頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第52話「猛獣使い、再び!④」

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 昨日まで……
 クラウディアは、「貴族の自分は、シモン、お前とは住む世界が全く違う!」とばかりに完全に上から目線であった。
 
 平民のシモンを卑しいと罵り、思い切り足蹴にする勢いだった。
 それが一変した!?
 態度が変わった??

 「全く不可解だ」とシモンは首を傾げた。

 いぶかしげな表情のシモンにアンドリューは言う。

「どうした? シモン君」

「はあ、閣下のおっしゃる意味が俺にはちょっと……」

「おいおい、分からんのか?」

「ええっと……」

「娘の様子を見れば、一目瞭然だろう?」

「はあ……」

「こんな事は前代未聞だ」

「前代未聞?」

「うむ、昨夜クラウディアはな、シモン君の為に料理を習得したいと言い出し、ウチの総料理長へ、強引に弟子入りし、夕食の手伝いをしたんだ」

「な、成る程」

「ははははは! 好きな男の為、使用人が行うような仕事を自分があえてやりたい、そんな娘の行動に、父親としては思うところはある!」

「はあ……」

 きまぐれなのか、一時の気の迷いか……
 『自分の為に料理を習うクラウディアの行動』が、シモンには全く理解出来なかった。
 
 シモンだって日頃から実感している。
 ティーグル王国における身分の差、超が付く上級貴族と平民という現実を。
 
 それゆえ、「クラウディアが上から目線になるのも当たり前だ」と納得していた。
 まあ、言い方については大きな問題があるが……
 
 なので……
 「シモンの為に料理を習得したい」とクラウディアが望む事が全く理解出来ない。
 シモン自身、恋愛経験値がほぼゼロなので、イメージも全く湧いてこなかった。

 そんなシモンをよそに、アンドリューは話を進める。
 
「だが、きっかけがどうであれ、クラウディアがおのれの人生に対し、前向きとなるのはとても良い事だと俺は思う」

「……………」

「シモン君」

「はあ」

「ウチの妻も恩人の君にはぜひ会いたいと言っている」

「はあ、奥様が俺にですか?」

「うむ、ぜひ会いたがっている。ウチへ招けと、俺に言った」

 いや……
 話が更に大きくなるから遠慮したいというのがシモンの『本音』である。

 ここで、アンドリューは話題を変えた。
 剛直な騎士であるアンドリューは、やはりシモンの『強さ』に興味があるらしい。

「シモン君は前職ではトレジャーハンターとして、世界各地、様々な秘境を回ったらしいな」

「ええ、回りました。お宝を探して、あちこち行きましたよ」

「そうか、先日のオーク討伐同様、魔物や不死者アンデッドとも戦ったのだな?」

「はあ、そこそこっす」

「そこそこか……曖昧あいまいな言い方だな。改めて聞こう。先日シモン君は100体ものオークをあっさり倒した」

「はあ、何とかって、感じです。上司おふたりのフォローがあっての事です」

「ははは、謙遜けんそんするな。知っているだろうが、かつて俺はドラゴンを倒した。君はドラゴンとは戦ったのか?」

「ええっと、戦ったような、そうでないような」

 自分の戦歴を尋ねられ……
 シモンは曖昧あいまいに言葉を戻した。
 ボスドラゴンのしっぽをつかんで「ぶんぶん」ふりまわしたとか、10体を撃退したとかは言えない。
 正直に言えば、『単なる自慢』になるからだ。

 そんなシモンを、アンドリューは射抜くような目で見た。
 そして高らかに笑う。

「ははははは! その感じだと絶対に戦った事がある。そして、シモン君が無事で、俺の目の前に居るという事は……ドラゴンと互角以上だった、という事だな!」

 アンドリューは、確信ありきという感じで言い切った。
 シモンは再び曖昧に頷く。

「はあ」

「よし! 今日は時間も時間だ。シモン君の詳しい話は今度ウチの屋敷でじっくりと聞こう」

「ええっ?」

 話が蒸し返った。

 やっぱマジですか?
 という思いを込め、シモンは尋ねる。

「ウチの屋敷? じっくりって?」

「ああ、言葉通りだ。近いうちにシモン君。君を屋敷に招き、妻と娘同席で会食したい。改めて家族全員でお礼を告げたいのだ」

「えええええっ!? 会食ぅ!?」

「おう! さっきサーシャともそう話していた。勿論サーシャも呼ぶつもりだ」

「ちょ、長官も?」

 ここで「はいっ!」とアレクサンドラが勢い良く挙手をした。

「アンディ、秘書のエステルも同席させて構いませんよね?」

「お、おう! 構わんよ。学校の先輩後輩として、秘書の彼女も娘とも仲良くなったようだし」

 アンドリューがOKすると……
 次にアレクサンドラは、エステルへ問う。

「エステル、参加するわよね?」

 対して、エステルは即座に快諾する。
 それも身を乗り出していた。

「はい! 長官! ぜひぜひ! 喜んで参加させて頂きます」

「私も調整するけど、食事会はアンディの都合となるから、秘書の貴女もスケジュールの対応はしてね」

「了解です。お気遣いありがとうございます」

 ここで、いきなりクラウディアがすっくと立ち上がった。

「エステル先輩! 私、絶対に負けませんよ」

「私だって!」

 ふたりとも一体「何を負けない」と言っているのだろう?
 恋愛未経験で超が付く鈍感のシモンは、ふたりの女子が放った言葉の意味を理解出きていない。 

 間違いないのは、自分の意思と全く関係なくところで話が大きくなり、進んでいるというはっきりした事実である。

 アレクサンドラは、シモンへ向かい悪戯っぽく笑う。

「うふふ、これからの展開がすっごく面白くなって来たじゃない。ねえ、シモン君」

「そうっすか、長官……俺はこれからの展開は、凄~く嫌な予感しかしませんが」

 クラウディアとエステルの『宣戦布告』を聞き……
 大いに戸惑うシモンであった。
 だが、アレクサンドラだけが心底楽しそうに「にやにや」していたのである。
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