頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第91話「そこまでだ」

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 シモン達を慰労する『歓迎の宴』はどんどんヒートアップ。
 村民達は飲み、食い、歌い、踊る。
 最高潮に達している。

 無理もない。

 人喰いオークの脅威にさらされ、絶望の淵に沈んでいた村民達は……
 オークを討伐し彼等を救った『英雄シモン』が再訪し、勇気づけられた事は勿論……
 有能な部下と共に尽力してくれた。

 そう!
 あっという間に外敵から守る高い外壁を築き、飢えないよう農地を広げてくれた。
 当座の暮らしに不自由がないよう食料を含む生活物資も支給してくれた。
 「またも助けに来てくれた!!」という大きな喜びに満ちていたのだ。

 王国復興開拓省、支援開発戦略局の面々は……
 夜半まで続いた宴会の酒――『寝酒』の効果もあってぐっすり眠る事が出来たのだ。

 ……しかし、早朝5時にはシモン以下全員が起床。
 手早く朝食を済ませると、各自が自分の持ち場で作業に入った。
 2日間の実地経験が、各自の作業を著しく円滑にしていたのである。

 局長のシモンは再び巨大ゴーレムを召喚。
 巨石等の障害物を除去した開拓地をていねいにならし、完全に耕作地の仕様へ変えてしまった。
 またイネスが連れて来た土木作業員の半数とともに、拡張、整地した村道へ破砕した岩――砂利をしく、『仕上げ』に取り掛かっていた。

 冒険者ギルドのサブマスター、ジョゼフは、農業の専門家バルテレミーをチームを組んだ。
 農民出身の冒険者達、そして助力する村民有志一同とともに、シモンが開拓した耕作地に多くのうねを造り、灌漑の為の井戸掘りにも励んでいる。
 ちなみに、バルテレミーによる村民に対する三圃式農業のレクチャーも上手く行き、生産力の大幅な向上が、はかれそうである。

 秘書のエステルは、商業ギルドのサブマスター、ペリーヌとともに、村にただひとつある商店の店主と打合せをしていた。
 打合せの趣旨は商業ギルドとの流通ルートを確立させる事。
 更に村民が必要とする商品を精査したのだ。
 また支給した物資が充分に行き届いているか、何か他に希望はなにかとリサーチも行う。

 そして建築の専門家イネスは村の住宅事情を調査しながら、土木作業員に命じ、依頼された家屋の修繕を行っている。

 村の内外を自警団の村民達と巡回するのが、魔法騎士のジュリエッタだ。
 ジョゼフの地魔法により完成した外壁の再チェックをするとともに、警戒防衛の手順、コツ等を丁寧に伝授、指導していた。

 そんな中、事件は起こったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 事件とは……
 村の周囲を警戒の為、自警団とともに巡回していた騎士ジュリエッタが、不審な行動をとる傭兵らしき男を捕えたのだ。

 傭兵は40歳手前。
 顔の半分が無精ひげにおおわれたむくつけき男である。
 男を引き立てたジュリエッタが言う。

「局長、こいつ仲間ふたりと一緒に村の様子をうかがっておりました……襲撃の為、偵察に来ていたのでは?」

「……成る程。で、コイツと一緒に居た仲間はどうした?」

 シモンが尋ねると、ジュリエッタは少し口ごもる。

「それが……言い訳となってしまいますが……」

「ふむ。構わないから、言ってくれ」

「はい……こちらは徒歩だったので、残念ながら、取り逃がしました。職務質問をしようとした我々の姿を見て、馬に飛び乗って一目散に駆け出したのです。それで逃げ遅れたこいつを捕縛し、尋問しましたが、だんまりで一切答えません」

「ふむ」

「……痛めつけて、白状させますか?」

「……そうだな」

 シモンが頷くと、ジュリエッタは革製のムチを取り出した。

「では……このムチを使用します。100回も叩けば白状するでしょう」

「いやムチは使わない。……俺がスキルと魔法を使う」

「局長自ら? スキルと魔法?」

「……ああ、ジュリエッタ。コイツが暴れないよう、しっかり拘束してくれるか」

「ははっ! 了解致しましたっ! きっちりと縛り直しますっ!」

 ムチを使わず、スキルと魔法で容疑者を尋問する。
 シモンは、一体どうするつもりなのか?

 ジュリエッタだけでなく、エステル以下局員達、村長以下村民達もシモンに注目した。
 尋問云々だけではない。

 山賊と化した傭兵が、支援物資が運ばれた地方の村を、数を頼んだ大軍で襲う事はたまにある。
 襲われた村は地獄絵となる。
 殺戮と強奪……
 村民は殺され、生き残った者もなぐさみ者にされ、挙句の果てに奴隷として遠国に売られる……
 
 それゆえ、もしも襲撃されるならば、戦いに備えねばならない。
 備える為には、襲って来る相手の情報を得て対策を立てる必要があるからだ。

 若いシモンを見た傭兵はせせら笑う。
 そして、つい口が滑った。

「はっ! 思った通りだ。こんなチンケな村、箱だけ立派にしても所詮は少人数。トーシロの村民に守り切れるわけがねぇ。その上、指揮官がこんな若造か? 大笑いだぜ!」

「……貴様らやっぱり、大勢でこの村を襲うのか。仲間はあとどれくらい居る? アジトはどこだ?」

「は? そんなん言うわけね~だろ。さっさと殺せ、バカヤロ!」

「おい、おっさん」

「はあ?」

「……余裕を見せるのも、そこまでだ」

 罵声を浴びせる傭兵を見て……
 シモンはふっと、不敵に笑ったのである。
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