頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第14話「遂に鉄槌ざまあ! 激震! 一斉逮捕! 倒産!!」

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 ブグロー部長への抗議をあきらめたシモンが大きなため息を吐いたその時。

 階下が急に騒がしくなった。
 何者かが、一階ロビーへ大人数で強引に踏み込んだらしい。

 いつもの癖で、索敵さくてきスキルを使い、シモンはそんな気配を察した。
 そして踏み込んだ者は……
 発する気配で正体がすぐに判明した。
 
 踏み込んだのは、王都の治安を守る衛兵の集団である。
 衛兵隊が公務でコルボー商会へ踏み込んだのだ。

「な、何だ!? す、凄い殺気だ!?」

 珍しくブグローが動揺する。
 シモンと同じく、ただならぬ気配を察したらしい。

 やがて階段を「どかどか!」と駆け上がって来る音がした。

 ばん! と乱暴に扉が開けられた。
 踏み込んで来たのは、衛兵ふたりである。
 衛兵は何か、文字が書かれた一枚の紙片をぶらさげている。

「ウジェーヌ・ブグロー! 神妙にしろ! 逮捕状が出ている」

「な!? た、逮捕状!?」

「そうだ! 労働者の意思に反する労働の強制、中間搾取ちゅうかんさくしゅ、債権と賃金の相殺そうさい法定時間超過労働ほうていじかんちょうかろうどう、休憩、休息、有給の皆無等々、王国労働法違反の指示、関与の疑いにより逮捕するっ!」

「え~っ! そ、そんなぁ!! ぜ、ぜ、全部! やむを得ずですぅ! か、会頭の指示なんですよぉ! わ、私は中間管理職ぅ! ううう、上には、さ、逆らえないんですよぉっ!!」

「シャラップ!! 言い訳無用!! 今、吐いた虚偽きょぎの罪も追加!! じたばたするな、ウジェーヌ。証拠書類が山ほどあるっ!」

「えええええっ、そ、そんなぁ~~っ!!」

「ウジェーヌ。お前は上級幹部社員として自ら会頭へ提案し、労働者に対する数々の非道を実行。首謀者のひとりとして大いに関与した」

「ううう……」

「それと! 会頭に内緒で金貨10億枚の横領もしているだろ! こっちも重罪だ! 少なくとも30年は臭いメシを食わせてやる!」

「うううう……ああああああああああっ!!!」

「抵抗すれば、罪がもっと重くなる。下手をすれば終身刑だ。こっちはそれでも構わんが、大人しく連行された方が、身のためだ」

 何と!
 ブグロー部長は、衛兵隊に逮捕されてしまった。
 
 今までシモンに向けていた、おごり勝ち誇ったブグローの表情は、
 全くといっていいほど失われていた。

「シ、シモン!! た、た、助けてくれぇ!! 俺とお前は上司と部下、師匠と弟子、固い絆を結んだ敬い慕う師弟コンビだろうがぁ!!」

「……………」

 助けを求めるブグローの絶叫に対し、シモンは無言で応えた。
 醒めた目で見つめるだけであった。

 シモンの無反応さを見て、がっくりとうなだれたブグロー。
 
 そこには、シモン達部下を単なる駒だとうそぶき、
 己の出世だけの為に「死ぬまで働かせた上に使い捨ててやる!」と豪語した外道鬼畜の面影は全くなかった。
 
 人生全てに絶望したというくらい青ざめ……
 今にも慟哭どうこくし、号泣ごうきゅうしそうな顔で、衛兵のひとりに、背を何度もこづかれながら、室外へ出て行く。
 
 確実に重罪となる雰囲気である。
 あの「がはははは」という独特な笑い声をシモンが聞く事は二度とないだろう。

 シモンは思いっきり、
 「ざまあああああああああああああああっっ!!!!!」
 と、心の中で叫びながらも……
 
 自分と同じく商会の単なる『歯車』に過ぎないブグローを哀れにも思い、ほんのちょっぴりだけ、複雑な感情であった。

 残った衛兵がシモンを見て、話しかけて来る。

「おい、君は、コルボー商会の社員か」

「そ、そうです」

 一瞬の沈黙。
 緊張の瞬間。
 まさか逮捕?
 果たしてシモンの運命は?

 しかし、心配は杞憂きゆうであった。
 衛兵は憐れみを込めた眼差まなざしを投げかけて来たのだ。
 シモンに同情しているらしい。

「大変だったな、君。生きていただけ良かったよ。ここの社員には殉職者じゅんしょくしゃがいっぱい出ている」

「は、はあ……確かに同期入社の奴が何人も死んでます。俺は何とか生きてました」

「うんうん。君も、コルボー商会にはいろいろなものを搾取さくしゅされていたのだろう」

「いろいろなものを搾取……まあ、確かに……」

 シモンの目が遠くなった。
 命の危機にさらされていた上、金、時間、やりたかった仕事……
 もろもろ、商会には、違法にむしり取られていた。
 そう思う……

 衛兵は更に告げる。

「コルボー商会は会頭以下、幹部社員が全員逮捕。閉鎖へいさ、廃業……倒産となる」

 シモンは最も気になる事を尋ねてみる事にした。
 もしも衛兵が知っていればと考えたのである。

「あ、あの……俺、永久雇用契約書を結ばされているんですが……どうなります?」

 対して、衛兵はきっぱりと答えてくれた。

「そんな契約書は違法だし、当然無効だ。君は解放される……自由になるのさ」

「自由に……なるっすか」

「ああ、君は完全に自由だ。縛るモノは何もない! まだまだ若いようだし、いちから人生をやり直すと良い」

 衛兵はそう言い、部屋を出て行った。

 もう……ここには用がない。

 どうしようかと思う。

 大学を卒業したての未熟なシモンとは違う。
 もうおどおどしてはいない。
 借金はないし、世間に慣れ、逆にずうずうしくなった。
 
 トレジャーハンターとしても名を売った。
 身体も著しく頑丈になったし、身体強化魔法も完璧だろう。

 元々所持していた魔法鑑定士の経験もバッチリ積んだ。
 
 数多のスキルも習得した。
 生活の手立てはいくらでもある。
 
 探せば、どこか良き「ライトサイド」で好条件の仕事が見つかるだろう。
 今回の教訓を踏まえ、二度と超「ダークサイド」な会社に騙されないよう、
 しばらく、ゆっくり、じっくり優良企業を探し、就職活動をしよう。
 
 取得したばかりな魔法鑑定士ランクAの資格もある。
 冒険者ギルドあたりでバイトをしても良い。

 衛兵が言った通り、自分はまだ23歳。
 いちから人生をやり直す。
 そう、決めた。

 と、その時。
 誰かが階段を上がって来る。

 この気配は……衛兵ではない。

 やがて現れたのは……
 シモンの見覚えが無い上級貴族らしき大人の女性である。
 
 年齢は30代前半だろうか……
 金髪碧眼きんぱつへきがん端麗たんれい
 上品さが醸し出される美しい顔立ちをしていた。
 スタイルも抜群で、シックな濃紺の法衣ローブを素敵に着こなしている。

「ねぇ、貴方が、シモン・アーシュさん?」

「え?」

 見ず知らずの貴族女性は、いきなりシモンの名を呼ぶと、にっこり笑ったのである。
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