29 / 37
第29話「愛の伝道師、帰還」
しおりを挟む
【相坂リンの告白⑬】
ようやく……
トイレに立ったクリスさんとジェロームさんが個室『宝剣の間』へ戻って来た。
少し長かったから、何か相談事をしていたのかもしれない。
でも、良かった!
シスターステファニーとは恋の火花を散らしていたから、結構辛かった。
そのシスターステファニーは、やはり熱い眼差しをクリスさん、
否、トオルさんへ送っていた。
確信した。
シスターステファニーは本気だ。
こうなるとトオルさんを巡っての戦いは、避けられそうもない。
でも、私は絶対に負けない!
「ただいま、戻りました!」
「おう! 戻ったよ!」
王都騎士隊の隊長、副長のふたりは、大きな声で帰還宣言をして、元の席に座った。
ちなみにアランさんは一足先に戻って、
早速シスタージョルジエットと話し込んでいる。
辺りをはばかるようなひそひそ話なので、良く分からないが……
どうやら真剣なやりとりを行っている。
喧嘩ではないのが、幸いだが……
でも人より自分の恋。
よっし、ここは先制攻撃。
シスターステファニーに勝つ為に、ことわざ通り先んじよう。
「お帰りなさい~! 待ってたわ」
「ただいまっ」
「挨拶は元気良く!」が、看護師である私のモットー。
あ~んど、爽やかな、笑顔を合わせるのが基本。
お互いに気持ち良いから。
うん、トオルさんも分かっていて、素敵な笑顔で返してくれた。
でも、トオルさんは私に挨拶した後、きょろきょろしてる。
あれ、シスターシュザンヌを見てるぞ。
どうして?
と、不思議に思った私は、はたと気付いた。
トオルさんはいつもの癖が出たのだと。
『愛の伝道師』としての、気配り癖が。
案の定、哀しそうな表情をしてる。
先ほどジェロームさんから冷たくされたシスターシュザンヌを、
何とかケアしてあげたいと考えているに違いない。
相変わらず優しいなぁ……
ついトオルさんの仕草を観察してしまう私。
次にトオルさんは、アランさん、そしてシスタージョルジエットを見た。
先ほども言った通り、
幹事同士、ずっと『ふたりきりの世界』に入っている。
私が最後にトオルさんが見たのは……
私の恋敵で、
いやいやリュカさんの相手をしている、シスターステファニーだ。
必死にシスターステファニーを口説くリュカさんだが
疲れと焦りの色が見えている。
改めて見やれば、一番『危険人物』だったシスタージョルジエットだけが幸せになっている。
古いベタなギャグだけど、な~んでこうなるの!?
シスタージョルジエット以外の参加メンバーは、私も含め、
いろいろ『難あり』となっている。
その上、そろそろ男子チームの席が変わる頃だ。
トオルさんが移動して、シスタージョルジエットの対面に座ってしまう。
更にその次は……
シスターステファニーの対面に座ってしまう。
と、その時。
トオルさんが一声。
私の勘は良く当たる。
「ええと……そろそろ席替えを……」
どかんっ!
ミシッ!
「わっ!」
「ああっ!」
「きゃっ!」
シスター達の悲鳴があがった。
私だって驚いた。
わあああっ!
誰かが、床を思い切り踏んだよっ。
音がした方を「そうっ」と見れば……
アランさんの傍の床がクラッシュしていた。
結構大きなひび割れが入っている。
改めて思った。
騎士さんって、凄いパワーだって。
でもアランさん本人は一見冷静で、微動だにしていなかった。
視線さえ動かさず、
シスタージョルジェットをずっと見つめている。
ちょっと怖いかも……
ふとトオルさんを見やれば、
アランさんの行為に納得したみたいで頷いていた。
何か、ピンと来たみたい。
でも、少し経ってから、アランさんより指示があった。
「あと10分、席を現状のままで」と、延長申し入れがあったのだ。
これって、凄く分かり易い。
つまり、あと10分あれば……
「シスタージョルジェットと、深い仲になれる」という意味だろう。
軽くため息をついた私は、改めてトオルさんを見た。
……トオルさんは、何やらジェロームさんと話していた。
そして、トオルさんが口を開いた。
場の空気を和らげる為、わざと3枚目を演じているようだ。
「シュザンヌさん! フルールさん! お菓子は好き?」
「大好き!」
「超好き!」
わぁ、トオルさんが素敵な話題を切り出した。
女性で、お菓子が嫌いな人を私は見た事がない。
美味しそうなお菓子を想像して、私は思わず笑顔となる。
シスターシュザンヌも、満面の笑みで応えてくれた。
会話が少しずつ、盛り上がって来た。
ここは、『特別なフォロー』のタイミングなのだろう。
トオルさんが、私ではなくシスターシュザンヌへ話しかけたから。
「シュザンヌさんは、お菓子とか、ご自分で作ったりするのですか?」
「ええっと、私は、あまり……」
トオルさんの質問を聞き、シスターシュザンヌはトーンダウンしてしまう。
私は知らなかったけど、
彼女はあまり、料理やお菓子つくりが得意ではないらしい。
シスターシュザンヌの反応を見た上で、
トオルさんがジェロームさんへ、何か囁いている。
すると、
ジェロームさんは「承知した」という雰囲気で、柔らかな笑みを浮かべ、頷いた。
そして、シスターシュザンヌへ、身振り手振り付きで話しかけたのである。
ようやく……
トイレに立ったクリスさんとジェロームさんが個室『宝剣の間』へ戻って来た。
少し長かったから、何か相談事をしていたのかもしれない。
でも、良かった!
シスターステファニーとは恋の火花を散らしていたから、結構辛かった。
そのシスターステファニーは、やはり熱い眼差しをクリスさん、
否、トオルさんへ送っていた。
確信した。
シスターステファニーは本気だ。
こうなるとトオルさんを巡っての戦いは、避けられそうもない。
でも、私は絶対に負けない!
「ただいま、戻りました!」
「おう! 戻ったよ!」
王都騎士隊の隊長、副長のふたりは、大きな声で帰還宣言をして、元の席に座った。
ちなみにアランさんは一足先に戻って、
早速シスタージョルジエットと話し込んでいる。
辺りをはばかるようなひそひそ話なので、良く分からないが……
どうやら真剣なやりとりを行っている。
喧嘩ではないのが、幸いだが……
でも人より自分の恋。
よっし、ここは先制攻撃。
シスターステファニーに勝つ為に、ことわざ通り先んじよう。
「お帰りなさい~! 待ってたわ」
「ただいまっ」
「挨拶は元気良く!」が、看護師である私のモットー。
あ~んど、爽やかな、笑顔を合わせるのが基本。
お互いに気持ち良いから。
うん、トオルさんも分かっていて、素敵な笑顔で返してくれた。
でも、トオルさんは私に挨拶した後、きょろきょろしてる。
あれ、シスターシュザンヌを見てるぞ。
どうして?
と、不思議に思った私は、はたと気付いた。
トオルさんはいつもの癖が出たのだと。
『愛の伝道師』としての、気配り癖が。
案の定、哀しそうな表情をしてる。
先ほどジェロームさんから冷たくされたシスターシュザンヌを、
何とかケアしてあげたいと考えているに違いない。
相変わらず優しいなぁ……
ついトオルさんの仕草を観察してしまう私。
次にトオルさんは、アランさん、そしてシスタージョルジエットを見た。
先ほども言った通り、
幹事同士、ずっと『ふたりきりの世界』に入っている。
私が最後にトオルさんが見たのは……
私の恋敵で、
いやいやリュカさんの相手をしている、シスターステファニーだ。
必死にシスターステファニーを口説くリュカさんだが
疲れと焦りの色が見えている。
改めて見やれば、一番『危険人物』だったシスタージョルジエットだけが幸せになっている。
古いベタなギャグだけど、な~んでこうなるの!?
シスタージョルジエット以外の参加メンバーは、私も含め、
いろいろ『難あり』となっている。
その上、そろそろ男子チームの席が変わる頃だ。
トオルさんが移動して、シスタージョルジエットの対面に座ってしまう。
更にその次は……
シスターステファニーの対面に座ってしまう。
と、その時。
トオルさんが一声。
私の勘は良く当たる。
「ええと……そろそろ席替えを……」
どかんっ!
ミシッ!
「わっ!」
「ああっ!」
「きゃっ!」
シスター達の悲鳴があがった。
私だって驚いた。
わあああっ!
誰かが、床を思い切り踏んだよっ。
音がした方を「そうっ」と見れば……
アランさんの傍の床がクラッシュしていた。
結構大きなひび割れが入っている。
改めて思った。
騎士さんって、凄いパワーだって。
でもアランさん本人は一見冷静で、微動だにしていなかった。
視線さえ動かさず、
シスタージョルジェットをずっと見つめている。
ちょっと怖いかも……
ふとトオルさんを見やれば、
アランさんの行為に納得したみたいで頷いていた。
何か、ピンと来たみたい。
でも、少し経ってから、アランさんより指示があった。
「あと10分、席を現状のままで」と、延長申し入れがあったのだ。
これって、凄く分かり易い。
つまり、あと10分あれば……
「シスタージョルジェットと、深い仲になれる」という意味だろう。
軽くため息をついた私は、改めてトオルさんを見た。
……トオルさんは、何やらジェロームさんと話していた。
そして、トオルさんが口を開いた。
場の空気を和らげる為、わざと3枚目を演じているようだ。
「シュザンヌさん! フルールさん! お菓子は好き?」
「大好き!」
「超好き!」
わぁ、トオルさんが素敵な話題を切り出した。
女性で、お菓子が嫌いな人を私は見た事がない。
美味しそうなお菓子を想像して、私は思わず笑顔となる。
シスターシュザンヌも、満面の笑みで応えてくれた。
会話が少しずつ、盛り上がって来た。
ここは、『特別なフォロー』のタイミングなのだろう。
トオルさんが、私ではなくシスターシュザンヌへ話しかけたから。
「シュザンヌさんは、お菓子とか、ご自分で作ったりするのですか?」
「ええっと、私は、あまり……」
トオルさんの質問を聞き、シスターシュザンヌはトーンダウンしてしまう。
私は知らなかったけど、
彼女はあまり、料理やお菓子つくりが得意ではないらしい。
シスターシュザンヌの反応を見た上で、
トオルさんがジェロームさんへ、何か囁いている。
すると、
ジェロームさんは「承知した」という雰囲気で、柔らかな笑みを浮かべ、頷いた。
そして、シスターシュザンヌへ、身振り手振り付きで話しかけたのである。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる