乗務員(CA)倉木莉桜
×
五十里重工(取締役部長)五十里武尊
『空が好き』という共通点を持つ二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる