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第15話:鋼の意志

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朝陽がヴェールウッド村を照らし、焼け焦げた小屋の残骸に光が差し込む。倉庫の中は煤と鉄の匂いが立ち込め、炉の熱気が湿った風と混じる。タクミはガイストMk-Iの横に立ち、高さ3メートルの魔鋼機を見上げる。コックピットから伸びる冷却パイプが黒ずみ、戦いの傷が装甲に刻まれている。彼が炉の周りを調べ、汗に濡れた手で呟く。
「自然空冷じゃ限界だ。炉の過熱が戦いの足を引っ張る。」 

タクミは村の水路に目をやり、近くの木材と鉄片を手に持つ。設計図に新たな線を引き、炉に水冷パイプを追加する案をスケッチする。村人たちが集まり、鍛冶屋クロウが鉄を運び、女たちが水を汲んで手伝う。タクミが水路からパイプを引き、炉の側面に取り付けるが、初回の試作用は失敗に終わる。水が漏れ、蒸気が勢いよく噴き出し、タクミが煤だらけの顔で咳き込む。
「くそっ、配線が甘かったか…」
再挑戦で配線を調整し、水流を流し込む。シュッと鋭い音が響き、炉の表面が冷える感触にタクミが笑う。
「これだ。水冷なら冷却効率が上がる!」  

ガイストのAIコアがコックピット前面で青く光り、理性的な声で指摘する。
「冷却効率の向上は10%に留まる。それで満足するつもりか、タクミ?」
タクミが工具を手にガイストを睨み、返す。
「十分だ。少しずつ強くなる。それが俺のやり方だ。」
ガイストが光を点滅させ、冷静に分析する。
「炉温度低下率15%、エネルギー残量の維持時間が5分延長。戦闘での生存率は12%上昇する。合理的かつ効果的な判断だ。認めざるを得ない。」  

タクミが設計図を広げ、村人たちに宣言する。
「ガイストMk-Iを強くするだけじゃねえ。お前らにも戦える力を持たせる。」
彼が机に並べたのは、ウェアラブル型の小型制御装置だ。ガイストのようなAI知能はなく、魔脈鉱石の欠片を動力源に、レバーとスイッチで腕や脚を補助する簡素な設計。タクミがクロウに鉄片を渡し、説明する。
「これを村の戦士に装着させる。喋らねえが、力と防御は十分だ。」
クロウが装置を手に持ち、驚きと疑いの混じった声で言う。
「こいつを俺たちが使うのか?本当に戦えるのかよ?」
タクミが試作用の装置を腕に装着し、スイッチを押す。ギュッと締まる音が響き、鉄片を握り潰す。
「これで騎士の槍くらいなら弾ける。お前らに教えるから、練習しろ。」 

だが、隅に立つ老人が呟く。
「異邦人が鉄の玩具を増やしても、貴族が来るだけだ。俺たちは戦士じゃねえよ。」
子供たちがタクミの周りに集まり、一人が笑顔で聞く。
「おじちゃん、また守ってくれる?」
タクミが膝をつき、子供たちの目を見つめて約束する。
「当たり前だ。お前らがいる限り、俺は戦う。」  

エリナが倉庫に入り、タクミに近づく。彼女が剣を腰に下げ、静かに問う。
「村はお前に希望を預けた。お前はどうだ?」
タクミが設計図を握り、炉の改良されたパイプを見上げる。遠くの森から微かな馬蹄の音が響き、彼の目に暗い影が宿る。
「ここが俺の居場所なら…やるしかねえ。貴族が次に来る前に、こっちから仕掛ける。」
エリナが小さく笑い、煤けた顔で返す。
「その言葉で安心した。だが、無茶はするな。お前が倒れたら、村は終わりだ。」  

タクミが水冷パイプを叩き、笑いながら言う。
「心配すんな。こいつが俺を支えてくれる。」
ガイストがコックピットから理性的に響く。
「冷却効率の向上は戦闘の安定性を高める。お前の決意に相応しい進化だ、タクミ。だが、貴族の動向を軽視してはならぬ。斥候の報告が数百騎を呼び寄せる可能性は高い。」
タクミが設計図に目を戻し、ウェアラブル型の改良案を書き足す。村人たちが倉庫の外で笑い合い、子供たちが制御装置を手に持って遊び始める。だが、老人の不信の視線が背中に刺さる。  

夕暮れが近づき、タクミがガイストMk-Iの炉に最後の調整を施す。水冷パイプから滴る水が地面に落ち、蒸気が静かに消える。彼がコックピットに乗り込み、レバーを引くと、機体が立ち上がる。ガイストが報告する。
「エネルギー残量98%、冷却効率80%、トルク最大85N・m。戦闘準備は整った。」
タクミが村人たちを見回し、声を張る。
「次はこっちから貴族を叩き潰す。お前らも準備しろ。」 

村の戦士たちがウェアラブル型の制御装置を手に持ち、タクミの周りに集まる。クロウが装置を腕に装着し、試しに拳を握る。エリナが剣を手に、静かに頷く。
「私たちも戦うよ。お前と一緒にだ。」
タクミが空を見上げると、夕陽が赤く染まり、星が一つ輝き始める。少年奴隷の笑顔が脳裏に浮かび、彼の決意が新たな一歩を刻んだ。遠くの森から再び馬蹄の音が微かに響き、ヴェールウッドの未来は、タクミの手と村人の力で切り開かれていく。

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