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第25話「これから奴らを倒す。お前と俺の為に戦うぞ」
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敵襲を察知した俺。
これから相まみえる敵がオークなのを伝えると、凄く動揺するシャルロットさん。
すがるような眼で見つめて来る。
オークは人間の女子を襲い、おぞましい行為を働く。
女子の敵として忌み嫌われる魔物だ。
そういった事も思い浮かべたのだろう。
やばいシーンが、シャルロットさんの恐怖に拍車をかけているに違いない。
ここは俺が安心させてやらねばならないだろう。
方法は決まっている。
成功例も承知している。
シャルロットさんは、強くて頼もしい男子が好きなのだと。
基本は、先ほど話した事を繰り返す事に。
つまりは、刷り込みだ。
呼び方も、同じく呼び捨てバージョンである。
俺もシャルロットさんをじっと見つめ、言う。
「シャルロット」
「は、はい」
「落ち着け、大丈夫だ。さっき俺が約束したろう?」
「は、はいっ」
噛みながらも返事をしたシャルロットさんは、「こくん」と小さく頷く。
どうやら、少しずつ緊張がほぐれて来たようだ。
よし!
何とか、なりそうだな!
手ごたえを感じ、うんうんと頷き、俺は更に話を続ける。
敵に関して、具体的な情報を告げる事にした。
「シャルロット。敵はオーク5体だ。距離は約300m弱。大した事はない。俺は奴らと何度も戦っているし、楽勝だ!」
大した事はない。
奴らと何度も戦っているし、楽勝だ!
という力強い俺の言葉を聞き、シャルロットさんは大いに励まされたらしい。
彼女の瞳には、徐々に気力が甦って来る。
「は、はい!」
「俺が突っ込んでオークどもの盾となり、必ずお前を守ってやる。奴らを絶対に近づけさせはしない」
遂にシャルロットさんの表情から曇りが消えた。
笑みが浮かび、声にも張りが戻って来た。
「は、はい! ありがとうございます!」
「俺が戦う時、お前は魔法杖を構え、スタンバイしておけ。行けそうか?」
貸与された魔法杖をぎゅ!と握り、シャルロットさんは俺を見つめる。
瞳には、完全に気力が甦っていた。
「はい! 行けます! 問題ありません!」
「よしっ! 良い返事だ。俺がついてる。気持ちをしっかり持つんだぞ。……さっきみたいに深呼吸してみろ」
「はい! 深呼吸します!」
す~は~。
す~は~。
深呼吸するシャルロットさんへ、俺は言う。
「良いか、隙があったら、俺が合図する。その時は、援護してくれ。お前の魔法杖で風弾を、オークどもへ思い切りぶち込んでやるんだ」
「了解です!」
大きく頷いたシャルロットさんは俺を見て、嬉しそうに、
「にこにこっ」と笑ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いきなりオーク5体が現れ、シャルロットさんが驚かないよう、
俺は気を遣った。
勘働きで、オークどもの位置は、ずっと把握している事を伝え、
移動するカウントダウンを指で示したのだ。
300mから始まり、指立て3本。
200mで指立て2本。
100mで指立て、ひとさし指1本。
シャルロットさんは俺の指を凝視。
減るに従い、緊張の度合いを増して行った。
またオークどもも、人間の気配を察していたらしく、
忍び足でゆっくり近寄っていたのも幸いした。
シャルロットさんに、オークどもが迫り来る恐怖はあったかもしれない。
だが、充分な時間と俺が居るというケアで、シャルロットさんは、
恐怖に囚われず、オークどもと相まみえる事が出来たようである。
しかし、オークは醜悪な魔物だ。
加えて、シャルロットさんに対し、おぞましい本能の波動を向けて来たので、
彼女が怯え、身体を固くする波動が伝わって来た。
なので、俺は後ろ手に右手を伸ばし、シャルロットさんをガードするが如く、示した。
少しでも、勇気づけようと、安心して貰おうと。
そして俺は、シャルロットさんへ背を向けたまま言う。
「大丈夫か? シャルロット」
「は、はい」
シャルロットさんは噛みながらも返事をした。
何とか大丈夫そうだが、ここでフォロー。
「落ち着かないようなら、深呼吸だ」
「はい!」
す~は~、す~は~、す~は~、す~は~、
というシャルロットさんの息遣いを聞きながら俺は言う。
「これから奴らを倒す。お前と俺の為に戦うぞ」
おお、「お前と俺の為に戦うぞ」って……
つい、べたな言葉を発してしまった。
確か、昔読んだ冒険小説で、勇者が言った決めセリフだぞ。
しかし、シャルロットさんは、俺の決めセリフを真剣に聞いていた。
とても嬉しかったらしく、返事も3オクターブくらい上がる。
「はい!!!」
内心「やっちまったぜ」と思いながら、俺は話を続ける。
「奴らは、俺たちがクラングランシャリオと本契約する為の餌だ。単なる経験値に過ぎない」
「はい!」
「行くぞ!」
「ご無事を!」
「おう!」
俺は大きな声でシャルロットさんへ返事を戻し、思い切り大地を蹴って、
走り出したのである。
これから相まみえる敵がオークなのを伝えると、凄く動揺するシャルロットさん。
すがるような眼で見つめて来る。
オークは人間の女子を襲い、おぞましい行為を働く。
女子の敵として忌み嫌われる魔物だ。
そういった事も思い浮かべたのだろう。
やばいシーンが、シャルロットさんの恐怖に拍車をかけているに違いない。
ここは俺が安心させてやらねばならないだろう。
方法は決まっている。
成功例も承知している。
シャルロットさんは、強くて頼もしい男子が好きなのだと。
基本は、先ほど話した事を繰り返す事に。
つまりは、刷り込みだ。
呼び方も、同じく呼び捨てバージョンである。
俺もシャルロットさんをじっと見つめ、言う。
「シャルロット」
「は、はい」
「落ち着け、大丈夫だ。さっき俺が約束したろう?」
「は、はいっ」
噛みながらも返事をしたシャルロットさんは、「こくん」と小さく頷く。
どうやら、少しずつ緊張がほぐれて来たようだ。
よし!
何とか、なりそうだな!
手ごたえを感じ、うんうんと頷き、俺は更に話を続ける。
敵に関して、具体的な情報を告げる事にした。
「シャルロット。敵はオーク5体だ。距離は約300m弱。大した事はない。俺は奴らと何度も戦っているし、楽勝だ!」
大した事はない。
奴らと何度も戦っているし、楽勝だ!
という力強い俺の言葉を聞き、シャルロットさんは大いに励まされたらしい。
彼女の瞳には、徐々に気力が甦って来る。
「は、はい!」
「俺が突っ込んでオークどもの盾となり、必ずお前を守ってやる。奴らを絶対に近づけさせはしない」
遂にシャルロットさんの表情から曇りが消えた。
笑みが浮かび、声にも張りが戻って来た。
「は、はい! ありがとうございます!」
「俺が戦う時、お前は魔法杖を構え、スタンバイしておけ。行けそうか?」
貸与された魔法杖をぎゅ!と握り、シャルロットさんは俺を見つめる。
瞳には、完全に気力が甦っていた。
「はい! 行けます! 問題ありません!」
「よしっ! 良い返事だ。俺がついてる。気持ちをしっかり持つんだぞ。……さっきみたいに深呼吸してみろ」
「はい! 深呼吸します!」
す~は~。
す~は~。
深呼吸するシャルロットさんへ、俺は言う。
「良いか、隙があったら、俺が合図する。その時は、援護してくれ。お前の魔法杖で風弾を、オークどもへ思い切りぶち込んでやるんだ」
「了解です!」
大きく頷いたシャルロットさんは俺を見て、嬉しそうに、
「にこにこっ」と笑ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いきなりオーク5体が現れ、シャルロットさんが驚かないよう、
俺は気を遣った。
勘働きで、オークどもの位置は、ずっと把握している事を伝え、
移動するカウントダウンを指で示したのだ。
300mから始まり、指立て3本。
200mで指立て2本。
100mで指立て、ひとさし指1本。
シャルロットさんは俺の指を凝視。
減るに従い、緊張の度合いを増して行った。
またオークどもも、人間の気配を察していたらしく、
忍び足でゆっくり近寄っていたのも幸いした。
シャルロットさんに、オークどもが迫り来る恐怖はあったかもしれない。
だが、充分な時間と俺が居るというケアで、シャルロットさんは、
恐怖に囚われず、オークどもと相まみえる事が出来たようである。
しかし、オークは醜悪な魔物だ。
加えて、シャルロットさんに対し、おぞましい本能の波動を向けて来たので、
彼女が怯え、身体を固くする波動が伝わって来た。
なので、俺は後ろ手に右手を伸ばし、シャルロットさんをガードするが如く、示した。
少しでも、勇気づけようと、安心して貰おうと。
そして俺は、シャルロットさんへ背を向けたまま言う。
「大丈夫か? シャルロット」
「は、はい」
シャルロットさんは噛みながらも返事をした。
何とか大丈夫そうだが、ここでフォロー。
「落ち着かないようなら、深呼吸だ」
「はい!」
す~は~、す~は~、す~は~、す~は~、
というシャルロットさんの息遣いを聞きながら俺は言う。
「これから奴らを倒す。お前と俺の為に戦うぞ」
おお、「お前と俺の為に戦うぞ」って……
つい、べたな言葉を発してしまった。
確か、昔読んだ冒険小説で、勇者が言った決めセリフだぞ。
しかし、シャルロットさんは、俺の決めセリフを真剣に聞いていた。
とても嬉しかったらしく、返事も3オクターブくらい上がる。
「はい!!!」
内心「やっちまったぜ」と思いながら、俺は話を続ける。
「奴らは、俺たちがクラングランシャリオと本契約する為の餌だ。単なる経験値に過ぎない」
「はい!」
「行くぞ!」
「ご無事を!」
「おう!」
俺は大きな声でシャルロットさんへ返事を戻し、思い切り大地を蹴って、
走り出したのである。
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