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第7話 「葬送」
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「さよならは言ったな」
「うん……手伝ってくれてありがと……」
戦死して、無残な骸となったダークエルフ達。
整然と並べられた様子を見て、エリンは目を伏せる。
アスモデウスの部下である魔族と混在して、折り重なっていた骸を……
ダンにも手伝って貰い、ダークエルフだけ別にして寝かせたのである。
その中には……エリンの愛する父も居た。
遺体の父は、傷だらけだった。
血まみれだった。
全ての傷が、一族の為に負った傷である。
エリンと仲間を守ろうとして、悪魔どもと戦い抜いて力尽き、遂に斃れたのだ。
今、エリンの手には、父の遺髪が「ぎゅっ」と握り締められていた。
ダンが、死者を弔う葬送魔法を使うと聞いて、驚いたエリンだったが……
当然、使用を了解した。
自分を守る為に、勇敢に戦った同胞を、心から弔おうと思ったからである。
涙を浮かべて、仲間の骸を無言で眺めるエリン。
彼女の肩に、「ぽん」と優しくダンが手を置いた。
「父上達の魂は、もう天へ旅立ってしまっただろうが……そろそろ俺達で送ってやろう」
「はい……」
ダンは、握った拳を胸の辺りに掲げた。
またもや腕が、眩い白光に包まれている。
先程アスモデウスを屠ったのとは違う、優しい輝きであった。
やがてダンの唇がわずかに動き、言霊が詠唱され始める。
「魂よ、天に還れ! 肉体よ、大地へ還れ! 鎮魂歌よ、厳かに鳴り響け!」
廃墟となった王宮で、朗々と響く言霊の詠唱。
ダンの魔力が、充分に高まったのだろう。
「撃!」
構えたダンの拳から、白光が放たれる。
エリンが見守る中、眩い白光に包まれたダークエルフ達の遺体が……
次々と塵になって行く……
やはり、これも凄い魔法だ。
エリンが見た葬送魔法は、土中に埋められたエルフが彷徨ったりせず、安らかに眠れるように処置する為の魔法だ。
しかしそう考えている間もなく、喪失感がエリンを襲って来た。
魂は既に天に召され、目の前の骸は、単に器だけと分かっていても悲しい……
父や仲間達が、肉体を消失させて無に還るという現象を目の当たりにして、エリンはとても悲しくなるのだ。
「ああっ! お父様! お父様が行っちゃう」
白光の輝きが収まると、父を含めたダークエルフ達の遺体は、完全に消え去っていた。
「うううう……あおおおおおおおお~ん!!!」
思わず、エリンは慟哭した。
これでもう……父や仲間達とは二度と会えない。
あれだけ話したり、笑い合ったりしたのに……
もう再び、あんな楽しい日々は戻って来ないのだ。
心の中に、懐かしい思い出だけが残されたのだ。
エリンの心を、更に大きな喪失感が襲っている。
「あうあうあうあう~」
悲しい!
涙が、涙が止まらない!
「エリン……」
号泣するエリンに、ダンは優しく言う。
「あのままだと、お前の父や仲間達が不死者になりかねない。分かるな?」
「ううううう……うん……」
父や仲間達が、おぞましい不死者《アンデッド》となり……
崩壊した肉体をひきずりながら、廃墟となったこの王宮を永遠に彷徨う。
確かに、そんな事は耐えられない。
ダンのやってくれた事は、弔いであると同時に、エリンへの思いやりなのである。
ダンは……エリンを助けてくれた。
悪魔に辱められる寸前の、エリンを救ってくれた。
一族全員の、仇を討ってくれた。
それもあの悪魔へ、エリンが一矢報いる事が出来るように、彼女の魔力も使うという離れ業も見せてくれた。
そして今、父や仲間達を天国へ送ってくれた
悲しくて泣いているエリンを慰めて、労わってくれた。
全部、エリンの為に……ダンが優しくしてくれた事だ。
強く思うようにして、やっとエリンは笑顔を見せる事が出来た。
微笑むエリンへ、ダンも穏やかな笑顔を返してくれる。
もう安心だ。
エリンは、ダンについて行く。
ダンが大好きだから、運命の出会いなのだから二度と離れない。
エリンは改めて、そう決意したのである。
こうしてダークエルフ達の遺体が葬送され、残るはアスモデウス配下の魔族共の骸であった。
「さあて……こいつらは、俺の従士に任せてしまおう」
「従士?」
「ああ、エリンの親父さん達と違って、奴等には怨念と化した禍々しい魂の残滓も残っている。数も滅茶苦茶多いし、始末は任せて俺達は移動しよう」
「し、始末を任せる?」
「ああ、任せてしまおう」
「???」
ダンはまた、魔法発動の準備へと入っていた。
雰囲気から見て、発動するのはどうやら召喚魔法のようだ。
エリンは、ダンの魔法発動の異常さに驚いている。
そもそも魔法というものは、高度な上級レベルになればなるほど、難解な言霊や呪文、そして複雑で大きな予備動作が必要だ。
当然、発動まで長い時間もかかる。
ダンはエリンから見ても、信じられないような上級魔法を、無詠唱且つ予備動作も無しで楽々と発動しているのだ。
そして今回も、である。
「我が下へ来たれ、忠実なる契約者! 召喚!」
ダンが軽く手を振り、言霊を唱えると、目の前の床が巨大な円の形に発光し始めた。
円の中から何やら、おぞましい瘴気を感じる……
これは冥界から、発せられる独特ともいえる負の瘴気だ。
一体、何者を呼び出そうとしているのであろうか?
この瘴気は、間違いなく魔族が発するものである。
エリンは、わけが分からない。
ダンは聖なる葬送魔法を使うかと思えば、今発動しているこの召喚魔法で、闇に生きる世界の住人を呼ぼうとしているからだ。
「ええっ!? 何?」
「出でよ! その強く逞しき姿を現せ! 冥界の門番たる強者よ!」
発光した円形から、黒い霧のような魔力の渦が立ち昇った。
魔力の渦が、徐々に実体化して行く……
やがて霧の中から、 雄牛ほどもある巨体の魔獣が現れる。
「あ、ああああっ!?」
エリンが驚いて、ダンに縋りついた。
しかしダンはエリンを抱きながら、片手を挙げて歓迎のポーズをとる。
「ケルベロス! よくぞ来た!」
がおああああああああああああん!
召喚魔法により呼び出された、冥界の番犬ケルベロスが爆音のような声で咆哮し、「じろり」とふたりを一瞥したのであった。
「うん……手伝ってくれてありがと……」
戦死して、無残な骸となったダークエルフ達。
整然と並べられた様子を見て、エリンは目を伏せる。
アスモデウスの部下である魔族と混在して、折り重なっていた骸を……
ダンにも手伝って貰い、ダークエルフだけ別にして寝かせたのである。
その中には……エリンの愛する父も居た。
遺体の父は、傷だらけだった。
血まみれだった。
全ての傷が、一族の為に負った傷である。
エリンと仲間を守ろうとして、悪魔どもと戦い抜いて力尽き、遂に斃れたのだ。
今、エリンの手には、父の遺髪が「ぎゅっ」と握り締められていた。
ダンが、死者を弔う葬送魔法を使うと聞いて、驚いたエリンだったが……
当然、使用を了解した。
自分を守る為に、勇敢に戦った同胞を、心から弔おうと思ったからである。
涙を浮かべて、仲間の骸を無言で眺めるエリン。
彼女の肩に、「ぽん」と優しくダンが手を置いた。
「父上達の魂は、もう天へ旅立ってしまっただろうが……そろそろ俺達で送ってやろう」
「はい……」
ダンは、握った拳を胸の辺りに掲げた。
またもや腕が、眩い白光に包まれている。
先程アスモデウスを屠ったのとは違う、優しい輝きであった。
やがてダンの唇がわずかに動き、言霊が詠唱され始める。
「魂よ、天に還れ! 肉体よ、大地へ還れ! 鎮魂歌よ、厳かに鳴り響け!」
廃墟となった王宮で、朗々と響く言霊の詠唱。
ダンの魔力が、充分に高まったのだろう。
「撃!」
構えたダンの拳から、白光が放たれる。
エリンが見守る中、眩い白光に包まれたダークエルフ達の遺体が……
次々と塵になって行く……
やはり、これも凄い魔法だ。
エリンが見た葬送魔法は、土中に埋められたエルフが彷徨ったりせず、安らかに眠れるように処置する為の魔法だ。
しかしそう考えている間もなく、喪失感がエリンを襲って来た。
魂は既に天に召され、目の前の骸は、単に器だけと分かっていても悲しい……
父や仲間達が、肉体を消失させて無に還るという現象を目の当たりにして、エリンはとても悲しくなるのだ。
「ああっ! お父様! お父様が行っちゃう」
白光の輝きが収まると、父を含めたダークエルフ達の遺体は、完全に消え去っていた。
「うううう……あおおおおおおおお~ん!!!」
思わず、エリンは慟哭した。
これでもう……父や仲間達とは二度と会えない。
あれだけ話したり、笑い合ったりしたのに……
もう再び、あんな楽しい日々は戻って来ないのだ。
心の中に、懐かしい思い出だけが残されたのだ。
エリンの心を、更に大きな喪失感が襲っている。
「あうあうあうあう~」
悲しい!
涙が、涙が止まらない!
「エリン……」
号泣するエリンに、ダンは優しく言う。
「あのままだと、お前の父や仲間達が不死者になりかねない。分かるな?」
「ううううう……うん……」
父や仲間達が、おぞましい不死者《アンデッド》となり……
崩壊した肉体をひきずりながら、廃墟となったこの王宮を永遠に彷徨う。
確かに、そんな事は耐えられない。
ダンのやってくれた事は、弔いであると同時に、エリンへの思いやりなのである。
ダンは……エリンを助けてくれた。
悪魔に辱められる寸前の、エリンを救ってくれた。
一族全員の、仇を討ってくれた。
それもあの悪魔へ、エリンが一矢報いる事が出来るように、彼女の魔力も使うという離れ業も見せてくれた。
そして今、父や仲間達を天国へ送ってくれた
悲しくて泣いているエリンを慰めて、労わってくれた。
全部、エリンの為に……ダンが優しくしてくれた事だ。
強く思うようにして、やっとエリンは笑顔を見せる事が出来た。
微笑むエリンへ、ダンも穏やかな笑顔を返してくれる。
もう安心だ。
エリンは、ダンについて行く。
ダンが大好きだから、運命の出会いなのだから二度と離れない。
エリンは改めて、そう決意したのである。
こうしてダークエルフ達の遺体が葬送され、残るはアスモデウス配下の魔族共の骸であった。
「さあて……こいつらは、俺の従士に任せてしまおう」
「従士?」
「ああ、エリンの親父さん達と違って、奴等には怨念と化した禍々しい魂の残滓も残っている。数も滅茶苦茶多いし、始末は任せて俺達は移動しよう」
「し、始末を任せる?」
「ああ、任せてしまおう」
「???」
ダンはまた、魔法発動の準備へと入っていた。
雰囲気から見て、発動するのはどうやら召喚魔法のようだ。
エリンは、ダンの魔法発動の異常さに驚いている。
そもそも魔法というものは、高度な上級レベルになればなるほど、難解な言霊や呪文、そして複雑で大きな予備動作が必要だ。
当然、発動まで長い時間もかかる。
ダンはエリンから見ても、信じられないような上級魔法を、無詠唱且つ予備動作も無しで楽々と発動しているのだ。
そして今回も、である。
「我が下へ来たれ、忠実なる契約者! 召喚!」
ダンが軽く手を振り、言霊を唱えると、目の前の床が巨大な円の形に発光し始めた。
円の中から何やら、おぞましい瘴気を感じる……
これは冥界から、発せられる独特ともいえる負の瘴気だ。
一体、何者を呼び出そうとしているのであろうか?
この瘴気は、間違いなく魔族が発するものである。
エリンは、わけが分からない。
ダンは聖なる葬送魔法を使うかと思えば、今発動しているこの召喚魔法で、闇に生きる世界の住人を呼ぼうとしているからだ。
「ええっ!? 何?」
「出でよ! その強く逞しき姿を現せ! 冥界の門番たる強者よ!」
発光した円形から、黒い霧のような魔力の渦が立ち昇った。
魔力の渦が、徐々に実体化して行く……
やがて霧の中から、 雄牛ほどもある巨体の魔獣が現れる。
「あ、ああああっ!?」
エリンが驚いて、ダンに縋りついた。
しかしダンはエリンを抱きながら、片手を挙げて歓迎のポーズをとる。
「ケルベロス! よくぞ来た!」
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