64 / 181
第64話「ニーナをナンパ?①」
しおりを挟む
英雄亭が、営業終了後……
夜も更けた午前1時、慰労会という名のささやかな宴も終わり、皆寝る事となった。
明日の仕入れの為に、モーリスは朝早く市場へ行かなければならない。
そして料理の仕込みをし、ランチと夜の準備をする。
英雄亭のような、居酒屋の仕事は結構な激務なのだ。
「お休みなさ~い」
「おう、エリン、またな」
緊張するニーナの手を引き、ダンとモーリスに手を振るエリン。
そんな愛妻の姿を、ダンは「にこにこ」して見ていた。
エリンに、『人間の友人』が出来るのは良い事だと考えていたからである。
ニーナは、優しく気配りの利く子だ。
信頼関係が出来て、エリンの『正体』をそっと明かしたら受け入れてくれるかもしれない。
ダンは、とても期待していた。
そんなダンの気持ちが分かるのか、エリンも笑顔で応える。
「了解! ニーナと仲良く寝るよぉ」
「ははは、エリンちゃん、ニーナを頼むぞ」
モーリスも同じように「にこにこ」して、エリンとニーナを見つめていた。
今日一緒に寝るのはふたりにとって良い事だと、モーリスも考えていたのである。
ニーナは、何故か友達が少ない。
今日風邪で休んだ同僚の少女達とも、深くは付き合っていない。
だがモーリスが見る限り、エリンとニーナは合いそうな気がするのだ。
就寝の挨拶が済み、ダン、モーリスと別れて……
ニーナの私室へ来た、エリンとニーナ。
張り切るエリンへ、ニーナは恐る恐る聞いてみる。
「エリンさん……良いんですか? ダン……さんと寝なくて」
「良いの、良いの」
ニーナには、信じられなかった。
結婚……
女性にとって、憧れに裏打ちされた甘美な響きである。
素敵な男性に出会い、結婚したいと夢見るのはニーナも同じだ。
そして……好きな相手とずっと一緒に居られる。
見たところ、ダンとエリンは新婚であろう。
『夜』は特に一緒に居たい筈だ。
愛し合いたい……筈だ。
それが離れて、自分なんかと寝るなんて何故? と、ニーナは思った。
だが既にニーナの部屋には、予備のベッドが運び込まれ、ふたつのベッドは「ぴたっ」とくっつけられていたのである。
エリンは、着ていたメイド服を「さっさ」と脱いで肌着になる。
ニーナも、同様にメイド服を脱ぐ。
改めてニーナは、エリンの身体をまじまじと見た。
自分の服を貸した時に分かっていたが、エリンは超がつく抜群のプロポーションである。
ぼん、きゅっ、きゅっ!
迫る褐色の肉体に、ニーナの口から、ついため息が漏れる。
「ふう、エリンさん……凄い身体……」
羨ましそうに呟くニーナに対して、エリンはあっけらかんとしている。
「ニーナだって凄いよ。おっぱいだってエリンと同じくらいある、ダンは大きなおっぱいが大好きだよ」
ダンは大きなおっぱいが、大好き!?
となると……
目の前にある、この巨大な双丘に顔を埋めたりとか?
「ちゅっ」と……キ、キスしたりするのだろうか?
ニーナの妄想が、どんどんエスカレートして行く。
「え、えっと…………」
真っ赤になって俯いたニーナを他所に、エリンは「しれっ」と問い掛ける。
「さあ、話を聞かせて! ニーナは何故ダンが好きなの?」
「え、えええっ!?」
相変わらず、エリンはいきなり直球を投げ込んで来る。
ニーナは、何とか矛先をかわそうと必死だ。
そう、ニーナは自分の事なんかより、ダンとエリンの事を知りたい。
教えて欲しいのだ。
「そ、それより!」
「何?」
「エ、エリンさんは何故ダン……さんと結婚したのですか?」
「それ言ったら、ニーナも言う?」
何とエリンは交換条件を出して来た。
ニーナは一瞬ためらったが、ダンとエリンの馴れ初めを、知りたいという欲求に負けた。
「は、はい、言います……約束します」
ニーナが話す事を告げると、エリンは「にいっ」と笑う。
そして……
「じゃあ、言うね! えっと、エリンが助けて貰ったから」
「助けて……貰った」
こんなケースも、ダンは予想していた。
エリンとは、ちゃんとすり合わせをしていたのである。
「ダンが旅をしていて、たまたまエリンを助けたの。エリンを襲っていた悪い魔物を倒してくれたんだ」
エリンの言うことは、嘘ではない。
悪い魔物——悪魔アスモデウスを倒してエリンを助けたのは事実だから。
敵のスケールの問題だけ伏せれば、ちゃんと理由をいえる巧い言い訳である。
魔物に襲われて、命が危ない時に助けてくれた……
それは、女子の王子様願望に直結する。
ニーナは感動して、益々羨ましくなる。
「凄い! それって運命の出会いですね」
「そう、運命だよ。エリンとダンの出会いは運命」
きっぱりと言い切るエリン。
その揺るぎない態度を見て、ニーナは「ぽおっ」としてしまう。
夢見る女子には、理想の展開なのだ。
「羨ましい! 良いなぁ、ダンさんが『王子様』なんて」
羨ましがるニーナを、今度はエリンが「じいっ」と見る。
悪戯っぽく笑う。
何か、含みがあるようだ。
「うん、でもねぇ……」
「でもねぇ?」
「うふふ、ダンはニーナにとっても王子様なんでしょ?」
「!!!」
何で分かるの? という表情のニーナ。
エリンは、「ここぞ!」とばかりに攻め立てる。
「言って! ニーナ、や・く・そ・く!」
「は、はい、約束ですよね、分かりました……エリンさんの出会いに比べれば……私は地味なんですが」
「地味?」
「私もダンさんに助けて貰ったんです」
「ニーナもダンに?」
「はい、私、ダンさんにナンパされたんです」
「ナンパぁ!?」
助けられたのにナンパ?
驚くエリン……
そしてエリンのリアクションに、これまた驚いて俯くニーナ。
深夜の部屋には、微妙な空気が漂ったのであった。
夜も更けた午前1時、慰労会という名のささやかな宴も終わり、皆寝る事となった。
明日の仕入れの為に、モーリスは朝早く市場へ行かなければならない。
そして料理の仕込みをし、ランチと夜の準備をする。
英雄亭のような、居酒屋の仕事は結構な激務なのだ。
「お休みなさ~い」
「おう、エリン、またな」
緊張するニーナの手を引き、ダンとモーリスに手を振るエリン。
そんな愛妻の姿を、ダンは「にこにこ」して見ていた。
エリンに、『人間の友人』が出来るのは良い事だと考えていたからである。
ニーナは、優しく気配りの利く子だ。
信頼関係が出来て、エリンの『正体』をそっと明かしたら受け入れてくれるかもしれない。
ダンは、とても期待していた。
そんなダンの気持ちが分かるのか、エリンも笑顔で応える。
「了解! ニーナと仲良く寝るよぉ」
「ははは、エリンちゃん、ニーナを頼むぞ」
モーリスも同じように「にこにこ」して、エリンとニーナを見つめていた。
今日一緒に寝るのはふたりにとって良い事だと、モーリスも考えていたのである。
ニーナは、何故か友達が少ない。
今日風邪で休んだ同僚の少女達とも、深くは付き合っていない。
だがモーリスが見る限り、エリンとニーナは合いそうな気がするのだ。
就寝の挨拶が済み、ダン、モーリスと別れて……
ニーナの私室へ来た、エリンとニーナ。
張り切るエリンへ、ニーナは恐る恐る聞いてみる。
「エリンさん……良いんですか? ダン……さんと寝なくて」
「良いの、良いの」
ニーナには、信じられなかった。
結婚……
女性にとって、憧れに裏打ちされた甘美な響きである。
素敵な男性に出会い、結婚したいと夢見るのはニーナも同じだ。
そして……好きな相手とずっと一緒に居られる。
見たところ、ダンとエリンは新婚であろう。
『夜』は特に一緒に居たい筈だ。
愛し合いたい……筈だ。
それが離れて、自分なんかと寝るなんて何故? と、ニーナは思った。
だが既にニーナの部屋には、予備のベッドが運び込まれ、ふたつのベッドは「ぴたっ」とくっつけられていたのである。
エリンは、着ていたメイド服を「さっさ」と脱いで肌着になる。
ニーナも、同様にメイド服を脱ぐ。
改めてニーナは、エリンの身体をまじまじと見た。
自分の服を貸した時に分かっていたが、エリンは超がつく抜群のプロポーションである。
ぼん、きゅっ、きゅっ!
迫る褐色の肉体に、ニーナの口から、ついため息が漏れる。
「ふう、エリンさん……凄い身体……」
羨ましそうに呟くニーナに対して、エリンはあっけらかんとしている。
「ニーナだって凄いよ。おっぱいだってエリンと同じくらいある、ダンは大きなおっぱいが大好きだよ」
ダンは大きなおっぱいが、大好き!?
となると……
目の前にある、この巨大な双丘に顔を埋めたりとか?
「ちゅっ」と……キ、キスしたりするのだろうか?
ニーナの妄想が、どんどんエスカレートして行く。
「え、えっと…………」
真っ赤になって俯いたニーナを他所に、エリンは「しれっ」と問い掛ける。
「さあ、話を聞かせて! ニーナは何故ダンが好きなの?」
「え、えええっ!?」
相変わらず、エリンはいきなり直球を投げ込んで来る。
ニーナは、何とか矛先をかわそうと必死だ。
そう、ニーナは自分の事なんかより、ダンとエリンの事を知りたい。
教えて欲しいのだ。
「そ、それより!」
「何?」
「エ、エリンさんは何故ダン……さんと結婚したのですか?」
「それ言ったら、ニーナも言う?」
何とエリンは交換条件を出して来た。
ニーナは一瞬ためらったが、ダンとエリンの馴れ初めを、知りたいという欲求に負けた。
「は、はい、言います……約束します」
ニーナが話す事を告げると、エリンは「にいっ」と笑う。
そして……
「じゃあ、言うね! えっと、エリンが助けて貰ったから」
「助けて……貰った」
こんなケースも、ダンは予想していた。
エリンとは、ちゃんとすり合わせをしていたのである。
「ダンが旅をしていて、たまたまエリンを助けたの。エリンを襲っていた悪い魔物を倒してくれたんだ」
エリンの言うことは、嘘ではない。
悪い魔物——悪魔アスモデウスを倒してエリンを助けたのは事実だから。
敵のスケールの問題だけ伏せれば、ちゃんと理由をいえる巧い言い訳である。
魔物に襲われて、命が危ない時に助けてくれた……
それは、女子の王子様願望に直結する。
ニーナは感動して、益々羨ましくなる。
「凄い! それって運命の出会いですね」
「そう、運命だよ。エリンとダンの出会いは運命」
きっぱりと言い切るエリン。
その揺るぎない態度を見て、ニーナは「ぽおっ」としてしまう。
夢見る女子には、理想の展開なのだ。
「羨ましい! 良いなぁ、ダンさんが『王子様』なんて」
羨ましがるニーナを、今度はエリンが「じいっ」と見る。
悪戯っぽく笑う。
何か、含みがあるようだ。
「うん、でもねぇ……」
「でもねぇ?」
「うふふ、ダンはニーナにとっても王子様なんでしょ?」
「!!!」
何で分かるの? という表情のニーナ。
エリンは、「ここぞ!」とばかりに攻め立てる。
「言って! ニーナ、や・く・そ・く!」
「は、はい、約束ですよね、分かりました……エリンさんの出会いに比べれば……私は地味なんですが」
「地味?」
「私もダンさんに助けて貰ったんです」
「ニーナもダンに?」
「はい、私、ダンさんにナンパされたんです」
「ナンパぁ!?」
助けられたのにナンパ?
驚くエリン……
そしてエリンのリアクションに、これまた驚いて俯くニーナ。
深夜の部屋には、微妙な空気が漂ったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる