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第37話「種まき、鱒のランチ&燻製」

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 あんずの実を使ったアプリコットジャム。
 ダンとスオメタル、ふたりのマイフェイバリット定番ジャム。
 たっぷりパンにつけ、香りの良い紅茶で大好きな朝食を楽しんだふたりは、城から出て先日開いた城内の畑へ……

 既に畑には、精鋭スパルトイ軍団が整列して、ふたりを待っていた。

 『ダン様、スオメタル様、おはようございます!』
 『『『『『『『おはようございます!!』』』』』』』

『おはよう! 朝から大きな声で元気が良いな。昨日はお疲れ様』

 スパルトイ達は昨日、ドヴェルグの職人軍団ラッセ・ムルサ達に勝るとも劣らない働きをし、大車輪の活躍ぶりだった。
 ダンはしっかり彼等をねぎらったのだ。
 そして、全く見返りを求めない滅私奉公の彼等に対し、何か報いるものはないかとも考えていた。

 スオメタルも「ぺこり」と頭を下げた。
 彼女もダン同様、スパルトイ達に感謝の念しかない。
 
 放棄された城とその一帯が、たった一日で素敵な街へ変わったのだから。
  
 『ムードメーカー』となってくれたタバサも役には立った。
 周囲を飛び回って、愛嬌をふりまき、場を和ませてくれたから。
 ちなみにまだ寝ていてこの場には不在である。
 
『おはようございます! いろいろとありがとうございます。お陰様で、素敵な新居でぐっすり眠る事が出来たでございますよ』

『お~! それは宜しゅうございました。私達も頑張ったかいがあります!』

 それからしばらく……
 リフォームなった城……
 つまりダンとスオメタルの新居の話題で全員が盛り上がる。
 また周囲に建ち並ぶ様々な施設を見て、小さな街のようだとも誰もが感嘆した。
 
 しかし、さすがスパルトイリーダーは、空気を読むのを心得ている。
 頃合いと見たのか、自然に城の話を終わりにして……

『では、ダン様。そろそろ、種まきの話を』

『ああ、そうだった』
『この畑にどのような野菜を植えるのか、ぜひ聞きたいでございます』

『はい、せっかく広い畑を開きました。たくさん植えたいと思います。種まきから、日々の世話、収穫まで私達で行う事が可能ですから』

『おいおい、俺達も未熟だけど、一生懸命農作業やるから。その方が収穫して食べる時、歓びを感じるもの』
『はい、マスターの言う通り、貴方達から教えて貰い、スオメタルも頑張って、野菜作るでございます』

『おお! 素晴らしいお志。かしこまりました、ならば、ご一緒に頑張りましょう。……但し、お忙しい時は我らにお任せください』

『分かった、助かる』
『本当に、大感謝でございます』

『では、お薦めの野菜をあげて行きます』

『ああ、頼む』
『わくわく……で、ございます』

『ええっと……カブ、これは年に2回植える事が可能、根も葉も食用になりますし、家畜を飼えば飼料としても使えます。次にほうれんそう、栄養分が豊富で料理パターンも多いです。そしてトマト、こちらもいろいろ料理の応用がききます。他にも枝豆、落花生、またルッコラなどもお薦めです。……それと連作による悪影響には注意ですね』

 スパルトイ達は熱く語りだす。
 ダンとスオメタルは熱心に聞き、こまめにメモを取った。

 なども……とか、それとですねというコメントは、まだまだスパルトイ達にお薦めはあるらしい。
 やはり農業も、武技、魔法同様に奥が深い。

 で、あれば今回は最初だし、スパルトイ達に殆ど任せた方が良いかもしれない。
 という結論が出た。

 ダンとスオメタルは顔を見合わせると、大きく頷いた。
 意見は一致していた。

『スオメタル、スパルトイ達に任せようか』
『御意でございます』

『やっぱ俺達は素人だ』
『お任せして、お手伝いをするでございます』

『かしこまりました』

 なんやかんやで、時間も迫っていた。
 ダンとスオメタルは城へ戻り、厨房へ入ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ダンが告げたように、今日のランチは鱒料理。
 
 ということで、まず鱒の下ごしらえを行う。
 うろこを取り、尾のつけねからあごの先まで刃を入れる。
 エラと内臓ワタを取り出してから、血や臭みが残らないよう、腹の中を丁寧に洗う。

『魔族や獣人は分からんが、俺達人間は、魔境の魚を生で食べるのを絶対避ける事。リスク回避の為には必ず火を通す! 水を煮沸しゃふつするのと一緒だ』

『了解! 鱒を……焼くのでございますか?』

『うん、鱒を焼く。私見だがポピュラーなのが塩焼き、レモンをかけても美味いし、香草焼きもグッド!』

『わお!』

『フライ、唐揚げ、ムニエルにしてもいける。スープの準備もしておこう!』

『わお! わお! どれもこれもすっごく美味しそうでございまっす!!』

『よっしゃ! 期待してくれ、スオメタル! 全部作っちゃる! 仕込みが終わったら、燻製の準備だぁ』

『お~!』

 ダンの手際は素晴らしかった。
 「ちゃちゃっ」と片付けて行く。

 スオメタルもダンの一挙手一投足を見逃さぬとばかりに凝視、
 魔導回路へ記憶していた。
 メモまで取っていた。

 鱒ランチの仕込みが無事完了。
 ダンとスオメタルは保存食、
 つまり鱒の燻製の準備にかかる。

 ざっくりと説明すれば、
 下ごしらえをした鱒を塩に漬ける。
 充分に漬かったら、塩抜きをする。
 日陰に干して乾燥させる。
 その後、ようやく燻煙……つまり煙でいぶすのである。

 こちらもダンは手際よくあっという間に天日干しの処理まで行った。

 ここで厨房に戻り、ランチの準備。
 焼き、揚げる、煮込むという調理法を自在に使い、
 どんどん料理を仕上げて行った。

 こうして……
 1時間もかからず、全てのメニューが出そろった。
 ダンとスオメタルは嬉々として料理をテーブルに並べて行く。

 じゃ~ん!!!
 という擬音が聞こえて来そうなテーブル上。
 
 けしてオールではないが、気分は鱒料理オールスターズ!
 レモン付き塩焼き、香草焼き、フライ、唐揚げ、ムニエル、そしてスープ。

『『いっただきま~っす!』』

 ダンとスオメタルは、まず塩焼きにかぶりつく。
 レモンをふってあるから、酸味が効いて美味い!

 最後には肉声で!

「うま!」
「激うっま! でございます!!」

 ダンとスオメタルは顔を見合わせ、笑顔で頷いたのである。
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