隠れ勇者と押しかけエルフ

東導 号

文字の大きさ
29 / 181

第29話「仲直り①」

しおりを挟む
 今朝も、ダンとエリンは仕事に励んでいた。
 ペット?の『犬』『猫』、そしてニワトリに餌をやり、続いて畑の手入れをしている。

 昨夜は、それぞれ自分の身の上を話した。
 『距離』は更に近くなり、お互いを思いやれるようになった。
 ダンもエリンも、ふたりで頑張って助け合い、共に生きて行こうと改めて思うのだ。

 エリンが大きな声をあげながら、必死に草をむしっている。

「わぁ! 昨日むしったのに、もうこんなに生えているのっ? やっぱりアマイモン様の力って凄いんだね」

「そうだな」

 全世界における、植物の繁茂を司る大地の上級精霊がアマイモン。
 ダークエルフ達の守護を担う大地の精霊ノーム達の支配者だ。

 ここで、エリンが提案する。

「でもエリンもダンも土の魔法が使えるから、ちゃちゃっと魔法で雑草が生えないようにすれば良いのに、その方が絶対に楽ちんだよ」

 しかし、ダンは首を振る。
 エリンと話しながらも、雑草をむしる手は休んでいない。

「確かにエリンの言う通り、魔法を使えば楽だ。だけど……こうやって地道に働かないと、人間が駄目になりそうな気がしてな」

「楽をしたらダメになるの? エリン達が? ふうん……」

 エリンは、可愛らしく首を傾げる。
 ダンの言う事を少しでも理解しようと、頑張っているのが分かる。
 そんなエリンのちょっとした仕草が、ダンは愛しいと思う。

「それに汗を流して働けば、腹も減って飯も一層美味い」

 労働の後の食事という、紐づいた言い方をしたら、エリンはすぐ理解したようだ。

「成る程! 一生懸命働いてお腹が空くと、ご飯が美味しい……そうか、そうだよね……うんっ! ダンの言う通りだねっ。エリンにも段々分かって来たよ」

 エリンの言葉に、笑顔で応えていたダンであったが、急に眉間に皺を寄せる。

「む! 誰か、来る」

「誰? あ、この気配は?」

 エリンも、ダンの真似をして眉間に皺を寄せた。
 不快そうな表情になる。

「この気配……エリンに酷い事を言ったふたりだ」

 エリンへ、酷い事を言った……
 となると、来るのはあのアルバートとフィービーのふたりであろう。

 ダンも、誰が来るかは分かっていたようである。

「ああ、そうだな。まあ……そろそろ来る頃だとは思ったよ」

「そろそろ?」

 何故、ダンが予想通りのような言い方をするのか……
 エリンには不思議であった。

 しかしダンは納得しているらしい。
 小さく頷く。

「うん、このままにしてはおけないから、お互いにな」

「???」

 ダンの言う意味が……分からない。
 エリンはちょっと悔しくて、拗ねたような表情になる。

 気付いたダンは、エリンの顔を見て苦笑した。
 片手を挙げて、謝罪する。

「ああ、御免。少し説明が必要だな」

「説明?」

「アルバート達が王家に命じられた、俺の監視役だとは言ったな」

「うん、エリン覚えているよ」

 エリンの記憶力は良い。
 抜群と言っても良い。
 監視役と聞いたアルバート達が、何か理由があってダンを見張っているという認識は持っていた。

 エリンが頷くと、ダンは言う。

「そう、アルバート達は、な。この王国の元騎士で、俺の監視役兼連絡係なんだ。たまにヴィリヤ……あいつから直接使い魔が来ることもあるけどな」

「連絡係? 使い魔?」

 エリンは、まだ話の中身が見えない。
 ダンは漸く、自分のミスに気付いたようだ。

「ああ、御免。最初から順を追って話そう。そうじゃないと良く分からないよな」

「うん! お願い」

 やっぱりダンは、エリンの事を考えてくれている。
 そう思ったエリンは、嬉しくて堪らない。

 ダンは微笑み、ゆっくりと話し出す。

「まず大元は創世神の巫女さ。この国で創世神の巫女はたったひとり。彼女は神殿ではなく王宮に居る。その巫女に神託とやらが降りて、俺に仕事の依頼が来る。その神託は直接俺ではなく、間接的に来る。俺に連絡をくれるのが王宮魔法使いであるヴィリヤ・アスピヴァーラなんだ」

 宿敵の名前が出たので、エリンの目付きが鋭くなる。

「むむむ、そのエルフ女が巫女から神託の話を受けるのね。偉そうにぃ!」

「その通り。下された神託の内容を、反映させた魔法の指令書をヴィリャが作る。その指令書を預かって、ここへ持って来るのがアルバート達。俺はその指令書に従って仕事をするんだ」

「ああ、そうだったんだぁ!」

 創世神の神託により、ダンは地下世界へ来た。
 エリンの居る地下世界へ来て、助けてくれた。
 やはり運命だ!
 エリンは、一転して機嫌が良くなった。

「それで、指令書にあの最低悪魔の名前があったの?」

「そうだよ。それで魔王アスモデウスを倒してお前を助けて、今回依頼された仕事が完了しただろう? そうすると創世神の巫女へ再び神託が降りるそうだ。わざわいが去った……ってな。それで巫女からまたヴィリヤへ連絡が入る……最後にヴィリヤから、つまり俺の仕事が終了したという連絡が来るのさ」

「つまり、これからあのふたりが来るって事は……ダンの仕事が終わったていう神様のお報せ?」

「そういう事……俺の監視と、ヴィリヤからのパシリもやっているのがアルバート達だ。彼等が連絡をくれたら、俺は報酬を受け取りに、王都へ行く」

 漸く、エリンにも話が見えて来た。
 簡単に言えば、ダンは創世神の神託を受けて働いているのだと。
 そして現在は、ちゃんと働いた分の見返りも貰っているようである。

「良かったね、もうただ働きじゃなくて」

 エリンの言葉を聞いた、ダンは悪戯っぽく笑う。
 ヴィリヤというエルフに、お仕置きした事を思い出し笑いしたのだ。

「ああ、全くだ。散々ただで働かされて、怒った俺がつんつんヴィリヤのお尻をぺんぺんしたからな」

 気取ったつんつんエルフに、お尻ぺんぺん!
 エリンは、ダンの言い方が面白くて堪らない。

 つい、「あははっ」と大笑いしてしまったのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...