3 / 10
3
しおりを挟む
「え!? 好きな人出来た!?」
「しっ、うるせえよ声デカい…!」
俺は学校に着き、席につくなり中学からの親友、朔間 茉白に朝の出来事を伝えた。
「え、それは何?完全一目惚れってこと?」
「知らねえよ…でも初めてだったから、こんなにドキドキしたの…」
「へえ、お前も案外初心だな」
「う、うるさいな!!」
茉白は俺が男を好きなことも、BL漫画が好きなことも知っていて、一番楽に全てを話せる。万が一好きな人が出来たら、一番に言おうと思っていた。
「そいつの名前聞いたか?」
「聞いた。有馬遥…っていう子」
「有馬…!? 俺そいつ知ってる」
茉白から知らされた事実に、愕然とした。
「は!? 茉白が!? 何で!?」
俺はつい机をバンと叩き、席を立った。わいわいとしていた教室内は俺の立てた大きな音と声でシーンと静まり返った。
「い、伊吹、落ち着けよ、まず聞けって」
「あっ…ごめん」
俺は小さく萎むように席へ再度腰を下ろす。
「B高の有馬だろ? イケメンドS王子って言われてるぐらいで、ここら辺では結構有名なヤツだよ。いや、まさかお前が有馬と友達になるとは…」
イケメンドS王子…?遥が?
俺がまさかそんなヤツと友達になったなんて。開いた口が塞がらない。
「俺の友達の友達でさ、ツーンとしててイマイチどんな奴だか分からないって言ってた」
「そう、俺も遥の肩にもたれてるのに気が付いた時、ツーンとしてる人だったから怒られる、って思って超怖かったけど、案外優しかったんだよ…! ぶっきらぼうな感じはしたけど」
絶対に怒られる…と覚悟していたのに、怒られるどころか、停車駅で起こしてくれようとしていた。
イケメンだからドキドキしたというのもあるかもしれないが、ツンとして見える遥の優しさに触れたあの瞬間に、胸が高なったのである。
「へえ、よくお前が読んでるBL漫画のキャラみたいな性格してんじゃん笑」
茉白はニヤリと口角を上げた。俺は見事に図星を突かれた。
「だ、だから好きになった訳じゃないから…!」
「どうかねえ?」
…茉白には全てお見通しのようだ。
「ほらほら、お前ら席つけー」
ここで、担任の先生が教卓へと歩いてきた。
茉白に話したい事はまだ沢山あったが、一先ず一区切りし、先生の声に耳を傾けた。
「やっと昼だー…」
月曜日の授業はいつもに増して疲労感が大きいように思える。
四時間目を終えた俺は、茉白と机を向かい合わせに配置し、弁当の蓋を開けた。
「俺、昼休みはどうせ伊吹のマシンガントークに付き合う羽目になるだろうと思って覚悟してたからさ、相談乗ってやってもいいぜ笑」
茉白は弁当のおかずを頬張りながら言った。遥の存在を知っている茉白は、もしかすれば遥の情報を何か持っているかもしれない。
「俺も昼休みに遥のこと茉白に話そうと思ってたんだよ…! 茉白優しい…! なんでこんな優しいのに彼女いないんだろ」
「一言余計なんだよお前は!!」
「はは、ごめん」
「つーか伊吹、まず初めにイケメンドS王子に彼女がいるか確かめないとじゃね?」
茉白にいきなり、遥に彼女がいるかを確かめなければならないという難題を提示されてしまった。何故か心臓がギュッと掴まれるような感覚に陥る。
「…いたとしたら俺の恋はそこで終わりだよ…。いなかったとしても、どうせ女子達から爆モテなんだろうし」
遥には彼女がいても全くおかしくない。今は恋に落ちて浮かれている自分しか見えていなくて、遥に彼女がいたら俺の恋はどうなってしまうのかなんて、考えてすらいなかった。
まず、俺みたいに同性が好きなゲイはとても多くない。遥が異性が好きであるならば、絶対に俺は遥の眼中に入ることは出来ない。同性が好き、という俺に嫌悪感を抱かれてもおかしくない。
「そんな既に諦めモードに入ってるようじゃやってけねえぞ、伊吹。まず彼女いるかどうか聞いてからがスタートだと思うぜ」
「連絡先も知らないし、いつまた会えるかすら分からないんだよ…」
まともに現実の人を好きになったことがない俺にとって、恋の攻略法なんて何一つ分からない。アイツを一目見た瞬間に俺の中で咲いた一輪の花が、枯れずに綺麗に咲き続けていられるのか。まだ何も始まっていないのに、俺はつい萎むように小さくなってしまう。
「今日ぐらいの時間の電車で、今日と同じ車両に乗れば、また会えるかもじゃん?」
「うん。明日も今日ぐらいの電車に乗る。次はもっと話したいから」
今日出会ったばかりの人にこんなに視線を奪われるなんてこと、漫画以外に存在しないと思っていた。
「…会えたらいいな、また」
現在進行形で、遥ともっと仲良くなりたい、もっと遥のことを知りたいという想いが強くなっていった。
(…次会う日まで、俺も攻略法考えておこう)
俺は恋した自分を鼓舞するように、弁当に入っていたおかずを大きく頬張った。
「しっ、うるせえよ声デカい…!」
俺は学校に着き、席につくなり中学からの親友、朔間 茉白に朝の出来事を伝えた。
「え、それは何?完全一目惚れってこと?」
「知らねえよ…でも初めてだったから、こんなにドキドキしたの…」
「へえ、お前も案外初心だな」
「う、うるさいな!!」
茉白は俺が男を好きなことも、BL漫画が好きなことも知っていて、一番楽に全てを話せる。万が一好きな人が出来たら、一番に言おうと思っていた。
「そいつの名前聞いたか?」
「聞いた。有馬遥…っていう子」
「有馬…!? 俺そいつ知ってる」
茉白から知らされた事実に、愕然とした。
「は!? 茉白が!? 何で!?」
俺はつい机をバンと叩き、席を立った。わいわいとしていた教室内は俺の立てた大きな音と声でシーンと静まり返った。
「い、伊吹、落ち着けよ、まず聞けって」
「あっ…ごめん」
俺は小さく萎むように席へ再度腰を下ろす。
「B高の有馬だろ? イケメンドS王子って言われてるぐらいで、ここら辺では結構有名なヤツだよ。いや、まさかお前が有馬と友達になるとは…」
イケメンドS王子…?遥が?
俺がまさかそんなヤツと友達になったなんて。開いた口が塞がらない。
「俺の友達の友達でさ、ツーンとしててイマイチどんな奴だか分からないって言ってた」
「そう、俺も遥の肩にもたれてるのに気が付いた時、ツーンとしてる人だったから怒られる、って思って超怖かったけど、案外優しかったんだよ…! ぶっきらぼうな感じはしたけど」
絶対に怒られる…と覚悟していたのに、怒られるどころか、停車駅で起こしてくれようとしていた。
イケメンだからドキドキしたというのもあるかもしれないが、ツンとして見える遥の優しさに触れたあの瞬間に、胸が高なったのである。
「へえ、よくお前が読んでるBL漫画のキャラみたいな性格してんじゃん笑」
茉白はニヤリと口角を上げた。俺は見事に図星を突かれた。
「だ、だから好きになった訳じゃないから…!」
「どうかねえ?」
…茉白には全てお見通しのようだ。
「ほらほら、お前ら席つけー」
ここで、担任の先生が教卓へと歩いてきた。
茉白に話したい事はまだ沢山あったが、一先ず一区切りし、先生の声に耳を傾けた。
「やっと昼だー…」
月曜日の授業はいつもに増して疲労感が大きいように思える。
四時間目を終えた俺は、茉白と机を向かい合わせに配置し、弁当の蓋を開けた。
「俺、昼休みはどうせ伊吹のマシンガントークに付き合う羽目になるだろうと思って覚悟してたからさ、相談乗ってやってもいいぜ笑」
茉白は弁当のおかずを頬張りながら言った。遥の存在を知っている茉白は、もしかすれば遥の情報を何か持っているかもしれない。
「俺も昼休みに遥のこと茉白に話そうと思ってたんだよ…! 茉白優しい…! なんでこんな優しいのに彼女いないんだろ」
「一言余計なんだよお前は!!」
「はは、ごめん」
「つーか伊吹、まず初めにイケメンドS王子に彼女がいるか確かめないとじゃね?」
茉白にいきなり、遥に彼女がいるかを確かめなければならないという難題を提示されてしまった。何故か心臓がギュッと掴まれるような感覚に陥る。
「…いたとしたら俺の恋はそこで終わりだよ…。いなかったとしても、どうせ女子達から爆モテなんだろうし」
遥には彼女がいても全くおかしくない。今は恋に落ちて浮かれている自分しか見えていなくて、遥に彼女がいたら俺の恋はどうなってしまうのかなんて、考えてすらいなかった。
まず、俺みたいに同性が好きなゲイはとても多くない。遥が異性が好きであるならば、絶対に俺は遥の眼中に入ることは出来ない。同性が好き、という俺に嫌悪感を抱かれてもおかしくない。
「そんな既に諦めモードに入ってるようじゃやってけねえぞ、伊吹。まず彼女いるかどうか聞いてからがスタートだと思うぜ」
「連絡先も知らないし、いつまた会えるかすら分からないんだよ…」
まともに現実の人を好きになったことがない俺にとって、恋の攻略法なんて何一つ分からない。アイツを一目見た瞬間に俺の中で咲いた一輪の花が、枯れずに綺麗に咲き続けていられるのか。まだ何も始まっていないのに、俺はつい萎むように小さくなってしまう。
「今日ぐらいの時間の電車で、今日と同じ車両に乗れば、また会えるかもじゃん?」
「うん。明日も今日ぐらいの電車に乗る。次はもっと話したいから」
今日出会ったばかりの人にこんなに視線を奪われるなんてこと、漫画以外に存在しないと思っていた。
「…会えたらいいな、また」
現在進行形で、遥ともっと仲良くなりたい、もっと遥のことを知りたいという想いが強くなっていった。
(…次会う日まで、俺も攻略法考えておこう)
俺は恋した自分を鼓舞するように、弁当に入っていたおかずを大きく頬張った。
21
あなたにおすすめの小説
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。
ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日”
ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、
ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった
一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。
結局俺が選んだのは、
“いいね!あそぼーよ”
もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと
後から思うのだった。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる