頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第103話「王都探索デート③」

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 職人通りを出た笑顔のシモン、エステル、クラウディアの3人は……
 中央広場に隣接する市場へ向かっている。
 手はしっかりと、つないだままであった。

「局長、ありがとうございますっ! いきなりプレゼントを頂くなんて!」
「とても嬉しいですっ! 一生大事に致しますわっ!」

 エステルとクラウディアは、すこぶる上機嫌である。
 無理もない。
 ふたりは、シモンからプレゼントされた『おそろいのミスリル製のアミュレット』を首からかけているのだ。
 歩くたびに揺れるアミュレットには朝の陽光が反射し、きらきらと輝いている。

「喜ぶ」ふたりを見守るシモンも、不思議な感覚にとらわれている。
「シンプルに嬉しい」のとはまた違う「愛おしい」という感覚だ。

 シモンが肉親以外の女子へ、貴金属をプレゼントする経験は、これまでなかった。
 そのような機会は今までに皆無だったから。

「さあ、移動して、メシにしよう」

「「はいっ!」」

 プレゼントだけではない。
 シモンはエステルとクラウディアに、今までになかった経験をさせてくれた。

 モノが造られるとはどういう事なのか?
 そして、造り上げた『作品』を生み出した職人とも直接引き合わせてくれた。

 わざわざふたりの為にアミュレットを手配してくれたシモンの優しさを感じるとともに……
 細工職人が、送り出す作品アミュレットを見る慈愛の眼差しと言葉が心に残っている。

「お姉さん達よ、ウチの子を宜しく頼まあ。どうか末永く可愛がってくれ!」

 エステルもクラウディアも当然、応えた。

「はいっ! ひたむきに可愛がります!」
「この身から絶対に離しませんわっ!」

 揺れるアミュレットをそっと触ったエステルとクラウディア。
 真ん中にはシモンが居た。

 3人の『心の距離』は確実に縮まっている。
 きっと、食事も楽しいに違いない。

 まもなく中央広場である。
 歩む3人の足取りはどんどん軽くなっていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 中央広場に隣接する市場。
 時刻はまもなく午前11時になる。
 朝の活気は過ぎ、市場本体は静まり返っている。

 しかし……
 市場に隣接する露店はにぎやかであり、衣食その他、様々な店が軒を連ねている。

 シモン達3人はランチを摂るから、露店群の中でも、食べ物を売る店が密集している一画へ向かう。
 そう、シモンが一昨日、朝食を摂りながら下見をしておいた一画である。

 エステルは勿論、上級貴族の令嬢たるクラウディアは、露店で食事などした事はない。
 ふたりとも単独で入るのは臆するというか無理なのだが、愛するそして頼れるシモンが居れば全然安心なのである。

 シモン達の前には様々な料理をテイクアウトさせる露店が建ち並んでいる。

「さあ、食べようか! 好きなものを選んでくれ」

「と、言いましても」
「私もエステルお姉様も、どうしたら良いのか、全く分かりません」

 シモンに勧められたが、エステルとクラウディアはひどく戸惑っている。
 このような露店の作法、勝手が分からないからだ。

「ははは、簡単だ。片端から見て行って、好きなものがあれば買えば良い。但し、食べ物は返品が不可能だぞ」

「返品が不可能?」
「ええっと、それは……」

「一旦買って、ひと口食べて自分には合わないから返すとか、多く買いすぎて食べきれないから不要とかは、ナシだ」

「成る程……それはとんでもないです」
「分かりました。シモン様のおっしゃる通り失礼な行為ですわ」

「と、いう事で……念の為、好き嫌いはないか?」

 シモンが問うと、ふたりは少し口ごもる。

「な、ないです」
「ええっと……努力致しますわ」

「ははは、ふたりとも無理をするな。栄養バランスの、問題だけ気を付けて好きなものを食べれば良いんだ」

「はい!」
「はいっ!」

「じゃあ、まずは肉を選ぼうか……」

「私は羊を!」
「では私はチキンを!」

「よし! じゃあ、……ここはどうだ?」

 シモンがエステルとクラウディアを連れて行ったのは……
 家畜、獣肉を含め、様々な肉を木串に刺し、炭焼きして売る店である。

「おっちゃん、売っておくれ」

「あいよっ! 兄ちゃん、どんな肉か、どんどん気軽に聞いてくれっ!」

「じゃあ、それは?」

 シモンがある商品を指さすと、店主は「にかっ」と笑う。

「羊のバラ、ショルダーの串焼きだ」

 シモンと店主のやりとりを凝視する女子ふたり。
 専門用語が入ったのでシモンが補足する。

「バラは、あばら骨周囲、ショルダーは肩の肉だ」

「あ! 私、それにしますっ!」

 エステルが目を輝かせて手を挙げると、クラウディアも負けてはいない。
 商品を見つめ、少し思案し、直接、店主へ迫る。

「じゃあ、私は……店主さん、それは鶏肉ですよねっ!」

「おう! もも肉かいっ!」

「はいっ! 私はそれを!」

「ささみにレバーもあるぞっ!」

 商売上手の店主らしい。

「うふふ、頂きますわっ!」

 食欲旺盛なクラウディアは、にっこり笑って、大きく頷いたのである。
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