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第166話「これからあなた達には、戦いの訓練や魔法の勉強だけでなく、クランの運営もしっかり学んで貰うから……よろしくね!」

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セレスさんと相談した結果……
回復魔法を、週に2回、教えて貰える事となった。
それも1回につき、じっくり2時間も時間をかけて。
王国ナンバーワンたる回復魔法の先生に、直々に教えて貰うのだから嬉しい限りだ。

教授の段取りなど、話がまとまった後、
セレスさんへ尋ねたかったのは、今後の予定。

グランシャリオからは、しばらく業務連絡がない。

多分、ローラン様がアングラ―ド侯爵の件を処理している最中だと思われるが、
どうなっていますか、いつ頃終わりますかなど、こちらからは触れられない。

この件が決着したら、次の指示があるに違いないが、
俺とシャルロットは、その間、どのように待てば良いのか、加減を知らないのだ。

現在のように、修行したり、用事を足したりで、ただ待っていれば良いのかを、
確認したかったのである。

「ええっと、セレスさん」

「なあに?」

「ローラン様からは、先日の打合せ以降、新たなご指示を頂いていないのですが、今回セレスさんへお願いしたように、魔法の修業をしたり、用事を足したりしながらのウェイティングで構いませんか?」

俺の質問を聞くと、セレスさんは柔らかく微笑み、

「ええ、良いと思う。あなた達の話を聞く限り、とても有意義に過ごしていると感じるし、回復魔法の修行で、私に弟子入りしているとお聞きになったら、ローラン様も凄くお喜びになると思うわ」

「成る程ですね」

「もうしばらくしたら、集合がかかり、全員で次の依頼遂行の打合せを行うと思う。それまで常在戦場の心構えで、力をたくわえ、牙を研ぎながら待てば良いと思うの」

「常在戦場の心構えで、力をたくわえ、牙を研ぐ……ですか」

「ええ、あなた達が召喚魔法で従士を得たり、私について回復魔法の修行をする事は確実にグランシャリオの戦力アップにつながっているもの」

「セレスさんにそう言って貰えると、無駄に過ごしていないなと感じ、嬉しくなります」

俺はそう言い、シャルロットを顔を見合わせ、微笑む。

そんな俺たちを見て、セレスさんは、いたずらっぽく笑う。

「ドラフト指名されたクランの同期として知り合い、研修で仲良くなり付き合い始め、同棲も始めた。クランの契約金も入ったし、お金には余裕がある。こういう状況なら楽しくて、遊び呆ける可能性は大いにあるわ」

「ですか?」

「ええ、彼氏彼女しか見えなくなり、わき目もふらず恋愛まっしぐら、頭の中がお花畑状態になる人も居るから」

「成る程ですね」

「でも、あなた達は全く違う。愛し愛されながら、お互いを尊重し、認め合い、相手にふさわしいよう、自身を高めたいと思っている。その努力をしながら、適度に息抜きして、恋愛を楽しみつつ、将来の事もしっかり考えている」

「ええっと、褒めすぎでは?」

「いいえ、褒めすぎじゃない。あなた達はバランス感覚に優れていて、人生を楽しもうとしているのよ」

セレスさんは、そう言うと、俺とシャルロットを交互に見て、

「素敵なパートナーに巡り合って、本当に良かったわね」

と再び、微笑んだのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後、セレスさんとしばし雑談。

様々な話題で盛り上がる。

口笛亭におけるバカ冒険者どもとの顛末、料理の話にも、
セレスさんの食いつきは良かったが、特に興味津々だったのは、
購入した俺たちの新居の話。

場所、雰囲気と間取り、置いた家具、調度品などの話を楽しそうに聞いていた。

結果、最初の授業は俺たちの新居で行う事となったのである。

善は急げと早速、具体的なスケジュール調整。

日時は、すぐに決まった。

そんな話をしながら、セレスさん、

「ああ、話すのを忘れていたわ……ローラン様の最終承認は得るけれど、今回あなた達の購入した新居、補助金が出るから」

「え? 補助金? マジですか?」

「マジよ、大マジ。クランの規定で購入した金額の1割。そして別に毎月の住宅費として、ひとりにつき、金貨50枚が支払われるわ」

うわ!
何それ!
すっごく嬉しい。

購入した金額の1割なら、金貨500枚か!

そして俺とシャルロット合わせて、毎月金貨100枚が貰えれば、
維持費、雑費もまかなえる。

「但し、補助金はふたりが住む家のみに適用される。投資用に購入した家には支払わないわ」

うん、それは納得。

住宅費だから、あくまでも、俺たちが住む家にのみ適用されるという事だ。
そうしないと、きりがない。

「ウチのクラン、グランシャリオはね。福利厚生もしっかりしてるの。依頼を完遂し、ギルドから受け取った報奨金を分配して、はい、終わりというわけではないのよ」

セレスさんはきっぱりと言い、

「これからあなた達には、戦いの訓練や魔法の勉強だけでなく、クランの運営もしっかり学んで貰うから……よろしくね!」

と、笑顔で念押しされたのである。
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