気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!

東導 号

文字の大きさ
25 / 145

第25話「仲直り」

しおりを挟む
ミルヴァに礼と辞去の意を告げ、ディーノはマスター室を後にした。
持参したガストンからの紹介状と引き換えという形で、
ポケットの中には作り立てのギルド発行『ランクC所属登録証』がある。

こうして……
先ほどのミルヴァの言葉通り、ディーノは晴れてギルドの正式な所属となったのだ。

この所属登録証は『王都の市民証』も兼ねている。
なので、衛兵から「おい、お前、どこの何者だ?」と職務質問をされても、
しっかりと所属先及び身元を明かし、不審者ではない事を証明出来る。

一緒にギルドマスター室を出たサブマスターのブランシュは、
魔導昇降機でディーノを1階フロアまで送ってくれた。
そして別れ際に改めて「何があっても生き抜くように」と励ましてくれた。

ディーノはブランシュにも礼を言い、お辞儀をすると……
今度は受け付けカウンターへ近付いた。

受付けには来訪の時同様、ネリーが居た。
しかし彼女は顔を伏せ、ディーノと視線を合わそうとしない。
ディーノが魔導昇降機から降りて来るのを見ていたので、存在は認識しているはずだ。

しかし、ディーノは全く気にせず、おもむろにカウンターへ近付いた。
相手の名を呼びかける。

「ネリーさん」

「…………」

「ごめんなさい、俺の紹介状を対応して頂いた『とばっちり』で、ネリーさんにはいろいろご迷惑をおかけしました」

「!」

ディーノが謝罪した瞬間。
ネリーは「びくっ」と身体を震わせた。

けして自分の過失ではないのだが……
何故かディーノは申しわけない気持ちになる。
 
ディーノは先日までルサージュ家へ仕えていた。
厳しかった『宮仕え』の記憶が甦って来る。

理不尽に怒られた経験が数多ある。
というか、ステファニーからは毎日こじつけともいえる、不可思議な理由で激しく叱責されていた。

謂れのない理由で一方的に責められたネリーは理不尽さを感じ、
得も言われぬ不安を抱えていたはずだ。
 
だったら自分が謝罪し、声をかけるだけでも違うはず……
ネリーも少しは気分が晴れると考えたのだ。

「俺、この度、正式にギルド所属になったんです。今後はネリーさんにもお世話になるから宜しくお願いします」

「…………」

「あ、これ以上心配する事は何もないですよ。ネリーさんは全然悪くないですから」

「…………」

「マスターの機嫌はとても良かったし、俺が待たされたのは単なる連絡ミス、つまり手違いだって、分かっていたみたいですからね」

「…………」

「と、いう事でこんな未熟者ですが、改めて! 明日以降、ランクCの新米冒険者ディーノ・ジェラルディを宜しくお願い致します」

ネリーはずっと視線を合わさず、無言であったが……
ディーノは構わず、伝えるべき内容をしっかり伝え、深く頭を下げた。

「じゃあ……失礼します」

最後に辞去を告げたディーノはきびすを返し、受け付けカウンターから去ろうとした。

と、その時。

「ディーノさん! ま、待って!」

挨拶をし、去ろうとしたディーノを、慌てて呼び止める声がした。
すぐ分かる。
これはネリーの声だ。

「え?」

「わ、私こそ、ご、ごめんなさいっ!」

振り返ったディーノの視界へ入ったのは、
辛そうに顔を歪め、目に涙をいっぱい溜めた、ネリーの泣き顔であった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

1時間後……

ネリーと完全に和解したディーノは、冒険者ギルドを出て、英雄亭へ向かっていた。
ディーノは泣きじゃくるネリーに対し、
「貴女は、真面目にちゃんと仕事をしただけだ」そう優しく慰めると……
彼女はようやく笑顔を見せ、ディーノをしっかりフォローする事を宣言してくれた。

さてさて!
試験等に時間が結構かかってしまったので、もう既に夕方である。
ディーノが見やれば……
太陽が真赤に焼けた西の空から、ゆっくりと地平線へ向かっている。
 
今日は、またまた『良き出会い』があった。
ミルヴァ、ブランシュ、そしてネリー……
3人の笑顔を思い出し、ディーノはとても嬉しくなる。

全員、ディーノを熱く激励してくれた。
逆に、もしも彼女達が困ったら絶対力になりたいと思う。

唐突に……
亡きロランの言葉がディーノの心に甦って来る。

『これから君を慕って周りにはたくさんの人々が集まって来るだろう。誰もが君を精一杯支え、逆に頼りにもする』と……

うん!
ロランにぃの言う通りだ。
所詮、人はひとりぼっちじゃあ、生きていけない。
労わり支え合う、そうしながら生き抜いて行く……それがことわりなんだ。

「つらつら」と考えているうちに、飛竜亭へ到着した。

ディーノが宿を探さず、飛竜亭へ来たのは、無事冒険者になった事をガストンへ報告する為である。
ガストンの紹介状があったおかげで、ミルヴァ達と上手くやりとり出来たから……

そしてニーナへも、スタッフ女子達へも……
あと少し頑張れば、上級ランカーへ昇格出来るランクCへ認定されたと報告すれば、全員喜んでくれるはずだ。

そして少し虫の良い事も考えていた。
昼間立て込んだので、時間が押してしまった。
その為、宿を探す時間がなかった。
ディーノは今夜も泊る場所を確保していない。

だから、ガストンへ頼み込み、
またも飛竜亭へ「ちゃっかり泊めて貰おう」と思っていたのだ。

どうせ、いろいろと報告もあるし……
荷物も預けっぱなしだし……
店を手伝った上で、ガストンさんへ頼んでみようか…… 

ディーノは顔をほころばせながら、飛竜亭へと入って行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

処理中です...