8 / 10
8
しおりを挟む
部屋着からきちんとした装いになった俺は家の近所の広場へと足を運ぶ。
「うわ、人多っ…」
真夏の夜の夏祭りということもあり、大勢の人で賑わっている。色んな年代の人が色々な場所でわいわい集まっている。
蝉の鳴き声と共に聞こえてくる食べ物が鉄板で焼ける音が、俺に夏の知らせを伝えてくるようだ。
「おーいたいた、伊吹ー」
夏を感じながら屋台を見て回っている俺を呼び止める声がした。
「茉白、久しぶり」
後ろを振り返ると、茉白が立っていた。
「久しぶりー!何だよお前屋台ジッとみて。腹減ってんの?」
「うーん…まあまあかな」
「ならなんか食おうぜ!俺早く焼きそば食いたい!ほら早く!」
茉白は焼きそばの屋台を見つけた途端、颯爽と屋台へ向かって走って行った。あっという間に茉白が小さく見える。
(相変わらず元気だなぁ、茉白は)
そして俺も続いて、茉白の後を追った。
「あー腹減った。伊吹、もし腹減ってないならお前の焼きそば俺が全部食べてやってもいいけど!」
屋台の列に並びながら、茉白は笑ってそう言った。
「うわっ、それはやめろよ」
「はは、冗談冗談」
そして、後に俺と茉白は、透明のパックに入った小さな焼きそばを二つ購入した。パックに入った焼きそばから香るソースの匂いが食欲を唆る。
俺と茉白は屋台の傍にあるベンチに腰かけた。
「いただきまーす」
俺と茉白は割箸を裂き、パックの輪ゴムを外す。そしてようやく麺を口の中へと運んだ。
夏祭りに食べる焼きそばは特別感があり、いつも食べる焼きそばの何十倍、何百倍も美味しく感じる。
余程お腹が空いていたのか、茉白は夢中で焼きそばを頬張っている。俺も大きく焼きそばを頬張る。
そして、焼きそばを頬張っていた茉白は何か俺に言いたいことがあったのか、焼きそばのパックを膝に置いた。
「なあ伊吹、お前が遥と付き合ったらさ」
「!? ゲホッゲホッ」
茉白はここでいきなり突拍子も無く、遥の名前を出した。
「そんな驚くかよ…!?」
「ご、ごめん、何…?」
いきなりだったし、俺も今ちょうど焼きそばを頬張りながら遥のことを思い浮かべていたから、つい過敏に驚いてしまった。
「あのさ、もしお前と遥が付き合ったら、そのうちセックスとかもするんだよな?」
「はっ!?!?」
(セ、セックス…!? セックスって、BL漫画によくあるセックス…だよな?ま、まあ確かにもし仮に付き合えたとしたら、そうなるの…か)
付き合ったら、相手をもっと知りたい、愛したいという気持ちからそういうことをするということは勿論知ってはいたが、いざ口に出して言われるととても恥ずかしくなる。
「するってなったら、お前が下だろ?」
「ゑ」
色鮮やかで趣のある風景を背景に、焼きそばを食べながらする会話ではとてもない。
俺は分かりやすく動揺した。
「いやでも…!俺の方が背高いんだよ」
「それの何が上下に関係あんだよ」
「だ、だってBL漫画は背高い人が背低い人を虐めながらセックスするのが主流じゃん…!!遥より俺の方が背高いから…!!」
俺が良く読むBL漫画は、背の高い人が低い人を虐めるパターンが多いために、このようなイメージがついてしまっている。 だって本当のことだし…。
「え、じゃあそうなるとお前は遥に入れる側ってこと?」
「そうなるけど…うーん…?」
「お前は入れたいのか入れられたいのか」
「…なあこの話辞めない!?」
「辞めない。はい、お前はどっち」
――
「あっ!♡ん、そこだめぇっ!♡遥ぁっ!♡」
「ふーん♡めっちゃ締めてるくせにそんなこと言うんだな伊吹?♡」
「あぁ♡も、やだぁっ!♡抜いてっ…♡」
ーー
「伊吹ー?今何か変なことでも想像してただろー?♡」
「な、何もしてねえ!!」
俺は焦ってついいつもより多い量の焼きそばを一口、口へ放り込む。
本当、俺は何てことを考えているんだ…。今のこの一瞬の空想の間で、行為中の遥の顔や体までも想像してしまった。しかも、俺が“受け”の空想の世界であった。
遥は、あんあん声を上げる俺を見てニヤリと口角をあげ、俺を見ていた。自分があんなだらしない声をあげているなんて、余程気持ちいいんだろうな…と空想であるのに考えてしまう。
「茉白!! この話はもう終わり!! 違うとこ行こうぜ!!」
「はいはい笑 お前の中では上下どっちか理解したようだな笑 まあ言わなくても俺は分かるけど笑」
「はあ…」
茉白は本当に俺を揶揄うのが上手い…俺の周りにはからかい上手しかいないのか。 そうして俺は男子高校生特有のエッチな会話を無理矢理終わらせ、食べ終わった焼きそばのゴミをゴミ箱へと放り込む。
「あ、伊吹、そろそろ花火あるから見ようぜ。多分ここじゃ見えないからどっか移動してさ」
「花火かあ。うん、見よ」
花火か。花火と聞くだけで夏を感じる。
そうして、俺と茉白は祭りの醍醐味、花火を見るべく今いる広場から離れ、花火が見える場所へと歩き出した。
「うわ、人多っ…」
真夏の夜の夏祭りということもあり、大勢の人で賑わっている。色んな年代の人が色々な場所でわいわい集まっている。
蝉の鳴き声と共に聞こえてくる食べ物が鉄板で焼ける音が、俺に夏の知らせを伝えてくるようだ。
「おーいたいた、伊吹ー」
夏を感じながら屋台を見て回っている俺を呼び止める声がした。
「茉白、久しぶり」
後ろを振り返ると、茉白が立っていた。
「久しぶりー!何だよお前屋台ジッとみて。腹減ってんの?」
「うーん…まあまあかな」
「ならなんか食おうぜ!俺早く焼きそば食いたい!ほら早く!」
茉白は焼きそばの屋台を見つけた途端、颯爽と屋台へ向かって走って行った。あっという間に茉白が小さく見える。
(相変わらず元気だなぁ、茉白は)
そして俺も続いて、茉白の後を追った。
「あー腹減った。伊吹、もし腹減ってないならお前の焼きそば俺が全部食べてやってもいいけど!」
屋台の列に並びながら、茉白は笑ってそう言った。
「うわっ、それはやめろよ」
「はは、冗談冗談」
そして、後に俺と茉白は、透明のパックに入った小さな焼きそばを二つ購入した。パックに入った焼きそばから香るソースの匂いが食欲を唆る。
俺と茉白は屋台の傍にあるベンチに腰かけた。
「いただきまーす」
俺と茉白は割箸を裂き、パックの輪ゴムを外す。そしてようやく麺を口の中へと運んだ。
夏祭りに食べる焼きそばは特別感があり、いつも食べる焼きそばの何十倍、何百倍も美味しく感じる。
余程お腹が空いていたのか、茉白は夢中で焼きそばを頬張っている。俺も大きく焼きそばを頬張る。
そして、焼きそばを頬張っていた茉白は何か俺に言いたいことがあったのか、焼きそばのパックを膝に置いた。
「なあ伊吹、お前が遥と付き合ったらさ」
「!? ゲホッゲホッ」
茉白はここでいきなり突拍子も無く、遥の名前を出した。
「そんな驚くかよ…!?」
「ご、ごめん、何…?」
いきなりだったし、俺も今ちょうど焼きそばを頬張りながら遥のことを思い浮かべていたから、つい過敏に驚いてしまった。
「あのさ、もしお前と遥が付き合ったら、そのうちセックスとかもするんだよな?」
「はっ!?!?」
(セ、セックス…!? セックスって、BL漫画によくあるセックス…だよな?ま、まあ確かにもし仮に付き合えたとしたら、そうなるの…か)
付き合ったら、相手をもっと知りたい、愛したいという気持ちからそういうことをするということは勿論知ってはいたが、いざ口に出して言われるととても恥ずかしくなる。
「するってなったら、お前が下だろ?」
「ゑ」
色鮮やかで趣のある風景を背景に、焼きそばを食べながらする会話ではとてもない。
俺は分かりやすく動揺した。
「いやでも…!俺の方が背高いんだよ」
「それの何が上下に関係あんだよ」
「だ、だってBL漫画は背高い人が背低い人を虐めながらセックスするのが主流じゃん…!!遥より俺の方が背高いから…!!」
俺が良く読むBL漫画は、背の高い人が低い人を虐めるパターンが多いために、このようなイメージがついてしまっている。 だって本当のことだし…。
「え、じゃあそうなるとお前は遥に入れる側ってこと?」
「そうなるけど…うーん…?」
「お前は入れたいのか入れられたいのか」
「…なあこの話辞めない!?」
「辞めない。はい、お前はどっち」
――
「あっ!♡ん、そこだめぇっ!♡遥ぁっ!♡」
「ふーん♡めっちゃ締めてるくせにそんなこと言うんだな伊吹?♡」
「あぁ♡も、やだぁっ!♡抜いてっ…♡」
ーー
「伊吹ー?今何か変なことでも想像してただろー?♡」
「な、何もしてねえ!!」
俺は焦ってついいつもより多い量の焼きそばを一口、口へ放り込む。
本当、俺は何てことを考えているんだ…。今のこの一瞬の空想の間で、行為中の遥の顔や体までも想像してしまった。しかも、俺が“受け”の空想の世界であった。
遥は、あんあん声を上げる俺を見てニヤリと口角をあげ、俺を見ていた。自分があんなだらしない声をあげているなんて、余程気持ちいいんだろうな…と空想であるのに考えてしまう。
「茉白!! この話はもう終わり!! 違うとこ行こうぜ!!」
「はいはい笑 お前の中では上下どっちか理解したようだな笑 まあ言わなくても俺は分かるけど笑」
「はあ…」
茉白は本当に俺を揶揄うのが上手い…俺の周りにはからかい上手しかいないのか。 そうして俺は男子高校生特有のエッチな会話を無理矢理終わらせ、食べ終わった焼きそばのゴミをゴミ箱へと放り込む。
「あ、伊吹、そろそろ花火あるから見ようぜ。多分ここじゃ見えないからどっか移動してさ」
「花火かあ。うん、見よ」
花火か。花火と聞くだけで夏を感じる。
そうして、俺と茉白は祭りの醍醐味、花火を見るべく今いる広場から離れ、花火が見える場所へと歩き出した。
11
あなたにおすすめの小説
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。
ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日”
ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、
ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった
一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。
結局俺が選んだのは、
“いいね!あそぼーよ”
もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと
後から思うのだった。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる