7 / 16
アイ ビー
しおりを挟む
あなたと結婚して、早いもので十年経ったわね。
大学生の時にあなたに声をかけられて、仲良くなって、社会人になって同棲を始めて、二年後に結婚。
些細なことで喧嘩もしたし、つまらないギャグもあなたがやると面白かった。
確かあれは結婚してしばらく経った頃、帰り道に偶然見つけたプリザーブドフラワーに一目惚れして玄関に飾ろうと思って買ってきた。
プリザーブドフラワーは簡単に言うと枯れない花。
何か言われるのは面倒だから、この花みたいに歳を取っても色褪せない関係でいたいねって、ちょっと痛いことを言ったわね。
私たちはうまくいってたと思う。言いたいことが言えて、家事も分担して、たまに旅行にも行った。
沖縄、ハワイ、シンガポール。どれも素敵な海だった。
自分で言うのも変だけど、あなたははしゃぐ私を愛おしそうに見てたもの。
ただ、一つだけ残念だったのは、子供ができなかったこと。
難しくて医者の言うことはわからなかったけど、子供は作れないってことはよくわかった。
私はすごく落ち込んだわね。だって、私は子供が大好きだから。
子供ができたら、男の子だったらサッカー、女の子だったらピアノ、とか色々考えてた。
そんな私をあなたは優しく慰めてくれた。
二人で死ぬまで楽しく過ごそうって。
私は、その言葉に本当に救われたの。
でも、あなたとの約束がこんなに早く終わるなんて思ってなかった。
あなたが事故に遭って、病室のベットの上で目を覚まさなくなって、私は生きる気力を失ったわ。
私は毎日あなたに話しかけたわ。目を覚ましてくれると信じて。
毎日、毎日、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日。
でも三年経つかどうかって時に、あなたの両親が言ったの。
もういいよ、ありがとう、って。
私の中で何かが切れる音がしたわ。
そう、何かの縛りが解けたみたいに。
私は一人で旅行に行くようになった。
あなたと行くはずだった場所を。
やっと笑顔が作れるようになってきたけど、たまにあなたを思い出して涙を流すわ。
私はここにいるって。
私はここよって。
あなたに届くはずないのに。
そんな時、背中がふわっと温かくなるの。
あなたが抱きしめてくれてるのかなって、そんなわけないのに。
でも、あなたなら私が前に進むのを喜んでくれるわよね。
あなたと暮らしていた家を出るとき、あの花も捨てることにしたわ。
忘れるわけじゃないの。
でも、覚えているのは辛すぎるから。
今、また人を愛することができるようになったの。
これから電車でその人に会いに行くわ。
そうだわ。あなたと付き合い始めたときもこうやって電車を待ってた。
なんだかあなたに会いに行くみたい。
また、涙が出てきたわ。今日も背中が温かい。
いつも背中から抱きしめてくれるあなたなら、幸せになろうとする私の背中を押してくれるわよね。
電車が見えてきた。あなたのこと、一旦忘れるわね。
あ、ちょっと前に出すぎてたかしら。音をならされちゃったわ。
あれ? あなたの声がしたわ。電車の音に紛れて、微かに、でも確かに聞いたわ。
おかえりって。
大学生の時にあなたに声をかけられて、仲良くなって、社会人になって同棲を始めて、二年後に結婚。
些細なことで喧嘩もしたし、つまらないギャグもあなたがやると面白かった。
確かあれは結婚してしばらく経った頃、帰り道に偶然見つけたプリザーブドフラワーに一目惚れして玄関に飾ろうと思って買ってきた。
プリザーブドフラワーは簡単に言うと枯れない花。
何か言われるのは面倒だから、この花みたいに歳を取っても色褪せない関係でいたいねって、ちょっと痛いことを言ったわね。
私たちはうまくいってたと思う。言いたいことが言えて、家事も分担して、たまに旅行にも行った。
沖縄、ハワイ、シンガポール。どれも素敵な海だった。
自分で言うのも変だけど、あなたははしゃぐ私を愛おしそうに見てたもの。
ただ、一つだけ残念だったのは、子供ができなかったこと。
難しくて医者の言うことはわからなかったけど、子供は作れないってことはよくわかった。
私はすごく落ち込んだわね。だって、私は子供が大好きだから。
子供ができたら、男の子だったらサッカー、女の子だったらピアノ、とか色々考えてた。
そんな私をあなたは優しく慰めてくれた。
二人で死ぬまで楽しく過ごそうって。
私は、その言葉に本当に救われたの。
でも、あなたとの約束がこんなに早く終わるなんて思ってなかった。
あなたが事故に遭って、病室のベットの上で目を覚まさなくなって、私は生きる気力を失ったわ。
私は毎日あなたに話しかけたわ。目を覚ましてくれると信じて。
毎日、毎日、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日。
でも三年経つかどうかって時に、あなたの両親が言ったの。
もういいよ、ありがとう、って。
私の中で何かが切れる音がしたわ。
そう、何かの縛りが解けたみたいに。
私は一人で旅行に行くようになった。
あなたと行くはずだった場所を。
やっと笑顔が作れるようになってきたけど、たまにあなたを思い出して涙を流すわ。
私はここにいるって。
私はここよって。
あなたに届くはずないのに。
そんな時、背中がふわっと温かくなるの。
あなたが抱きしめてくれてるのかなって、そんなわけないのに。
でも、あなたなら私が前に進むのを喜んでくれるわよね。
あなたと暮らしていた家を出るとき、あの花も捨てることにしたわ。
忘れるわけじゃないの。
でも、覚えているのは辛すぎるから。
今、また人を愛することができるようになったの。
これから電車でその人に会いに行くわ。
そうだわ。あなたと付き合い始めたときもこうやって電車を待ってた。
なんだかあなたに会いに行くみたい。
また、涙が出てきたわ。今日も背中が温かい。
いつも背中から抱きしめてくれるあなたなら、幸せになろうとする私の背中を押してくれるわよね。
電車が見えてきた。あなたのこと、一旦忘れるわね。
あ、ちょっと前に出すぎてたかしら。音をならされちゃったわ。
あれ? あなたの声がしたわ。電車の音に紛れて、微かに、でも確かに聞いたわ。
おかえりって。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる