上 下
82 / 176

第82話「満足のいく回答を得て、俺は自然に頷いた」

しおりを挟む
俺の目の前で立ち尽くしていたオークども10体全てが粉々になり、
砕け散ってしまった。

「こ、こっ、これは!!??」

さすがに俺も驚いた。
いくら目力を超最大MAXにしたからとはいえ、にらみつけただけで、
オークをガチガチに硬直させ、更に粉砕までしてしまうとは!!

我ながら凄すぎる!!

いや!!
にらみつけただけで、粉砕とか、怖ろしすぎるだろう!!

果たして、ローラン様の評価はいかに!?
どう見てくれるのだろうか?

俺は振り返り、背後のローラン様を見る。

え?

ローラン様、無言で大きく目を見開いて、固まってる?

「あ、あのローラン様」

「………………………………」

反応がない……
まさか、俺の威圧が誤爆したとか?

「ローラン様!!」

俺が少し強めに呼びかけると、ローラン様は、ハッと我に返り、

「お、おお! エルヴェ君」

と、言った。

ホッと、安堵した俺は尋ねる。

「大丈夫ですか? ローラン様」

「あ、ああ……大丈夫だ。君の威圧を目の当たりにして、つい茫然自失となってしまったよ、面目ない」

え?
俺の威圧を見て、ローラン様が呆然自失?
面目ないって……自ら認めちゃったの?

「あ、あの少し、お聞きしてもよろしいですか?」

「う、うむ、構わないよ」

「ローラン様のお言葉をお聞きして、俺の挑発と威圧が成功したのは認識し、理解もしました」

「ああ、そうだな。文句なしに大成功だよ」

「はい、それは良いのですが、訳が分からないです。オーク動けなくなっただけではなく、粉々となってしまいましたが……」

「うむ! それだ! エルヴェ君の威圧は見事だ! 見事すぎる! 私の想定の遥か上を行った。本当に想定外なんだよ」

「見事すぎる……想定の遥か上……完全に想定外……なんですか?」

「うむ、エルヴェ君は、眼光で敵をあっという間に石化する、伝説の魔物を知っているかな?」

「はい、知っています。子供の頃、神話で読みました。確か退治され、神の盾にデスマスクを埋め込まれたとか……」

補足しよう。

俺が読んだ神話とは……
遥か古代にとある神の巫女が居た。
巫女は好色な邪神に騙され、神聖な女神の神殿で愛された。

神殿を穢された女神は大いに怒り、怖ろしい呪いをかけ、
巫女の頭髪を蛇の群れに変え、魔物としてしまった。

以来、魔物となった巫女は、正気を失い……
退治されるまで、眼光で数多の者を石化し、殺したという……哀れな話である。

ローラン様は更に言う。

「どうやら……エルヴェ君の威圧はな、敵を行動不能にするだけではなく、石化の効果もあるようだ」

「え!? せ、石化……ですか?」

「うむ、格上の相手へ、威圧は通じにくいから、過信は禁物だろうが、君の威圧は、とんでもない支援スキルとなるぞ。自身にも仲間にもな」

「とんでもない支援スキルになる……俺自身にも、仲間にも……」

「ああ、後は制御力を鍛え、力加減を覚え、自由自在に使えればいう事なしだ」

おお、確かに!
やり過ぎて、必要ないのに石化しまくるのは、まずい……からな。

「さあ、エルヴェ君、引き続き、制御力……コントロールに重きを置き、挑発と威圧の訓練だ。行こうか」

「はい!」

ローラン様に促された俺は、挑発と威圧の訓練を続けたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それから……
先頭に立った俺は、挑発と威圧の訓練を続けた。

オークを粉砕した後は、ゴブリンが20体、更にゴブリンが10体、
その後には、オークが続けて10体、15体、20体と出現した。

訓練をするには、充分な数である。

趣旨として制御力の訓練なので、俺は目力を加減しつつ挑発と威圧を使う。

最初は、中々上手く行かなかったが……
だんだんと加減が出来るようになった。

それに伴い、魔力消費も効率的に出来るようにもなった。

具体的に言えば、挑発は、単に怒って向かって来るだけから、
まともな判断が出来ず半狂乱になるまで……

そして威圧は、ローラン様のように地へ伏せされるものから、
限りなく石化に近くするまで……
自由自在に使い分けられるようになったのだ。

ほぼ完全に制御が出来ると、ローラン様から合格点を貰った後は、
行使においての注意事項を教授された。

自分より格上の相手には効きにくい事。
また威圧の有効時間も相手によってバラつきが出る事。

おいおいおいおい!

相手の力量を見破るって……どうすれば?
何をすれば分かる? と、思ったが、すぐに気づいた。

それこそ!
俺の得意で特異なスキル、勘働きで見抜けば良いと。

そして効果も、有効時間も、ベストパフォーマンスが出せるよう、
判断し、調整すれば良いのだ。

満足のいく回答を得て、俺は自然に頷いた。

そんな俺を見たローラン様は、

「うむ、いろいろと納得したようだな。良い事だ」

と、にっこり。

心の底から、嬉しそうに微笑んだのである。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

時に厳しく時に優しく~お仕置とご褒美~

BL / 連載中 24h.ポイント:205pt お気に入り:27

7人の勇者!勇者は仲間を選びたい!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:31

推しが我が家にきたんですけどドッキリですか?

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:31

一生俺に甘えとけ

BL / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:101

思い出屋〜あなたの願いを叶えます〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...