隠れ勇者と押しかけエルフ

東導 号

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第148話「助けて!」

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 自分は、英雄バートクリード・アイディールの弟、ローレンスの子孫である。
 それも……自分達デックアールヴにとっては、ローレンスこそが英雄なのだ。
 
 リストマッティは、心の底からという感じで、誇らしげに言い放った。
 そして、

「さあ、ダン殿。……これで私の話は一旦、終わりだ。これ以上の話は、君が私達に協力すると、約束してくれてから……始めるとしよう」

 と言い、ダンを真っすぐ見据えた。

 対して、ダンは、今迄の話に納得した様子である。
 
 何故ならば、リストマッティから発する魂の波動は、全くといっていいほど乱れていない。
 嘘偽りがないと誓ったのは、本当だった。

「ダン殿、もう、気持ちは決まったかな? 私達に協力するか、それとも否か?」

「…………」

 なおも、答えを促すリストマッティに対し、ダンは、すぐに返事をしない。
 まずエリンを見た。

 ……エリンは、ダンを熱く見つめていた。
 強い、意思の籠った目だ。

 答えは、イエスだと。
 
 ただひとり生き残った……
 誇り高きデックアールヴの王女として……

 父を含め、無残な死を遂げた一族の為に……
 課せられた、これからの大きな使命、重い役割を認識し、絶対に果たそうとする意思だ。

 ダンは軽く頷くと、今度はヴィリヤを見た。

 しかし……
 エリンとは対照的に、ヴィリヤは全く元気なく、俯いたままであった。
 顔色も、ひどく青ざめていた……
 
 何故ならば、これまでの常識全てが覆された。
 否、粉々に打ち砕かれたから。

 更に……
 遥かに、遠い先祖が犯したとはいえ……
 取り返しのつかない大罪を、一身に背負った気分なのだろう。
 他にも、様々な感情が加わり、ヴィリヤの心の中で、複雑に混在しているに違いない。

 ダンは唇を噛み締め、真剣な表情のまま、軽く息を吐いた。
 そして、きっぱりと言い放つ。

「リストマッティ、貴方の話は理解した。これから、貴方達が成し遂げんとする事はとても意義があり、素晴らしい事だ」

 ダンの言葉を聞き、リストマッティの顔に喜色が表れる。

「おお、ダン殿、ありがとう! で、では?」

「ああ、俺は多分、貴方に対し、前向きな答えを戻せるだろう……但し、これからもう少しだけ……考える時間をくれないか」

「うむ! 構わない、そちらの都合が許す限り、じっくりと考えてくれ」

 しっかりとした、手ごたえを感じたのだろう。
 リストマッティは、何度も頷いていた。
 そして熟考したいという、ダンの言う事は尤もであるとも。
 
 妻と共に、改めて、考え、話す。
 つまりエリン、ヴィリヤと共に……
 という考えに至った。

 そう、リストマッティは、受け取ったのだ。

 時間の猶予を貰ったダンは、エリンへ了解を求める。

「ありがとう、リストマッティ。じゃあ、エリン、良いな?」

「はいっ!」

 エリンは、元気良く、OKの返事をした。
 愛する『想い人』が、自分の決意と覚悟を、すぐ理解し、受け止めてくれたと分かるから。
 歓びの声で、はつらつと返事をしたのである。

 次に、ダンはヴィリヤへ問う。
 当然、本名では呼ばない。

「……ゲルダも……構わないな?」

「…………」

 だが……
 ヴィリヤは、俯いたまま、無言であった。
 ダンは、黙って立ち上がると、ヴィリヤの傍へ行き、

「ほら!」

 と、声をかけ、小さな頭を「ポン」と叩いた。
 優しく、そっと、柔らかく。

「あう!?」

 美しい金髪の頭を揺らし、可愛く悲鳴をあげるヴィリヤ。
 どうやら、ダンが近付いたのさえ、全く認識していなかったようだ。

 ダンとエリンは、ヴィリヤを見て、辛そうに小さく息を吐いた。
 まるで、ヴィリヤの気持ちを受け止めるかのように。

 何故ならば、ダンには分かる。
 エリンにも……良く分かるのだ。
 無言のヴィリヤから、彼女の魂から……
 凄まじい、悲しみの波動が伝わって来る事を。
 
 リョースアールヴの……
 それも宗家アスピヴァーラに生まれた私は……
 先祖の犯した罪を、どう詫び、どう償えば良いの?
 
 誰か、教えて!
 ねぇ、助けて!
 という、自己嫌悪に染まった魂の叫びといえる波動が……

 ダンは、時間は勿論、家族だけになれる場所が必要だと実感する。

「申し訳ないが……リストマッティ、この子達を少し休ませたい。どこか、落ち着ける部屋を貸してくれないか?」

「ああ、構わない」

 ダンに頼まれ、リストマッティは即座に快諾し、にっこり笑った。
 そして、配下のラッセに指示を出し、ダン達を案内させたのである。
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