272 / 777
第272話「全員が、『やる気』に満ちていた」
しおりを挟む
なごやかなランチの後……
パトリスと少年少女達は、リオネル達を、
『モーリス商会』の社屋兼店舗へ案内した。
社屋兼店舗は大きな平屋で、こちらも新築だという。
事務所は、真新しい木の香りで満ちており、
シンプルな社員用の机も10ほど置かれていた。
そして店舗は、社屋の半分以上の大きさ。
内部でつながって、表の出入り口以外、
事務所の中からも行き来できるようになっていた。
ちなみに店舗の片隅は、カウンター付きのキッチン。
テーブルが4つほどある、飲食スペースとなっていた。
この場所がミリアンの夢、飲食店経営の第一歩となるのだろう。
その事務所には、ひとりの女性が一行を待っていた。
笑顔のパトリスが紹介する。
「この女性をモーリス達は知っているだろうが、改めて、紹介しよう。モーリス商会経営店舗の運営責任者となるマルレーヌ・ビゼーさんだよ」
「モーリス様、リオネル様、ミリアン様、カミーユ様、改めまして、マルレーヌ・ビゼーでございます。この度は、未熟な私へお声がけ頂き、感謝致します」
パトリスに紹介され……
小柄で血色の良い女性が丁寧にお辞儀をした。
いかにも真面目!という雰囲気。
年齢は30代後半くらい……だろうか。
リオネルは記憶をたぐった。
モーリスからは話を聞いている。
マルレーヌさんは、両親から受け継いだ小さな『よろず屋』を農業と兼業で、
たったひとりで経営していたが……
兼業が体力的にきつくなったのと、
売り上げが伸びないので、近いうちに閉店を考えていた。
そこへ、パトリスさん経由で、移住するモーリスさんが出店を考えていると聞き……
「相談したい」と申し出たらしい。
そこから、モーリスさんと直接の手紙のやりとりで、話はとんとん拍子に進み……
マルレーヌさんは今、従事している農業の規模を縮小し、
店舗の運営責任者になるという事で双方が合意したのである。
店も、マルレーヌさんが営んでいた『よろず屋』となる事が決定。
とても張り切っているらしい。
ここで補足しよう。
よろず屋とは、漢字で万屋と書いて『よろずや』と読む。
万《よろず》とは全てのもの、もしくはあらゆるものという意味であり、
すなわち何でも扱っている小規模な店の事をそう言うのである。
分かり易く言えば、現代のコンビニみたいな店なのだ。
キャナール村は、店がこの店1軒しかない田舎であり、
よろず屋は、いくつもの店を兼ねていた。
ちなみにマルレーヌの店は食料品、酒は勿論、し好品、生活必需品、
雑貨、薬品、薬草、魔法ポーション、武器防具に護符、
宝石や、指輪、アクセサリー等々、様々な商品を扱っていた。
しかし、旅の商隊が運んで来る『入荷』も不定期の上、滞りがち、
ほとんどの商品が、常に品切れ状態。
農業兼業の為、週の内、2日程度しか営業しない事もあり……
村民達に文句を頻繁に言われて、マルレーヌは嫌気がさしてもいたようだ。
ゴブリン騒動の時は、3か月ほど休業していて……
当初リオネル達は、村に店がないと、誤解した次第。
店の存在を知った後も、村民達からは、
「マルレーヌの店はいずれ廃業するよ」と言われており、
出店を決めるに至ったのである。
この合意は双方が、ウインウインの結果となる。
そもそも、マルレーヌは店の運営が大好きであり、営業を継続したかった事。
安定した給金が得られる事。
モーリス達の働きにより、
勤務時間、仕入れの問題、販売員の問題がクリアされる事。
これからは、品切れのクレームは少なくなり、逆に、新商品入荷等で、
村民に感謝される事が多くなる等々で、大喜び。
一方のモーリスも、村に常駐するわけにいかず、元々、店舗の責任者を探していた事。
マルレーヌが、ベテランの経験者で、新たな研修もほぼ不要である事。
元々廃業を考えていたマルレーヌの店を、閉店に追い込む事に加担せずに済んだ事。
パトリスが、誠実で頑張り屋たるマルレーヌの人柄を推してくれた等々により、
『渡りに船』……であった。
パトリスが晴れやかに笑う。
「ははははは、いっそ、昼飯を一緒に食べようとマルレーヌさんを誘ったが、本日が初日だから、モーリス様には仕事を行う社屋で会いたい、しっかり『けじめ』をつけてスタートを切りたいと言ってな」
「はい! 人生をリスタートするにあたり、、しっかり『けじめ』をつけてスタートを切りたいです!」
きっぱり言い切るマルレーヌは、やはり相当真面目なようだ。
ここで昼食をともにした、少年少女達からも、様々な未来への希望が出る。
「私、ミリアンと一緒に飲食のお店やりたい!」
「私も、カミーユから武道とシーフの技を教えて欲しいわ!」
「俺、カミーユとワレバットへ、商品を仕入れに行きたい!」
「魔法を覚えたい、俺に教えてくれよ、ミリアン」
マルレーヌは勿論、少年少女達も目がキラキラ輝き、
全員が、『やる気』に満ちていた。
嬉しそうに頷いたモーリスは、パトリスへ向かい、
「うむ! では早速、ワレバットから運んで来た商品の搬入を手伝って貰う。倉庫から店舗へ、移動させるぞ。パトリスも手伝ってくれるか?」
「おお、任せろ! この場の皆でやろう! その方が早い! さあ! やるぞ!」
「「「「「おう!!!」」」」」
マルレーヌ、少年少女達とともに、
ミリアン、カミーユと一緒に、元気に鬨の声をあげたリオネル。
きびきび動き、大いに働いたのである。
パトリスと少年少女達は、リオネル達を、
『モーリス商会』の社屋兼店舗へ案内した。
社屋兼店舗は大きな平屋で、こちらも新築だという。
事務所は、真新しい木の香りで満ちており、
シンプルな社員用の机も10ほど置かれていた。
そして店舗は、社屋の半分以上の大きさ。
内部でつながって、表の出入り口以外、
事務所の中からも行き来できるようになっていた。
ちなみに店舗の片隅は、カウンター付きのキッチン。
テーブルが4つほどある、飲食スペースとなっていた。
この場所がミリアンの夢、飲食店経営の第一歩となるのだろう。
その事務所には、ひとりの女性が一行を待っていた。
笑顔のパトリスが紹介する。
「この女性をモーリス達は知っているだろうが、改めて、紹介しよう。モーリス商会経営店舗の運営責任者となるマルレーヌ・ビゼーさんだよ」
「モーリス様、リオネル様、ミリアン様、カミーユ様、改めまして、マルレーヌ・ビゼーでございます。この度は、未熟な私へお声がけ頂き、感謝致します」
パトリスに紹介され……
小柄で血色の良い女性が丁寧にお辞儀をした。
いかにも真面目!という雰囲気。
年齢は30代後半くらい……だろうか。
リオネルは記憶をたぐった。
モーリスからは話を聞いている。
マルレーヌさんは、両親から受け継いだ小さな『よろず屋』を農業と兼業で、
たったひとりで経営していたが……
兼業が体力的にきつくなったのと、
売り上げが伸びないので、近いうちに閉店を考えていた。
そこへ、パトリスさん経由で、移住するモーリスさんが出店を考えていると聞き……
「相談したい」と申し出たらしい。
そこから、モーリスさんと直接の手紙のやりとりで、話はとんとん拍子に進み……
マルレーヌさんは今、従事している農業の規模を縮小し、
店舗の運営責任者になるという事で双方が合意したのである。
店も、マルレーヌさんが営んでいた『よろず屋』となる事が決定。
とても張り切っているらしい。
ここで補足しよう。
よろず屋とは、漢字で万屋と書いて『よろずや』と読む。
万《よろず》とは全てのもの、もしくはあらゆるものという意味であり、
すなわち何でも扱っている小規模な店の事をそう言うのである。
分かり易く言えば、現代のコンビニみたいな店なのだ。
キャナール村は、店がこの店1軒しかない田舎であり、
よろず屋は、いくつもの店を兼ねていた。
ちなみにマルレーヌの店は食料品、酒は勿論、し好品、生活必需品、
雑貨、薬品、薬草、魔法ポーション、武器防具に護符、
宝石や、指輪、アクセサリー等々、様々な商品を扱っていた。
しかし、旅の商隊が運んで来る『入荷』も不定期の上、滞りがち、
ほとんどの商品が、常に品切れ状態。
農業兼業の為、週の内、2日程度しか営業しない事もあり……
村民達に文句を頻繁に言われて、マルレーヌは嫌気がさしてもいたようだ。
ゴブリン騒動の時は、3か月ほど休業していて……
当初リオネル達は、村に店がないと、誤解した次第。
店の存在を知った後も、村民達からは、
「マルレーヌの店はいずれ廃業するよ」と言われており、
出店を決めるに至ったのである。
この合意は双方が、ウインウインの結果となる。
そもそも、マルレーヌは店の運営が大好きであり、営業を継続したかった事。
安定した給金が得られる事。
モーリス達の働きにより、
勤務時間、仕入れの問題、販売員の問題がクリアされる事。
これからは、品切れのクレームは少なくなり、逆に、新商品入荷等で、
村民に感謝される事が多くなる等々で、大喜び。
一方のモーリスも、村に常駐するわけにいかず、元々、店舗の責任者を探していた事。
マルレーヌが、ベテランの経験者で、新たな研修もほぼ不要である事。
元々廃業を考えていたマルレーヌの店を、閉店に追い込む事に加担せずに済んだ事。
パトリスが、誠実で頑張り屋たるマルレーヌの人柄を推してくれた等々により、
『渡りに船』……であった。
パトリスが晴れやかに笑う。
「ははははは、いっそ、昼飯を一緒に食べようとマルレーヌさんを誘ったが、本日が初日だから、モーリス様には仕事を行う社屋で会いたい、しっかり『けじめ』をつけてスタートを切りたいと言ってな」
「はい! 人生をリスタートするにあたり、、しっかり『けじめ』をつけてスタートを切りたいです!」
きっぱり言い切るマルレーヌは、やはり相当真面目なようだ。
ここで昼食をともにした、少年少女達からも、様々な未来への希望が出る。
「私、ミリアンと一緒に飲食のお店やりたい!」
「私も、カミーユから武道とシーフの技を教えて欲しいわ!」
「俺、カミーユとワレバットへ、商品を仕入れに行きたい!」
「魔法を覚えたい、俺に教えてくれよ、ミリアン」
マルレーヌは勿論、少年少女達も目がキラキラ輝き、
全員が、『やる気』に満ちていた。
嬉しそうに頷いたモーリスは、パトリスへ向かい、
「うむ! では早速、ワレバットから運んで来た商品の搬入を手伝って貰う。倉庫から店舗へ、移動させるぞ。パトリスも手伝ってくれるか?」
「おお、任せろ! この場の皆でやろう! その方が早い! さあ! やるぞ!」
「「「「「おう!!!」」」」」
マルレーヌ、少年少女達とともに、
ミリアン、カミーユと一緒に、元気に鬨の声をあげたリオネル。
きびきび動き、大いに働いたのである。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。
アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】
それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。
剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず…
盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず…
攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず…
回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず…
弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず…
そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという…
これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。
剣で攻撃をすれば勇者より強く…
盾を持てばタンクより役に立ち…
攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが…
それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。
Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに…
魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし…
補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に…
怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。
そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが…
テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので…
追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。
そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが…
果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか?
9月21日 HOTランキング2位になりました。
皆様、応援有り難う御座います!
同日、夜21時49分…
HOTランキングで1位になりました!
感無量です、皆様有り難う御座います♪
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる