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第36話「生き抜く知恵を」
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大が付くリフォームが済んだ城……
小さな街のように生まれ変わった周辺。
そんな新居で迎えるふたりの朝……
「おはよう」
「おはようございます、マスター」
起床したダンとスオメタルは「始まり」のキスをした。
多分夜には……
「終わり」のキスをするだろう。
昨夜は最初から一緒に寝て、今朝一緒に起きた。
ずっとしっかり抱き合って眠っていた。
お互いに身をゆだね、ホッとする時間を共有していた。
これからふたりは、こうして寄り添い生きて行くに違いない。
「マスター、今日はどうするでございますか?」
「うん、今日も忙しいぞ。朝飯食べたら、スパルトイ達と畑のチェック。きりの良いタイミングで作業を任せて、俺達はランチの鱒料理の仕込み」
「お~! ランチは鱒の料理でございますか」
「おお、ランチだけじゃない。同じく鱒を使った保存食、燻製《くんせい》づくり諸々をやる。その後ランチを作って、午後も予定がてんこ盛りだ」
「わお! 超忙しそうですけど、面白そうでございますっ!」
「うん、面白いと思うぞ! スオメタルにもいろいろ手順を教えるから」
「わお! スオメタルは頑張って覚えるでございます。……でも」
「でも?」
「理解はしているでございますが……マスターや私が力を失い難儀する可能性は限りなく低いでございます」
表向き、救世の勇者は引退し、辺境の地へ引っ込んだ。
しかしダンの能力は全く失われてはいない。
否、しがらみから解き放たれ、自由を得て……
今までよりのびのびと思う存分、力が出せるといえよう。
そしてスオメタルも、ダンに完全にレストアされ、
否、ビルドアップされ、想い人ダンに勝るとも劣らない力を有している。
スオメタルが言う通り、ふたりが全くの無力になるなど考えにくい。
当然ダンも同意する。
「まあな」
こうなると、スオメタルはダンの真意を知りたくなる。
そしてただ尋ねるだけでなく、進言もしたくなる。
「それなのに何故、アナログでレトロなやり方を習得するのに時間をかけるのか……時間はけして無限ではなく、ごくごく限られておりますゆえ、もっと有効に使った方が宜しいかと」
「ははは、尤もな疑問と提案だ」
「はい! 例えばですが、マスターが所有する収納の腕輪は、収納すれば次元の違う内部の時間は進まない。食料は傷まない、破壊されない。それゆえ保存食は一切不要という、明確な答えが導き出されるプロセスでございます」
「うん、スオメタルの意見は確かに正論だな。じゃあ、教えようか、答えはふたつある」
「おお、答えはふたつでございますか?」
「ああ、ひとつは俺達が力を失う可能性がゼロではない事、そして使っている魔道具が使用不能になる可能性も同じく全くのゼロではない事だ」
「ふむふむ、すなわち魔法やスキルを失う……魔道具が使用不能となる。つまり現在有するアドバンテージを全く失う事でございますね、納得したでございます」
「うん! もうひとつは俺とスオメタルの子供の為だ」
ダンがきっぱりと言い切れば、スオメタルは面白いくらいに動揺する。
顔がトマトのように赤くなる。
「はああっ!? わわわわわ、私とぉ! マ、マスターのぉ! こ、こ、こ、子供の為ぇ!!」
「おいおい、すっげぇ噛んでるぞ」
「うう、マスターがいきなりびっくりさせる事言うでございますから、いけないのでございますよぉ」
「落ち着いて聞いてくれるか?」
「は、はい……す~は~……だ、大丈夫、お、落ち着いたでございます」
「よし、じゃあ話すぞ。想像して欲しい。俺とスオメタルの子に力がない場合、魔法やスキルが使えない場合、魔道具が壊れて使えない場合……」
「ふむふむ……とりあえず想像したでございます」
「つまりだな、場末のジャンク屋だった元の俺みたいに、常人でも幸せに生き抜いて貰う為、アナログでレトロなやり方を習得するのさ」
「私達の子に……力がない場合、魔法やスキルが使えない場合、魔道具が壊れて使えない場合、常人でも幸せに生き抜いて貰う為、アナログでレトロなやり方を習得する……」
「ああ、そうさ! とび抜けた魔法やスキル能力がない普通の人間として生まれた場合、生き抜く知恵を身につけさせるんだ」
「普通の子には生き抜く知恵を……私やマスターは普通ではない……という事でございますね。……それは確かに納得でございます」
「おう! だからまず俺達が生き抜く知恵を万全に習得し、使いこなせないと、我が子へは、生き抜く知恵がちゃんと教授出来ない、話にならないだろ?」
ダンの説明はとても分かりやすい。
スオメタルも全くの同意である。
ふたりの間に生まれた愛する子供が、もしも飛び抜けた力がないのであれば、常人として一人前になるまで守るのが両親たるダンとスオメタルの務めである。
当然、我が子へいろいろな事を、生き抜く知恵を伝え、教えなくてはいけない。
その為には、強さや魔法以外のスキルを自身が習得する事も必須なのだ。
「おお! とてもとても納得でございます! さすがはマスターです! 先の事を! 私達の未来を、起こりうる可能性を考えての深謀遠慮でございますねっ!」
「そうさ! お前の言う通り、先々の為の深謀遠慮だ」
「御意でございます」
「うん! 頑張ろうぜ、スオメタル、俺達の幸せと未来の為に! 生まれて来る子供達の幸せと未来の為に! お前の本当の身体も、なる早やで絶対に探し出してやるぜ!」
「はいっ、マスター!」
朝一番で、絆を深め合ったダンとスオメタルは……
改めて『おはよう』のキスをしたのである。
小さな街のように生まれ変わった周辺。
そんな新居で迎えるふたりの朝……
「おはよう」
「おはようございます、マスター」
起床したダンとスオメタルは「始まり」のキスをした。
多分夜には……
「終わり」のキスをするだろう。
昨夜は最初から一緒に寝て、今朝一緒に起きた。
ずっとしっかり抱き合って眠っていた。
お互いに身をゆだね、ホッとする時間を共有していた。
これからふたりは、こうして寄り添い生きて行くに違いない。
「マスター、今日はどうするでございますか?」
「うん、今日も忙しいぞ。朝飯食べたら、スパルトイ達と畑のチェック。きりの良いタイミングで作業を任せて、俺達はランチの鱒料理の仕込み」
「お~! ランチは鱒の料理でございますか」
「おお、ランチだけじゃない。同じく鱒を使った保存食、燻製《くんせい》づくり諸々をやる。その後ランチを作って、午後も予定がてんこ盛りだ」
「わお! 超忙しそうですけど、面白そうでございますっ!」
「うん、面白いと思うぞ! スオメタルにもいろいろ手順を教えるから」
「わお! スオメタルは頑張って覚えるでございます。……でも」
「でも?」
「理解はしているでございますが……マスターや私が力を失い難儀する可能性は限りなく低いでございます」
表向き、救世の勇者は引退し、辺境の地へ引っ込んだ。
しかしダンの能力は全く失われてはいない。
否、しがらみから解き放たれ、自由を得て……
今までよりのびのびと思う存分、力が出せるといえよう。
そしてスオメタルも、ダンに完全にレストアされ、
否、ビルドアップされ、想い人ダンに勝るとも劣らない力を有している。
スオメタルが言う通り、ふたりが全くの無力になるなど考えにくい。
当然ダンも同意する。
「まあな」
こうなると、スオメタルはダンの真意を知りたくなる。
そしてただ尋ねるだけでなく、進言もしたくなる。
「それなのに何故、アナログでレトロなやり方を習得するのに時間をかけるのか……時間はけして無限ではなく、ごくごく限られておりますゆえ、もっと有効に使った方が宜しいかと」
「ははは、尤もな疑問と提案だ」
「はい! 例えばですが、マスターが所有する収納の腕輪は、収納すれば次元の違う内部の時間は進まない。食料は傷まない、破壊されない。それゆえ保存食は一切不要という、明確な答えが導き出されるプロセスでございます」
「うん、スオメタルの意見は確かに正論だな。じゃあ、教えようか、答えはふたつある」
「おお、答えはふたつでございますか?」
「ああ、ひとつは俺達が力を失う可能性がゼロではない事、そして使っている魔道具が使用不能になる可能性も同じく全くのゼロではない事だ」
「ふむふむ、すなわち魔法やスキルを失う……魔道具が使用不能となる。つまり現在有するアドバンテージを全く失う事でございますね、納得したでございます」
「うん! もうひとつは俺とスオメタルの子供の為だ」
ダンがきっぱりと言い切れば、スオメタルは面白いくらいに動揺する。
顔がトマトのように赤くなる。
「はああっ!? わわわわわ、私とぉ! マ、マスターのぉ! こ、こ、こ、子供の為ぇ!!」
「おいおい、すっげぇ噛んでるぞ」
「うう、マスターがいきなりびっくりさせる事言うでございますから、いけないのでございますよぉ」
「落ち着いて聞いてくれるか?」
「は、はい……す~は~……だ、大丈夫、お、落ち着いたでございます」
「よし、じゃあ話すぞ。想像して欲しい。俺とスオメタルの子に力がない場合、魔法やスキルが使えない場合、魔道具が壊れて使えない場合……」
「ふむふむ……とりあえず想像したでございます」
「つまりだな、場末のジャンク屋だった元の俺みたいに、常人でも幸せに生き抜いて貰う為、アナログでレトロなやり方を習得するのさ」
「私達の子に……力がない場合、魔法やスキルが使えない場合、魔道具が壊れて使えない場合、常人でも幸せに生き抜いて貰う為、アナログでレトロなやり方を習得する……」
「ああ、そうさ! とび抜けた魔法やスキル能力がない普通の人間として生まれた場合、生き抜く知恵を身につけさせるんだ」
「普通の子には生き抜く知恵を……私やマスターは普通ではない……という事でございますね。……それは確かに納得でございます」
「おう! だからまず俺達が生き抜く知恵を万全に習得し、使いこなせないと、我が子へは、生き抜く知恵がちゃんと教授出来ない、話にならないだろ?」
ダンの説明はとても分かりやすい。
スオメタルも全くの同意である。
ふたりの間に生まれた愛する子供が、もしも飛び抜けた力がないのであれば、常人として一人前になるまで守るのが両親たるダンとスオメタルの務めである。
当然、我が子へいろいろな事を、生き抜く知恵を伝え、教えなくてはいけない。
その為には、強さや魔法以外のスキルを自身が習得する事も必須なのだ。
「おお! とてもとても納得でございます! さすがはマスターです! 先の事を! 私達の未来を、起こりうる可能性を考えての深謀遠慮でございますねっ!」
「そうさ! お前の言う通り、先々の為の深謀遠慮だ」
「御意でございます」
「うん! 頑張ろうぜ、スオメタル、俺達の幸せと未来の為に! 生まれて来る子供達の幸せと未来の為に! お前の本当の身体も、なる早やで絶対に探し出してやるぜ!」
「はいっ、マスター!」
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改めて『おはよう』のキスをしたのである。
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