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第12話:魔鋼の魂

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ヴェールウッド村の朝は、静けさの中に新たな鼓動が響き始めていた。貴族との戦いから5日が過ぎ、タクミは倉庫でガイストMk-Iの進化に取り掛かっていた。肩に被っていたウェアラブル型から「乗り込む機体」への夢を形にすべく、設計図を広げる。村人たちが集まり、子供が小さな鉄片を運び、女が汗を拭いながら水を汲み、男たちが炉に薪を放り込む。だが、1週間を超える作業の果てに、その輪の外で数人の村人が疲れた目でタクミを見つめていた。
タクミは設計図に目を落とし、低く呟く。
「冷却を強化して、コックピットを組み込む。こいつに魂を吹き込むんだ。」  

そこへエリナが現れ、手に持った麻袋を差し出す。
「これが村の備蓄だ。魔脈鉱石だよ。使え。」
袋の中には、青白く光る魔脈鉱石が数個。タクミはそれを受け取り、指先でその冷たい輝きを確かめる。瞳が燃えるように輝いた。
「これがあれば…炉の安定性が上がる。感謝する、エリナ。」
エリナは静かに頷き、煤と疲れにまみれた顔で言う。
「村はお前に命を預けてる。その力を信じてるよ。」

だが、倉庫の隅で老人が呟く声が響く。
「命を預けるだと? 今まで平和だったのに、この異邦人が貴族を怒らせたせいで危機が来た。10日も鉄を叩いて、何になるんだ?」
近くの女が頷き、小声で続ける。
「そうだよ。この化け物が失敗したら、村は終わりだ。」
その言葉がタクミの耳に届き、彼の手が一瞬止まる。貴族に狙われたのは俺のせいか――少年の笑顔が脳裏を掠め、胸が締め付けられる。  

タクミは魔脈鉱石を炉に嵌め、廃材と鉄鉱石を組み合わせ、新たな装備を鍛造し始めた。炉のそばに立つクロウ――村の鍛冶屋が、汗と筋肉に覆われた腕で鉄槌を握る。目の下に隈を浮かべながら、彼はタクミの設計図を一瞥し、太い声で笑う。
「お前さんの鉄の装具、見たことねえ形だ。だが、俺の腕なら仕上げてやる。昔、エリナの親父と剣を鍛えた俺を信じな。村の臆病者どもの声なんぞ、気にすんな。」
タクミは苦笑し、設計図を指さす。
「剣と銃だけじゃ足りねえ。この魔鋼剣で、貴族の魔導士を斬る。」  

8日目の夜、炉の火が轟々と唸り、鉄が赤く溶ける。熱風が倉庫を満たし、タクミの額に汗が滲む。彼がハンマーを振り下ろすと、金属の悲鳴が響き、クロウが魔脈鉱石を刃に沿わせる。青い光が迸り、剣が低く唸った。タクミが目を丸くし、叫ぶ。
「これだ!魔脈が剣に宿った!」
胸のAIコアが脈動し、ガイストが分析する。
「魔鋼剣、出力40N・m、エネルギー伝導率75%。戦闘効率85%上昇。お前の無謀が成果を上げたな、タクミ。」
タクミは笑い、剣を手に持つ。
「まだだ。試運転が必要だ。」  

10日が過ぎ、村人たちと協力してガイストMk-Iのフレームが拡張された。高さ3メートルの機体は、廃材と鉄鉱石で補強された無骨な姿。錆と溶接痕が混じる即席の装甲は、荒々しい力強さを滲ませる。右腕にはドリルアームと新たに装着された魔鋼剣が収まり、左腕には魔脈ピストルが固定されている。胴体には冷却パイプが蛇のように這い、背中の排気口が炉の熱を吐き出す。
コックピットは胸部の上部、肩と首の間に位置する狭い空間だ。鉄板と革紐で囲まれた簡素な作りで、木製の座板と2本のレバーが汗臭い熱気の中に突っ込まれている。足元には、炉の熱を調整する即席のペダルが軋む。12日目の朝、タクミが乗り込むと、ガイストのコアを前面スロットに嵌め込む。カチリと音が響き、コアが青く光ると、機体が地を震わせて唸り始めた。  

村人たちが息を呑む中、タクミはレバーを握り、ペダルを踏む。ガイストMk-Iが立ち上がり、倉庫の床が軋む。熱と振動がコックピットを満たし、鉄板の隙間から焦げた風が吹き込む。ガイストが報告する。
「冷却効率70%、エネルギー残量95%、トルク最大80N・m。コックピット型、起動準備完了だ。」
タクミの視界は狭い覗き窓に限られるが、外の光景が見える。子供が「おじちゃん、すごい!」と駆け寄り、エリナが笑顔で頷く。だが、隅に立つ老人の冷たい目が刺さる。 

クロウが炉の脇で呟く。
「こりゃ…怪物だ。12日かけて鍛えた剣が、貴族の首を刈るのか。」
タクミはコックピットから声を張る。
「これが俺たちの答えだ。貴族にぶつけてやる。俺を信じられねえ奴がいても、構わねえ。この機体で証明する。」
エリナが剣を手に近づき、静かに言う。
「試運転なら、私が相手だ。村の外で待ってる。こいつが動くか、確かめてやるよ。」
その言葉に、子供が手を振る。老人の一人が疲れた声で呟く。
「異邦人が勝てなきゃ、村は終わりだ。頼むしかねえのか…。」
ガイストの声が低く響く。
「お前の意気込みには、感心せざるを得ねえ。不信も力に変えろ、タクミ。」  

倉庫の扉が開き、タクミとガイストの新たな魔鋼機が動き出す。ドリルアームが唸り、魔鋼剣が青く輝く。一歩踏み出すたび、地面が震え、背中の排気口から白い蒸気が噴き出した。森の焦げた木々がざわめき、村人たちの視線が交錯する。協力する者、不信を抱く者――その全てを背負い、タクミの脳裏に少年の笑顔が閃く。
「この機体で…あいつらを終わらせて、村を守る。」
ヴェールウッドの希望と疑念を背に、魔鋼の魂が新たな一歩を刻んだ。

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