気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!

東導 号

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第128話「光を愛さない悪魔」

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『くくく、いかがです? 命と引き換えならば、そう悪くない取り引きでしょう?』

謎めいた男は悪戯っぽく笑い、ディーノに対し、魔道具譲渡の可否を尋ねて来た。
 
ここで、ケルベロスがふたりの会話へ割り込んだ。

『よせ、ディーノ! 奴の言う事は真っ赤な嘘! 完全な偽りだ! 指輪とペンタグラムを渡せば、お前は即座に殺されるぞ!』

『おやおや、いきなり、何を言いますか? たかが犬の癖に……お前は生意気ですよ』

悪魔はそう言うと、ピン! と指を鳴らした。
「びしっ」と大気が鳴り、
ケルベロスの逞しい四肢がびしびしと、音を立てて硬直した。

『うううっ、くううううっ』

『おい! ケルベロスに何をする!』

『いえ、何って……単に束縛の魔法を使っただけですよ。ついでに沈黙の魔法もかけましたから、この犬は動けない上、余計な事を一切言えなくなります』

『…………』

悪魔の……言う通りであった。
金縛り状態となったケルベロスからは、念話も遮断され、一切聞こえなくなる。

勝ち誇った悪魔は、ディーノに決断を求めて来た。

『さあ、少年……どうしますか? 金でも名誉でも……そして女子でも思いのままに貴方の望みが叶うのです。それとも拒否して無残な死を選ぶのか……答えは一目瞭然でしょう?』

『確かにな……さすがに命には代えられないか……』

『ほうほう、反省して素直になったようですね。結構、結構』

『…………』

『ならば! 指輪とペンタグラムをさっさと渡すのが賢明な判断でしょう。貴方は富、権力、麗しき女子を得て、最高に幸せになれますよぉ』

『ははは、つい心が動かされる誘いだな……だが、断る!』

ディーノがぴしゃっと断ったのを聞いても悪魔はまだ余裕しゃくしゃくである。

『おやおや、このようなおいしい条件を断るというのですか……一体、どうして?』

『分かりやすい理由だよ。俺はお前に殺されないからだ』

『くくくくく、何を言うのかと思えば、笑止! 強がりはおやめなさい!』

『はっ、強がりじゃないさ。では逆に聞こう。お前がこの指輪とペンタグラムにそこまで執着するのは何故だ?』

ディーノから問われ、即座に悪魔は答える。

『は、何を言うのかと思えば、……愚問ですね。ふたつとも素晴らしい至宝だからですよ』

『ふっ、当たり前だ。……至宝なのは間違いない。でも、それだけかな?』

『ほう、何を仰りたいのです?』

悪魔の問いかけに、ディーノははっきりと言い放つ。

『お前は怖れている!』

『ほう、私が何を怖れているのです?』

『俺がこの指輪とペンタグラムに認められ、使いこなす事により、お前は再び支配されてしまうとな』

『くくくく、成る程。さすがは私のしもべをあっさり倒しただけはある。……結構、鋭いですね』

『ふっ、まだ余裕を見せているようだが……』

『…………』

『悪魔よ、お前の心にあるヴィネという名の悪魔、そしてアッピンという言葉で全て分かった。お前の意図、すなわち本音がな!』

再びディーノがびしっと指摘すると、悪魔は初めて動揺を見せる。

『な、何! 私のほ、本音だとぉ!?』

『おう! この指輪とペンタグラムを手に入れてから、伝説の魔法王ルイ・サレオンについて少しは勉強したんだよ』

『むうう……』

『ヴィネはルイ・サレオン72柱と呼ばれる悪魔のひとり。奴は創世神様がつけた真実の名――真名を盗み読み、対象の心身を完全に支配出来るという悪魔だよな?』

『…………』

『片や、アッピンは真名を記した伝説の魔導書だ。悪魔王バエルが所持し、数多の悪魔を支配した至宝だというぞ』

『…………』

『このふたつから導かれるキーワードは真名。すなわち「支配される」という意味だ』

『…………』

悪魔はずっと無言であった。
ディーノの話を黙って聞いていた。

ここでディーノは、直球を投げ込んだ。

『ズバリ言おう! お前は魔界の王になろうとしている! それゆえ、指輪とペンタグラムを、言葉巧みに俺からちょろまかそうとしたんだ』

『ぬぬぬぬぬ! き、き、貴様ぁ! ……私の心、全てが読めるのかあっ!?』

ズバリ図星をさされ、悪魔は激高。
悔しそうに顔をゆがめた。

しかしディーノはまだまだ容赦しない。

『さあな……俺が心を読めるかどうか、何ならヴィネのように、お前の真名を読み、支配する事を試してみるか? 光を愛さない者メフィストフェレスよ』

ふたつ名と名前まで……
悪魔――メフィストフェレスの表情に驚きの色が浮かぶ。

『むうう……名乗ってもいない私の名を……貴様、やはり』

『ふん、まだある』

『まだ? 何だっ!』

『おくびにもださないが……メフィストフェレス、お前は俺の力を怖れている』

『な、な、何をだっ! お、お前の何を怖れていると言うのだっ!』

『では! 望み通り教えてやるぞ。先ほど見ただろう? お前のような不死の悪魔をも消滅させる魔法剣、ゼロ迫撃の威力をな!』

ディーノからきっぱりと告げられ、メフィストフェレスは逆に開き直ったようだ。

『ふっ……言う事は、それだけか?』

『おう、ケルベロスにかけた術をさっさと解け。……さもなくば、お前の配下同様、肉体ごと魂を打ち砕く!』

『ぬう……』

『…………』

ディーノとメフィストフェレス……

ふたりはしばらくにらみ合った。
沈黙が辺りを支配した。

やがて小さく息を吐き、「折れた」のはメフィストフェレスである。

『仕方がありませんね。貴方を認めつつあるふたつの至宝のお陰で、私の魔法も効きそうにありません。ここはひとまず退きましょう』

メフィストフェレスはそう言うと、再び指をピンと鳴らした。
「解除」らしき魔法が発動し、ケルベロスは再び、動き喋れるようになる。

『ディーノ!』

『おお、良かった』

『悪い! 助かった!』

ふたりが喜び合う様子を見たメフィストフェレスは、
さもつまらなそうに鼻を鳴らした。

『ふん……貴方を呼んだ今の犬ころの声は聞こえました。しかし……念の為、直接、貴方に名前を聞いておきましょうか』

『分かった。俺はディーノ! ディーノ・ジェラルディだ!』

『ふむ、ディーノ……ですか。創世神が名付けた真名ではなく、親が名付けた通り名とはいえ、まあまあの名前じゃないですか』

メフィストフェレスはそう言うと、またも指を鳴らした。
今度は『異界門』蒼き火球が現れた。

『ディーノ、この借りは必ず返します。ではいずれ、ごきげんよう!』

別れの挨拶が告げられた瞬間!
巨大な蒼い炎がメフィストフェレスの身体を包み込み、
「ぼっ」と異音を立てた。

そして『光を愛さない悪魔』は、火球ごと、
ディーノ達の目の前から忽然こつぜんと消え失せたのである。
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