俺の異世界家族戦記~憑いてる俺と最幸(さいこう)家族

高梨裕

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第4章 異世界開拓史

第10話 第1陣合流

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☆ ☆ ☆
ヘストラーザの領主館では筋骨隆々の男が椅子に座り部下からの報告を受けていた。

「昨日ですが、商業ギルドに多量の塩と砂糖が持ち込まれております。あと小麦もですね。」

ネスジーナ王国の北西部に位置するキストーラ子爵領では現状塩と砂糖の生産の見込みがない。全て南部のファウスト辺境伯領からの輸送に頼っていた。

「持ち込んだのは教国の商人か?」

椅子に座った男は図太い声で部下に問う。50歳は過ぎているその顔だちと体格のよさが相まってかなりの迫力を纏っていた。

「どうやら10歳ほどの子供のようです。」

「子供!?」

眉間にしわを寄せる男。身を乗り出し部下を問い詰める。

「一体どこのどいつだ!?」

「分かりません。既にここを出立し、北へ向かったと報告が上がっております。教国の関係者の可能性は捨てきれないかと。」

「情報を集められるか?」

「既に出発して時間が経ち過ぎております。難しいです。」

ヘストラーザはネスジーナ王国北西部の商業要地。商人の行き交いの数も半端ではない。一組の商隊の追跡は馬車の足跡からはほぼ不可能と言える。

「そうか…。情報を秘密裏に共有しておけ。次は逃すな!」

例え子供といえども食糧の販路の獲得は王国内において大きな発言力の増大に繋がる。部下の男も意図を察し「はっ」と返事をすると執務室を出ていく。信頼のおける衛兵に情報を伝えるためだ。

「たかが子供の商人に期待せねばならぬとはな。」

情けなく独り言を漏らした男は大きく広がったヘストラーザの街並みを部屋から見下ろしていた。

☆ ☆ ☆


ブルドとランスと名乗る老人を仲間に加えてヘストラーザを出発した一行は北上を終え、進路を西に変更していた。

荷台には足腰が弱いと自称するランスに加え、先ほど購入した豚や鶏、羊を数頭ずつ乗せている。村に家畜として持って帰るために北の農場で購入したのだ。

農場を出発してから数時間ほどするとアキたちは予定していたヘストラーザの西に位置する小さな湖に到着する。そこには20人ほどの集団が大きな荷物を持ち、座り込んでいた。

「あっ!アキさ~~ん!こっちですよ~。」

御者席に座り馬車を操るアキを見つけた少女が飛び跳ねながら両手を振り、自分たちの場所をアピールしている。ヘストラーザに到着したその日に野花を売っていた少女である。

「アリサちゃん、良かった。皆さんも無事ですね。」

アキにアリサと呼ばれた少女の周りを大人の集団が囲っており、その全てが痩せこけているものの怪我を負っている様子もない。ここに至るまでの旅程で襲われた者はいなかった。

「では、皆さん。早速ですが、出発しましょう。」

荷物を馬車に乗せるように促すと皆大きな荷物や小さな子供を馬車に乗せ始める。御者が出来る者に手綱を託しアキも歩き始めた。
一気に数を増したこの集団にはもちろんその経緯が存在する。



アリサが野花を売った奇妙な子供2人組は家に案内して欲しいとおかしなことを言ってきた。家といっても城壁外に素人が作った小屋である。風が吹けば吹き飛びそうなオンボロに迎え入れるのにはかなりの抵抗があったが、薬師を名乗る少年が母親を診てくれるというのでおとなしく案内することにした。

家に2人を迎え入れると当然兄弟と母親からは咎められた。ただ少年は無理矢理体を起こそうする母親を押さえつけそのまま寝かせると荷物の中から黒い薬粒を取り出し呑み込ませた。

「薬代を払うことができない」と泣く母親に少年はさらにおかしなことを聞いてくる。商人ギルドの位置、小麦・砂糖・塩の市場価格、領主の評判等アリサを含めた兄弟3人は完全に蚊帳の外であった。

仕舞いには村の村長を名乗り、母親にそこで仕立て屋として再出発してはどうかと聞いてきたのだ。



「胡散臭いですよね?」

「はい…、正直に言わせてもらえば怪しいです。」

アリサの母親リザはアキの問いかけに正直に答えた。3食と住む場所に加えて仕事も斡旋してくれる10歳児。不気味な誘いであることはアキ本人もわかっている。

「勿論いいことばかりではありません。二度とヘストラーザへ戻ってくることはできないかもしれませんし、村はここから遠く離れています。命の危険もありますから。」

「なら…「しかし!!」」

「しかし、リザさん。このままじゃここで飢え死にしますよ。」

強い口調を止めようとはしない。現にリザは栄養失調で倒れていた。幼い子供たちの細くなった手足が、食べ物が少ないことを証明していた。

「祖母の名に誓います。絶対の安全は保障できませんが、全力で皆さんをクルト村の村長である俺が保護いたします。」

遂にはアキの呼びかけによってアリサ一家を含めたリザの知り合いらが移住に同意し、数日後の湖での待ち合わせに集まったのだ。

「最後の確認です。皆さん、これから先は後戻りが出来ませんよ。無理な方は今ここで言って下さい。多くはないですが、食糧とお金をお渡しします。」

皆の表情に曇りは無かった。諦めかけていた人生に小さな光明が差し込んだのだ。

「ランスさんもいいですか?」

馬車の中で腰掛けている老人にも確認を取る。一行の中で最高齢である以上、終焉の地に移住するということに他ならなかったからだ。

「ほっほっほ。わしゃあ、根っから博打好きじゃからの。今から楽しゅうてしょうがないわ!」

曲がった腰に似合わぬ剛毅な声を出すランス。

「それよりもよいのか?虫が付いて来とるぞ?」

東の方角で煙が上がってこちらに真っ直ぐ向かってくる集団を指差す老人。騎馬の集団であろう。周りから慌てふためく声がする。

「良かった。先に行っていて下さい。ちょうど馬が欲しかったんです。」
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感想 2

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みんなの感想(2件)

ちょこちょこ

楽しく読ませて頂いています、続きを待って居ますが☺️中々投稿されません体調をくずされたか?次の展開を考えて見えるのか?続きの投稿を待って居ます

解除
risaqueen0512
2017.05.30 risaqueen0512

楽しく読ませて頂いてます!
本文に良くパルルークと表記されている部分があったのですが、パルクールではないでしょうか?確認願います( *´ω`* )

間違っていたらすいません(;´・ω・)
次回、更新楽しみにしています( ̄∇ ̄*)ゞ

2017.05.30 高梨裕

いつもご覧いただきありがとうございます。おっしゃる通りでした。訂正いたします。まだまだ続けていく予定ですので引き続きよろしくお願いします。

解除

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