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第23話「大丈夫だ。俺が必ずお前を守ってやる」
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「す、すびばせん~~!」
涙目で謝るフェルナンさんを残し、まず俺とシャルロットさんが、『散歩』に出発。
続いて、時間差でバスチアンさん、セレスさんも、
俺たちのお目付役として出発した。
ここでつっこみがあるやもしれない。
「俺とシャルロットさんは先に出発したのに、バスチアンさん、セレスさんが何故続いているのか分かるんだよ?」という突っ込みだ。
え?
おめえ、バカじゃね?
バスチアンさんが出発するって言ったからに決まっているだろ?
という当たり前の答えはスルー。
念の為、俺はバスチアンさんの言葉をうのみにはしていない。
クラン『シーニュ』で何度も騙されているからね。
言葉巧みに乗せられ、迷宮の奥に置き去りにされた事は一生忘れない。
グランシャリオはそこまで外道クランじゃないだろうが、
現在、研修中だし、引っ掛けを喰らう可能性はあるもの。
なので俺は自身で確認した。
俺の勘働き――索敵で、200m後方からついて来るバスチアンさん、セレスさんの『気配』をはっきりと捉えたのだ。
よし!
と大きく頷く俺。
さてさて!
そして今の俺の現状はといえば……
深い森林の中を、ストロベリーブロンドの美少女魔法使いシャルロットさんと、
至近距離で歩いてる。
否、単に至近距離というだけではない。
シャルロットさんにがっつり抱きつかれてるのだ!!
何いい!!??
がっつり抱きつかれてるだとおおお!!??
おいおい!
てめえ!
勤務先で研修中なのに、可愛い年上女子とラブラブデートかよ!
ふざけるな!
不謹慎だ!
イチャイチャしやがって!
いい加減にしろ!
もげろ!
リア充爆発しろ!
と、一方的にフルボッコされそうな状態。
まあ、確かに平時ならこんなに嬉しく幸せな事はない。
密着するシャルロットさんからは、甘いシャンプーと石鹼の香りはするし。
俺の心はときめき、熱くなってしまう。
超可愛い女子に抱きつかれ、「うらやましいだろ!」と
性悪冷血女ミランダの前で見せつけたいくらいだ。
ざまあ~~って。
しかし、現実は違う。
ラブラブで抱きつかれているわけではない。
ぶるぶる震えるシャルロットさんは、魔物や肉食獣の襲撃に怯え、
「怖いよ~、怖いよ~」と俺に抱きつき離れないのだ。
正直、俺は困ったし、参った。
幸いまだ敵の気配はないが、これでは戦えないから。
俺は『解放』を試みる事にした。
「あの~、シャルロットさん」
「怖いよ~、怖いよ~」
「離れてくれないと、俺、いざという時、戦えないんですが……」
「怖いよ~、怖いよ~」
「お願いです、いいかげん離れてくださいよ」
「怖いよ~、怖いよ~」
こんな会話が更に数回繰り返された。
うむむむむ……らちが明かない。
仕方ない。
強行突破だ。
シャルロットさんからは、パワハラと言われるかもしれないリスクはあるけど。
俺はしがみつくシャルロットさんをぎゅ!と抱きしめた後、
どすのきいた声で、「シャルロット!」と呼び捨てにしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
実家にいた頃、家族、友人から良く言われていた。
普段温厚なお前は、いったん怒れば、実に怖いと。
そう、言われた通り、俺は滅多に怒らない。
声を荒げる事も珍しい。
かあっと熱くなったり、興奮する事もあまりない。
だからこそ、怒った時のギャップが凄くありすぎると、誰もから言われていたのだ。
この傾向は、俺を知らない奴にはあまり通用しない。
だが、ある程度やりとりし、俺の人となりを知ったシャルロットさんならば、
充分に通用すると踏んだのである。
案の定。
どすのきいた声で呼び捨てにされたシャルロットさんは、俺の腕の中で、
びくっと震えた。
それは今まで、魔物、肉食獣襲撃の恐怖で、
ガタガタぶるぶる震えていたものとは異質の反応だった。
しかし、シャルロットさんは、俺の胸に顔をうずめたままだ。
いつもの俺なら、ごめん、失礼しますとか言うが、
いきなり、うつむいた彼女の顔の上部に手をあて、
ほんの少しだけ力を入れ、上げさせた。
厳しい表情をした俺と、恐怖にゆがんだ表情のシャルロットさんの目が合った。
彼女の眼は、魔物、肉食獣どもへの恐怖で涙がにじんでいる。
ふうと息を吐いた俺は再びシャルロットさんの名を呼ぶ。
当然、呼び捨てで。
シャルロットさんは、16歳の俺よりふたつだけ年上の18歳だが、
緊急事態だから致し方ない。
「シャルロット」
「は、は、はい……」
か細く、かすれた声で、噛みながら、シャルロットさんは返事をした。
ここで俺はにっこり笑う。
そして短く言う。
シンプルに。
「落ち着け」
「…………………………」
言葉を戻さず、無言のシャルロットさん。
俺は更に言う。
まるで年上彼氏のように。
「大丈夫だ。俺が必ずお前を守ってやる」
「…………………………」
「必ず守る! 約束しよう!」
「…………………………」
「だから、シャルロット。お前も俺に力を貸してくれ」
「…………………………」
「しっかりしろ! 自信を持て!」
「…………………………」
「お前は才能がある、素敵な女子魔法使いだ」
「…………………………」
「だから、俺とお前、力を合わせ、この研修をしっかり乗り切ろう」
「…………………………」
……いつの間にか、シャルロットさんの震えは止まっていた。
真剣な表情で俺を見ていた。
いつもと違いすぎる俺の迫力に気圧され、
すっかり取り込まれてしまったのだろう。
「軽く深呼吸だ」
俺が落ち着くように促すと、
シャルロットさんは、す~は~、す~は~と数回深呼吸。
そして、にっこり笑い、
「はい!」
と晴れやかな笑顔を見せてくれたのである。
涙目で謝るフェルナンさんを残し、まず俺とシャルロットさんが、『散歩』に出発。
続いて、時間差でバスチアンさん、セレスさんも、
俺たちのお目付役として出発した。
ここでつっこみがあるやもしれない。
「俺とシャルロットさんは先に出発したのに、バスチアンさん、セレスさんが何故続いているのか分かるんだよ?」という突っ込みだ。
え?
おめえ、バカじゃね?
バスチアンさんが出発するって言ったからに決まっているだろ?
という当たり前の答えはスルー。
念の為、俺はバスチアンさんの言葉をうのみにはしていない。
クラン『シーニュ』で何度も騙されているからね。
言葉巧みに乗せられ、迷宮の奥に置き去りにされた事は一生忘れない。
グランシャリオはそこまで外道クランじゃないだろうが、
現在、研修中だし、引っ掛けを喰らう可能性はあるもの。
なので俺は自身で確認した。
俺の勘働き――索敵で、200m後方からついて来るバスチアンさん、セレスさんの『気配』をはっきりと捉えたのだ。
よし!
と大きく頷く俺。
さてさて!
そして今の俺の現状はといえば……
深い森林の中を、ストロベリーブロンドの美少女魔法使いシャルロットさんと、
至近距離で歩いてる。
否、単に至近距離というだけではない。
シャルロットさんにがっつり抱きつかれてるのだ!!
何いい!!??
がっつり抱きつかれてるだとおおお!!??
おいおい!
てめえ!
勤務先で研修中なのに、可愛い年上女子とラブラブデートかよ!
ふざけるな!
不謹慎だ!
イチャイチャしやがって!
いい加減にしろ!
もげろ!
リア充爆発しろ!
と、一方的にフルボッコされそうな状態。
まあ、確かに平時ならこんなに嬉しく幸せな事はない。
密着するシャルロットさんからは、甘いシャンプーと石鹼の香りはするし。
俺の心はときめき、熱くなってしまう。
超可愛い女子に抱きつかれ、「うらやましいだろ!」と
性悪冷血女ミランダの前で見せつけたいくらいだ。
ざまあ~~って。
しかし、現実は違う。
ラブラブで抱きつかれているわけではない。
ぶるぶる震えるシャルロットさんは、魔物や肉食獣の襲撃に怯え、
「怖いよ~、怖いよ~」と俺に抱きつき離れないのだ。
正直、俺は困ったし、参った。
幸いまだ敵の気配はないが、これでは戦えないから。
俺は『解放』を試みる事にした。
「あの~、シャルロットさん」
「怖いよ~、怖いよ~」
「離れてくれないと、俺、いざという時、戦えないんですが……」
「怖いよ~、怖いよ~」
「お願いです、いいかげん離れてくださいよ」
「怖いよ~、怖いよ~」
こんな会話が更に数回繰り返された。
うむむむむ……らちが明かない。
仕方ない。
強行突破だ。
シャルロットさんからは、パワハラと言われるかもしれないリスクはあるけど。
俺はしがみつくシャルロットさんをぎゅ!と抱きしめた後、
どすのきいた声で、「シャルロット!」と呼び捨てにしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
実家にいた頃、家族、友人から良く言われていた。
普段温厚なお前は、いったん怒れば、実に怖いと。
そう、言われた通り、俺は滅多に怒らない。
声を荒げる事も珍しい。
かあっと熱くなったり、興奮する事もあまりない。
だからこそ、怒った時のギャップが凄くありすぎると、誰もから言われていたのだ。
この傾向は、俺を知らない奴にはあまり通用しない。
だが、ある程度やりとりし、俺の人となりを知ったシャルロットさんならば、
充分に通用すると踏んだのである。
案の定。
どすのきいた声で呼び捨てにされたシャルロットさんは、俺の腕の中で、
びくっと震えた。
それは今まで、魔物、肉食獣襲撃の恐怖で、
ガタガタぶるぶる震えていたものとは異質の反応だった。
しかし、シャルロットさんは、俺の胸に顔をうずめたままだ。
いつもの俺なら、ごめん、失礼しますとか言うが、
いきなり、うつむいた彼女の顔の上部に手をあて、
ほんの少しだけ力を入れ、上げさせた。
厳しい表情をした俺と、恐怖にゆがんだ表情のシャルロットさんの目が合った。
彼女の眼は、魔物、肉食獣どもへの恐怖で涙がにじんでいる。
ふうと息を吐いた俺は再びシャルロットさんの名を呼ぶ。
当然、呼び捨てで。
シャルロットさんは、16歳の俺よりふたつだけ年上の18歳だが、
緊急事態だから致し方ない。
「シャルロット」
「は、は、はい……」
か細く、かすれた声で、噛みながら、シャルロットさんは返事をした。
ここで俺はにっこり笑う。
そして短く言う。
シンプルに。
「落ち着け」
「…………………………」
言葉を戻さず、無言のシャルロットさん。
俺は更に言う。
まるで年上彼氏のように。
「大丈夫だ。俺が必ずお前を守ってやる」
「…………………………」
「必ず守る! 約束しよう!」
「…………………………」
「だから、シャルロット。お前も俺に力を貸してくれ」
「…………………………」
「しっかりしろ! 自信を持て!」
「…………………………」
「お前は才能がある、素敵な女子魔法使いだ」
「…………………………」
「だから、俺とお前、力を合わせ、この研修をしっかり乗り切ろう」
「…………………………」
……いつの間にか、シャルロットさんの震えは止まっていた。
真剣な表情で俺を見ていた。
いつもと違いすぎる俺の迫力に気圧され、
すっかり取り込まれてしまったのだろう。
「軽く深呼吸だ」
俺が落ち着くように促すと、
シャルロットさんは、す~は~、す~は~と数回深呼吸。
そして、にっこり笑い、
「はい!」
と晴れやかな笑顔を見せてくれたのである。
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