こっちを見て ~短編集~

陽稲(はると)

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アイ ビー

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あなたと結婚して、早いもので十年経ったわね。 

大学生の時にあなたに声をかけられて、仲良くなって、社会人になって同棲を始めて、二年後に結婚。 

些細なことで喧嘩もしたし、つまらないギャグもあなたがやると面白かった。 

確かあれは結婚してしばらく経った頃、帰り道に偶然見つけたプリザーブドフラワーに一目惚れして玄関に飾ろうと思って買ってきた。 

プリザーブドフラワーは簡単に言うと枯れない花。 

何か言われるのは面倒だから、この花みたいに歳を取っても色褪せない関係でいたいねって、ちょっと痛いことを言ったわね。 

私たちはうまくいってたと思う。言いたいことが言えて、家事も分担して、たまに旅行にも行った。 

沖縄、ハワイ、シンガポール。どれも素敵な海だった。 

自分で言うのも変だけど、あなたははしゃぐ私を愛おしそうに見てたもの。 

ただ、一つだけ残念だったのは、子供ができなかったこと。 

難しくて医者の言うことはわからなかったけど、子供は作れないってことはよくわかった。 

私はすごく落ち込んだわね。だって、私は子供が大好きだから。 

子供ができたら、男の子だったらサッカー、女の子だったらピアノ、とか色々考えてた。 

そんな私をあなたは優しく慰めてくれた。 

二人で死ぬまで楽しく過ごそうって。 

私は、その言葉に本当に救われたの。



でも、あなたとの約束がこんなに早く終わるなんて思ってなかった。 

あなたが事故に遭って、病室のベットの上で目を覚まさなくなって、私は生きる気力を失ったわ。 

私は毎日あなたに話しかけたわ。目を覚ましてくれると信じて。



毎日、毎日、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日。





でも三年経つかどうかって時に、あなたの両親が言ったの。 

もういいよ、ありがとう、って。 

私の中で何かが切れる音がしたわ。 

そう、何かの縛りが解けたみたいに。



私は一人で旅行に行くようになった。 

あなたと行くはずだった場所を。 

やっと笑顔が作れるようになってきたけど、たまにあなたを思い出して涙を流すわ。 




私はここにいるって。 

私はここよって。 




あなたに届くはずないのに。 

そんな時、背中がふわっと温かくなるの。 

あなたが抱きしめてくれてるのかなって、そんなわけないのに。 

でも、あなたなら私が前に進むのを喜んでくれるわよね。 

あなたと暮らしていた家を出るとき、あの花も捨てることにしたわ。 

忘れるわけじゃないの。 

でも、覚えているのは辛すぎるから。



今、また人を愛することができるようになったの。 

これから電車でその人に会いに行くわ。 

そうだわ。あなたと付き合い始めたときもこうやって電車を待ってた。 

なんだかあなたに会いに行くみたい。 

また、涙が出てきたわ。今日も背中が温かい。 

いつも背中から抱きしめてくれるあなたなら、幸せになろうとする私の背中を押してくれるわよね。 

電車が見えてきた。あなたのこと、一旦忘れるわね。 

あ、ちょっと前に出すぎてたかしら。音をならされちゃったわ。















































あれ? あなたの声がしたわ。電車の音に紛れて、微かに、でも確かに聞いたわ。 

おかえりって。
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