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第102話「王都探索デート②」
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3人で歩き出してからしばし経ち、エステルが話しかけて来る。
「局長」
「何だい、エステル」
「先ほど、食事を摂る為市場へ行くのに、遠回りするとおっしゃっていましたね」
「ああ、遠回りするよ」
「あの、遠回りとは……わざわざ、時間をかけて。つまりどこかへ寄り道するって事ですか?」
「ああ、寄り道する」
「それって、局長……具体的にどこへどれくらい?」
シモンへ、デートコースをお任せしますと伝えておきながら……
つい、エステルはいろいろ聞き込んでしまった。
『秘書』という仕事柄かもしれない。
つまり職業病である。
対して、シモンは曖昧に答える。
「はは、それはお楽しみって事で」
「お楽しみって……」
「エステル、黙って俺について来てくれ」
ここで、シモンの物言いに反応したのはクラウディアである。
「あ、黙って俺について来いって、……お父様の口ぐせですわ」
「え? 公爵閣下のですか?」
エステルが驚けば、クラウディアは更に言う。
「はい、ウチのお母様は、お父様のお言葉通りにして、心の底から信頼する事で、今の素敵な幸せをつかんだと、私に何度かお話しされました」
「な、成る程……」
「シモン様と先輩の会話をお聞きして、私、今決めました。お母様のように幸せになりますわ」
「幸せに? 局長に黙ってついて行く事が? 幸せになると?」
「はい! 念の為申し上げますが……物事の判断を全て、シモン様に頼るというのではありません。それでは、単なる思考停止となりますから」
「単なる思考停止……まあ、そうですね」
「しかし、考えに考えぬいても、やはり理解が及ばない場合、またとっさに判断が求められて、結論がすぐに出せない場合、心より信頼するシモン様に黙ってついて行きます。先輩……いえ、お姉様はどうします?」
クラウディアから、最後にしれっと呼び方を変えられ、エステルは戸惑う。
「お、お姉様?」
「はいっ! これから長いお付き合いになると思います。ず~っと、先輩とお呼びするのもいかがなものかと思います。エステルお姉様とお呼びした方が、宜しいかと……どうでしょうか?」
「……………分かりました。では私もクラウディア妹と呼びましょう」
「うふふ、嬉しいですわっ! お姉様っ!」
「う! 一本取られましたね」
シモンをめぐって恋の戦いは、既に始まっていた。
第一ラウンドは何と! クラウディアの優勢勝ちである。
エステルは、小さく唸り、巻き返しを誓ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クラウディアが勝利してまもなく……
シモンが「寄り道をする」という理由が判明した。
3人が足を踏み入れたのは『職人通り』である。
実は職人達も、冒険者、商人と同様にギルドを組織していた。
『ツンフト』と呼ばれる職人ギルドであり、取引のルールを決めると共に、賃金、労働条件、福利厚生、義務なども明確にしていた。
ツンフトは商品の独占権を認められているのと引き換えに、クォリティーに関して責任を持っていた。
ツンフトの幹部は随時チェックを行い……
基準に満たない商品に関しては厳しいペナルティーを課したりもした。
またツンフトは徒弟制度を採用しており、縦の関係は絶対であった。
しかし親方は基本面倒見が良く、つながりは強固でもあった。
さてさて!
エステルもクラウディアも商品を購入する際は大手の商会経由で購入する事が多く、生産の現場を殆ど見た事がない。
『職人通り』において、商店の殆どが軒先で仕事振りをアピールしているので、シモンは一見の価値ありと考え、ふたりを連れて来たのである。
シモンの見立て通りであった。
石屋、靴屋、染物屋、仕立て屋等々……
各商店は金属製の意匠看板を掲げ、職人達は熱心に仕事をしており、エステルとクラウディアは興味深そうに、見つめていた。
「エステル、面白いわね!」
「お姉様っ、凄いですわ!」
感嘆の声を上げるエステルとクラウディアを、シモンはある店へ連れて行った。
「おはようっす!」
「おはようございます! シモン様!」
店主は30代前半とまだ若いが、腕は確からしい。
店内には、装飾品を含む素敵な商品がたくさん並べられている。
「わあ、キレイっ!」
「素晴らしいですわっ!」
ふたりが目を輝かせたのも無理はなかった。
シモンが連れて行ったのは、金属細工の店であったから。
「この前頼んだモノ、完成したかな?」
「バッチリ仕上がってます。……もしや、このおふたりに?」
「その通り!」
「ははは、おふたりとも凄い美人ですね! めちゃくちゃ羨ましいっす!」
「ああ! ……という事で、ふたりにプレゼントだ」
シモンが店主に指示し、持って来て貰ったのは……
エステルとクラウディアの為に作った、ミスリル製ハート型アミュレットであったのだ。
「局長」
「何だい、エステル」
「先ほど、食事を摂る為市場へ行くのに、遠回りするとおっしゃっていましたね」
「ああ、遠回りするよ」
「あの、遠回りとは……わざわざ、時間をかけて。つまりどこかへ寄り道するって事ですか?」
「ああ、寄り道する」
「それって、局長……具体的にどこへどれくらい?」
シモンへ、デートコースをお任せしますと伝えておきながら……
つい、エステルはいろいろ聞き込んでしまった。
『秘書』という仕事柄かもしれない。
つまり職業病である。
対して、シモンは曖昧に答える。
「はは、それはお楽しみって事で」
「お楽しみって……」
「エステル、黙って俺について来てくれ」
ここで、シモンの物言いに反応したのはクラウディアである。
「あ、黙って俺について来いって、……お父様の口ぐせですわ」
「え? 公爵閣下のですか?」
エステルが驚けば、クラウディアは更に言う。
「はい、ウチのお母様は、お父様のお言葉通りにして、心の底から信頼する事で、今の素敵な幸せをつかんだと、私に何度かお話しされました」
「な、成る程……」
「シモン様と先輩の会話をお聞きして、私、今決めました。お母様のように幸せになりますわ」
「幸せに? 局長に黙ってついて行く事が? 幸せになると?」
「はい! 念の為申し上げますが……物事の判断を全て、シモン様に頼るというのではありません。それでは、単なる思考停止となりますから」
「単なる思考停止……まあ、そうですね」
「しかし、考えに考えぬいても、やはり理解が及ばない場合、またとっさに判断が求められて、結論がすぐに出せない場合、心より信頼するシモン様に黙ってついて行きます。先輩……いえ、お姉様はどうします?」
クラウディアから、最後にしれっと呼び方を変えられ、エステルは戸惑う。
「お、お姉様?」
「はいっ! これから長いお付き合いになると思います。ず~っと、先輩とお呼びするのもいかがなものかと思います。エステルお姉様とお呼びした方が、宜しいかと……どうでしょうか?」
「……………分かりました。では私もクラウディア妹と呼びましょう」
「うふふ、嬉しいですわっ! お姉様っ!」
「う! 一本取られましたね」
シモンをめぐって恋の戦いは、既に始まっていた。
第一ラウンドは何と! クラウディアの優勢勝ちである。
エステルは、小さく唸り、巻き返しを誓ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クラウディアが勝利してまもなく……
シモンが「寄り道をする」という理由が判明した。
3人が足を踏み入れたのは『職人通り』である。
実は職人達も、冒険者、商人と同様にギルドを組織していた。
『ツンフト』と呼ばれる職人ギルドであり、取引のルールを決めると共に、賃金、労働条件、福利厚生、義務なども明確にしていた。
ツンフトは商品の独占権を認められているのと引き換えに、クォリティーに関して責任を持っていた。
ツンフトの幹部は随時チェックを行い……
基準に満たない商品に関しては厳しいペナルティーを課したりもした。
またツンフトは徒弟制度を採用しており、縦の関係は絶対であった。
しかし親方は基本面倒見が良く、つながりは強固でもあった。
さてさて!
エステルもクラウディアも商品を購入する際は大手の商会経由で購入する事が多く、生産の現場を殆ど見た事がない。
『職人通り』において、商店の殆どが軒先で仕事振りをアピールしているので、シモンは一見の価値ありと考え、ふたりを連れて来たのである。
シモンの見立て通りであった。
石屋、靴屋、染物屋、仕立て屋等々……
各商店は金属製の意匠看板を掲げ、職人達は熱心に仕事をしており、エステルとクラウディアは興味深そうに、見つめていた。
「エステル、面白いわね!」
「お姉様っ、凄いですわ!」
感嘆の声を上げるエステルとクラウディアを、シモンはある店へ連れて行った。
「おはようっす!」
「おはようございます! シモン様!」
店主は30代前半とまだ若いが、腕は確からしい。
店内には、装飾品を含む素敵な商品がたくさん並べられている。
「わあ、キレイっ!」
「素晴らしいですわっ!」
ふたりが目を輝かせたのも無理はなかった。
シモンが連れて行ったのは、金属細工の店であったから。
「この前頼んだモノ、完成したかな?」
「バッチリ仕上がってます。……もしや、このおふたりに?」
「その通り!」
「ははは、おふたりとも凄い美人ですね! めちゃくちゃ羨ましいっす!」
「ああ! ……という事で、ふたりにプレゼントだ」
シモンが店主に指示し、持って来て貰ったのは……
エステルとクラウディアの為に作った、ミスリル製ハート型アミュレットであったのだ。
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