影を纏う君へ

まりあんぬさま

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第二章 日常と絆

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 そんなこんなで、彼女が転校して来てから一か月が過ぎた。
 最初の一週間こそ祭りみたいな人だかりだったのに、二週、三週と経つにつれて、あの渦は嘘みたいに萎んでいった。昼休み、窓際の席に人垣ができていたのは遠い昔。今では、授業の合間も放課後も、椿小夜は一人で静かに本を閉じ、水を一口含む。人気が去ったんじゃない。人気はある。けれど、その熱が彼女の半歩手前で立ちすくむようになったのだ。理由は、誰も言わない。ただ、教室の空気が「言わない」を選んでいる。

「なんか急に椿さんの周りに人がいなくなったけど、どうしたんだ? 蓮花は何か知ってるか?」

 朝の小テストが終わって、鉛筆をくるくる回しながら俺は訊いた。蓮花は消しゴムのカスをまとめ、少しだけ視線を泳がせる。

「えっ? うーん……ちょっと、わかんないかな……」

 蓮花にしては歯切れの悪い返答だ。いつもなら「はいはい、文化祭の時の“盛り上がりだけで近づいてくる勢”は三週間で自然淘汰されるの」みたいに軽口で流すはずなのに。妙に慎重な間。
 そのことも気になったが、せっかく近づくチャンスだと、俺の足は勝手に「前へ」を選んでいた。

「椿さん。次の移動授業、俺らと一緒に行きませんか?」

 チャイムが鳴る直前、思い切って声をかける。理科棟への移動。いつもなら彼女は一人で席を立つ時間だ。いきなり話しかけられたからか、小夜は一瞬だけ不思議そうに目を丸くした。けれど、次の瞬間には、いつものように柔らかく笑って、

「いいですよ。よろしくお願いします!」

 と、あっさり。
 その笑顔は、教壇での挨拶でも、廊下の遠目でも見ている。でも、こうして至近距離で受け止めると、胸の真ん中に温度の急上昇が起きる。頬が、耳が、熱い。――落ち着け俺。落ち着け、落ち着け。

「よっしゃ、四人で行こうぜ。エスコートは俺が請け負う!」

 すかさず甚太が乗ってきた。こういう時の機動力はさすがだ。
 蓮花はふぅ、と息を吐いて肩をすくめる。

「はいはい。じゃ、あたしは“後ろから見張る係”。鉄、変なこと言ったら足引っかけるから」

「厳重すぎないか、その警備」

「必要なセキュリティーよ」

 先生の「移動授業だぞー、忘れもんないかー」といういつもの声を背に、俺たちは一斉に席を立つ。四人で廊下へ。教室のドアが開くと、風が入り込んでプリントの端がめくれた。海からの匂い。白銀海聖学院の建物は海に向かって扇状に開いていて、棟と棟の間の風の通りがいい。この時間帯の廊下は、少し冷たくて、気持ちがしゃんとする。

 俺と小夜が並び、半歩後ろに甚太と蓮花。俺たちの行列に、何人かの視線がかすめていく。白い制服の袖が、廊下の白に溶ける。いつかは気づいていたけど、今日ほどくっきり感じたことはない――近づくと、彼女は少しだけ冷たい。体温の話じゃなくて、輪郭の話だ。輪郭が冷えているから、触れたら解けてしまいそうに見える。だから、言葉で温めていかなきゃいけない。

「理科、嫌いじゃないよな、椿さん」

「うん。観察するの、好き」

「だよな。今日、顕微鏡出るらしいし」

「玉ねぎの薄皮だよ」後ろから蓮花。「カバーガラス、割らないようにね」

「割るのは蓮花だろ、手元が大胆だから」

「誰が不器用よ!」

 軽口が風に流れる。いつもならここで小夜は少し引いた位置に立つのに、今日は自然と笑ってくれた。ほんの少し、口角が上がっただけ。それだけで、心拍数が一段階上がる。――トクン。
 いやいやいや落ち着け。階段の段差で足を引っかけたら人生が終わる。

「椿さん、理科棟はこっち。ほら、地理の校内マップ。俺、いまだに迷う時ある」

「ありがとう」

 渡したプリントを受け取る小夜の指先が、俺の親指に触れた。すっと、氷水をこぼしたみたいな冷たさ。驚いて顔を上げると、彼女も少しだけ目を丸くして、すぐに袖口に手を引っ込めた。

「……冷え性で。ごめんね」

「いや、全然」

 全然なんてことはない。鼓動はさっきより速く、早口で階段を駆け上がるみたいに忙しい。耳の裏側が熱い。海の風が通ってくれて助かった。

 踊り場で一度、足が止まる。掲示板には「生徒会選挙のお知らせ」「図書館フェア」「匿名掲示板の利用マナーについて」なんて紙が重なって貼られていた。――匿名掲示板。
 小夜の視線が、そこでわずかに止まったのを俺は見逃さなかった。が、彼女は何も言わずに顔を上げる。気づかれないふり、気づくふり。人間の社会はそういうのでできている。けれど今日は、四人だ。気づかないふりの座り心地を、強引に変えられる。

「生徒会長、今年は誰がやるんだろうな」甚太が空気を軽くする。「俺は推薦されても辞退するタイプです」

「アンタが推薦されるわけないでしょ」蓮花が即答。「一票、入れといてあげようか? “校内笑いの神”って肩書で」

「悪くない。神は就任する」

 歩きながら笑う。小夜も横で、小さく息を吐くみたいに笑っていた。笑い声は、海風に最適化されている。短く、澄んでいて、聞いたあとに残らない。だから、もっと聞きたくなる。

 理科棟に入ると、匂いが変わった。消毒と、古い薬瓶と、微かに湿った木の匂い。廊下の端には、使い込まれた人体模型が直立不動でこちらを見ている。いつ見ても、あれは初対面の人より存在感がある。

「おはようございまーす」

 先に入っていたクラスメイトが声をあげる。簡単な実験の準備はもうできているらしい。顕微鏡、ピンセット、スライドガラス、カバーガラス。机は二人ずつの島。
 先生がやってきて、手を叩いた。

「はい、今日は玉ねぎの表皮をはがして観察しまーす。ペアは隣同士。はい、そこ四人は前の二つと後ろの二つ、分かれて」

 先生の目線が、俺たち四人の島にとまる。自然と俺は小夜の隣に、蓮花は甚太の隣に座ることになった。椅子が床を擦る音がして、俺はスライドガラスを二枚取り、ピンセットを渡す。

「皮、薄ーくとるのがコツね」蓮花がさっと玉ねぎに刃を入れる。「――はい、甚太、薄くって言ってるのに豪快にいかない」

「豪快は正義」

「正義はたいてい壊すものが大きいの」

 俺は笑いながら、カバーガラスを指先でつまんだ。薄い。これは割るやつだ、油断すると絶対割るやつ。小夜が「貸して」と手を出す。渡す瞬間、また触れた。やっぱり冷たい。
 小夜は器用に薄皮をはがして、スライドに載せ、そっと水を垂らす。動作に無駄がない。顕微鏡のピントリングを回す指が、細くて、白い。

「覗いてみる?」

「うん。……あ、見える。細胞が、畳みたい」

「畳?」

「ほら、敷き詰められた布目みたいで。――きれい」

 きれい、か。俺の耳がまた熱くなる。顕微鏡に顔を近づけた小夜の髪が、肩からこぼれ落ち、光を帯びる。一本だけ頬にかかったのを、指で払ってやりたい衝動が、喉元まで上がってきた。やめろ。いま払ったら社会的に死ぬ。代わりに、机の上の髪留めを指さす。

「これ、使う?」

「……ううん、大丈夫」

 ほんの一瞬、彼女の目が揺れる。髪留めは誰かの忘れ物だ。見知らぬ誰かのものを、彼女は身につけない。そういうところが、きちんとしている。ちいさく頷いて俺も覗く。
 ほんとうに畳みたいだ。整然と並ぶ小さな四角。そのひとつひとつが、薄い壁で仕切られている。秩序。境界。護り。俺のなかの何かが、その単語たちに反応する。

「おい、鉄! 見えたか? 俺のはな、もうカバーガラス粉々寸前のスリル味わってる」

「割るなよ、ほんとに」

「わかってるって」

 甚太の声に振り向きかけ、指先がカバーガラスの縁をかすった。ぴり、と軽い切れ味。痛みはほとんどないが、指の腹に赤い点が浮いた。
 その瞬間、小夜の動きが、かすかに固まった。
 視線が、俺の指に吸い寄せられる。息がひと拍、深くなる。目の奥に、責めるみたいな影が閃いた。すぐに彼女は視線を外し、ポケットティッシュを差し出す。

「大丈夫?」

「あ、ああ。ちょっとだけ」

「消毒、そこだから」

 彼女の手が消毒液の位置を示す。指示は的確で、声はさっきより少し低い。俺は言われた通りにティッシュで押さえ、消毒をぱちっと弾いて指先に垂らす。しみる。
 小夜は顕微鏡に顔を戻す。けれど、その後ろ姿の肩甲骨のあたりに、固さがまだ残っている。
 ――血が、苦手なのか。
 いや、嫌悪じゃない。もっと別の、説明できない感情。うまく言語化できないけれど、直感は言う。彼女は「赤」を怖がるのではなく、「赤の先」を怖がっている。

「鉄、へーき?」蓮花の声。「男子はだいたい細かいところで怪我する生き物よね」

「偏見だろ」

「経験則よ」

「俺は怪我してないぞ」甚太が胸を張る。「豪快は繊細を凌駕するの」

「そのうち派手にいくから気をつけなさい」

 笑いで結界を張る。四人の輪は、こういう時に強い。噂の匂いも、教室の湿度も、輪の外にはあるが、輪の内側はいつでも風通しがいい。

 観察が一段落すると、先生が黒板にスケッチの例を描いた。俺は左手でスケッチ、右手は絆創膏。小夜は俺のノートを覗き込んで、少しだけ目を丸くした。

「字、きれいなんだね」

「え? そうか?」

「うん。……線も、まっすぐ」

 なんでもない所感なのに、褒められると嬉しい。嬉しいと、紙の上の線さえ少し良くなる。俺は調子に乗って影を塗り足した。塗りすぎた。

「アンタ、塗りすぎでしょ」

「うるさい、美少女」

「はいはい、できる男子は引き算も上手になりましょうねー」

「うるさい」

 チャイムが鳴る。片付け。カバーガラスは元のケースへ。顕微鏡はアームを持って、コードを束ねる。
 片付けながら、小夜がぽつりと言った。

「……ありがと」

「え?」

「一緒に、移動してくれて」

「ああ。こっちこそ」

 それだけの会話。けれど、胸の内側のどこかがじわりと温かくなる。俺たちは二人じゃない。四人だ。この人数は、「助けて」と言わずに助ける最小単位だ。

 理科棟を出ると、光が強くなっていた。雲が切れ、海側から白い日差しが廊下を満たす。窓のガラスがきらきらして、床に四角い光のプールが並ぶ。
 その光を踏む直前、小夜がほんの少しだけ足をためらわせた。
 ――眩しい?
 顔を上げた彼女の瞳が、光を跳ね返す。光は彼女の輪郭を浅く削り、影を濃くする。彼女の肌はますます白く見え、黒髪はますます黒く見える。絵画みたいだ、と無関係なことが頭をよぎる。
 足を踏み出したとき、彼女の足元がわずかにふらついた。俺は反射的に手を伸ばした。掴まえる、まではいかない。袖口が触れた瞬間、小夜はその手を避けるように一歩引き、すぐに「大丈夫」と小さく笑った。

「ごめん。……眩しくて」

「そっか」

 深追いはしない。彼女の「大丈夫」の中身は、いつでも彼女のもので、俺のものじゃない。でも、覚えておく。眩しさ、冷たさ、血の赤。言葉にならない信号は、いつか必ず意味になる。

 教室へ戻る廊下、前を行く二年の女子たちがひそひそと囁くのが耳に入った。「最近さ……」「うん、あの子と近づくと……」途切れ途切れの音。俺は反射的に振り向きそうになったが、蓮花がさりげなく俺の前に出て、視界を遮った。
 その横顔は、笑っているときと違って、少しだけ大人びて見えた。

「ねえ小夜、好きな教科って何?」蓮花が明るい声で話題を投げる。「私は体育と、図書室での自習」

「いや、蓮花は図書室で寝てるだけだろ」

「うっさいわね、睡眠学習なのよ」

「ふふ。……国語、かな」小夜が答える。「言葉の、重なり方が好き」

「わかる。比喩とか? 詩?」

「うん。――海の、言葉」

「海の言葉?」

「波の音って、日によって違うんだよ。語尾が伸びたり、早口だったり」

 小夜の声は、穏やかな水面に小石を落としたときみたいに広がって、すぐ底に沈む。
 甚太が「俺は保健体育!」と空気を読まないネタをかまし、蓮花に本気の肘鉄をくらう。笑いの間に、さっきの囁きは遠ざかっていた。

 教室に戻ると、窓からの光が少し弱まり、雲がまた流れてきた。ホームルーム前の短い休み時間、机を整えてノートを出す。四人で移動して、四人で戻る。ただそれだけのことが、こんなにも救いになるのかと、俺は自分に驚いていた。
 椿小夜は、輪の中心には立たない。立てるのに立たない。けれど、輪の中に入った。今日、確かに。俺たちの輪の中に。

 いつの間にか、心が決まっていた。
 俺は、この輪を守る。
 噂がどうとか、誰が何を言うとか、そういうのはあとでいい。まずは、笑って移動する。笑って観察する。笑って帰る。その積み重ねの先に、俺の言葉が届く場所がある。
 届かない月なんて、最初から掬えないって決めたのは誰だ。掬えないから、掬う術を考えるんだろ。海が冷たければ、火を持っていけばいい。眩しければ、影の形を覚えればいい。怖ければ、手を伸ばせばいい。

 チャイムが鳴った。先生が入ってくる。ホームルームが始まる。
 俺は前を向いた。ノートの端に、小さく波線を描く。
 視界の端、窓際の席で、小夜がほんの少しだけ姿勢を崩し、机に頬杖をついた。横顔の陰影が、柔らかい。
 ――トクン。
 心臓が、確かに鳴った。
 この瞬間、ようやく俺は認めた。言い訳も、逡巡も、遠回りもなしに。
 俺は、彼女に恋をしている。今、確かに。

 そして、四人で歩いた廊下の風が、その恋を肯定してくれた気がした。
 次の移動も、その次も。もし誰かが囁いたら、俺たちは笑いで上書きすればいい。もし躓いたら、袖口をそっと押さえればいい。もし眩しさに目を細めたら、影の下で目を慣らしてから、もう一歩、出ればいい。
 簡単じゃない。でも、やれる。四人なら。俺はそう信じることにした。信じるって、こうやってはじめるものなんだと思いながら。

 それからというもの、俺たち四人はほんとうによく一緒にいた。
 休み時間はもちろん、放課後も、週末の短い外出も、ついでがあるとだいたい四人。教室から廊下、購買から中庭、図書室の静かな机から海沿いの商店街まで、気づけば行動軌跡の多くに四本の足音が並んでいた。

 意外だったのは、小夜が思っていた以上にくだけた子だったことだ。最初の印象の「近寄りがたい完璧美人」は、少しずつ角を丸めて、笑うときに肩がすこし上がる癖や、驚くと眉尻がほんの少し八の字になる癖が見えてくる。俺たちの無駄話にもちゃんと相槌を打つ。

 昼休み。屋上の風はまだ少し冷たく、けれど日差しはやさしかった。俺と甚太は購買パンを抱え、蓮花は詰め合わせ弁当、小夜は小さな二段の弁当箱を開ける。上の段は色の薄いサラダと、雪みたいに小さいおにぎりが二つ。下の段はフルーツが少し。飲み物はいつだって水だ。

「足りるの、それ」

 つい口に出すと、小夜は首を傾げて笑った。

「うん、これで十分」

「鉄は見てるだけでお腹すくんだよ」
 蓮花があきれたように笑って、俺の購買パンをひとつ取り上げる。「はい、没収」

「返せ!それは俺の胃袋行きが確定してたやつ!」

「知らない。女子の権限で差し押さえ」

「俺の権利は?」

「ない」

「厳しすぎるだろ」

 そんなやり取りを、小夜は口元を押さえて見ている。笑っているときも、食べる量は変わらない。フォークの動きは規則正しく、噛む回数も少ない。食べることに興味がないわけじゃないのだろうが、「必要なだけ」を正確に測って摂っている感じがある。

「ねえ小夜、好きな食べ物は?」
 蓮花がそう訊くと、小夜は少しだけ考えてから、

「蜂蜜と、柑橘類」

「可愛いなラインナップ!」

 甚太が即座に突っ込む。「俺は肉と炭水化物」

「知ってる」

「鉄は?」

「新発売って書いてあればだいたい」

「男子~」

 笑いが風に混じって、校庭へさらわれていく。俺はペットボトルの水をひと口飲み、ふと小夜のボトルと目が合った。ラベルがない透明なボトル。中身は水。いつだって水。

「ジュースとか、飲まないんだな」

「苦手で」

「甘すぎる?」

「……うん。喉に残るのが、ちょっと」

 言い方がどこか申し訳なさそうだ。謝られる筋合いはないのに、彼女はときどき、誰にも責められていないところで自分を責めるみたいに言葉を選ぶ。俺は「水派、いいと思う」とだけ返した。小夜は少し安心したように笑って、また小さなフルーツにフォークを刺す。

 放課後、四人で商店街に出た。海から一本入った通りは、観光客の小さな波がいつもある。古着屋、レコードショップ、老舗の和菓子屋、路地裏の小さな喫茶店。俺たちが自然に足を止めたのは、レコードとCDを合わせて売る店だった。外に設置されたスピーカーから、懐かしいシンセのイントロが流れている。

「入ってみようぜ」

 甚太がドアを押さえ、俺たちを先に通す。木の床がぎし、と鳴る。店内には古いジャケットが並び、ところどころに新譜のポップ。店員の兄ちゃんが軽く会釈。
 俺と小夜は自然と同じ棚へ向かっていた。ラベルのタグに「CITY POP」「NEW WAVE」の文字。小夜の指が、一枚のジャケットにとまる。海辺で月を仰ぐ女性の横顔。タイトルに「MOON」の文字。

「これ、好き」

「へえ、俺もそれ、家にある」

 思わず言ってしまって、心のどこかで「持っていて良かった」とほっとする。小夜は驚いたように目を丸くし、すぐに嬉しそうに笑った。

「ほんとに?」

「親が好きでさ。小さい頃から家で流れてた」

「お父さん?お母さん?」

「母さん」

 口を滑らせた気がして、言葉の先を飲み込む。家の話は、あまり人にしない。けれど、小夜はそれ以上踏み込もうとはせず、「いいね」とだけ言った。

 別の棚で、蓮花と甚太がキャッキャしている。「これ、体育祭で流れてたやつだろ」「いやそれは別のやつ」。あいつらはあいつらで楽しそうだ。
 俺は棚から一枚取り、小夜に向ける。

「これも、たぶん好きだと思う」

「どんなの?」

「夜のドライブ向け。海辺の」

「……聴いてみたい」

 レジ横の試聴コーナーで、片方ずつイヤホンを分け合う。流れ出すイントロは、潮騒みたいに柔らかく、そのくせ奥で弾むベースが心臓の速度を少しだけ上げる。
 かすかに肩が触れた。小夜の髪から、洗い立ての匂いがした。柔軟剤の匂いは薄く、なんというか、夜風の匂いのほうが近い。

「好き」

 曲が一巡したところで、小夜が小さく呟いた。俺は頷く。

「じゃあ、今度プレイリスト作るよ。海沿いを歩く用」

「うん」

 短い返事。けれど、言葉より少し深いところで合図があった気がする。合図の意味はまだわからないが、追いかけたくなる合図だ。

 次の週末は、街のゲームセンターへ。四人でプリクラを撮るなんて、正直、人生でやるとは思ってなかった。ブースの中で蓮花が「鉄、もっと寄って」と俺の背中を押す。甚太はなぜかカメラに向かってダブルピース。小夜は「どのポーズがいいの」と戸惑っていたが、蓮花がすばやく小夜の肩を軽く抱くと、素直に同じポーズを真似た。
 出来上がりのシールを見て、俺は誰にも見せないところで少しだけ悶絶した。四人の笑顔。中央の小夜の笑みは控えめなのに、目だけが強く光っている。隣の俺の表情は、うまく作ったつもりがどうにもゆるい。――まあ、いいか。これはこれで、真実だ。

 クレーンゲームでは甚太が無駄に才能を発揮して、大量の小物を取った。「女子に配るんだ」と言って、蓮花と小夜に詰め合わせの袋を渡す。小夜は「ありがとう」と言って、しかしその夜しばらくして「私、やっぱりこれは蓮花に」と袋の半分を返した。配分の計算が、彼女なりにあるのだろう。どこまでも均等を好むのか、必要以上に持たないのか。どちらにせよ、彼女は自分の線を超えない。

 ゲーセンを出たあと、路地裏の喫茶店へ。深い色の木の扉を押すと、ベルの高い音が鳴った。窓際に席を取り、メニューを開く。
 俺はブレンド、甚太はコーラフロート、蓮花はミルクティー、小夜は――やっぱり水を頼んだ。店員さんが一瞬だけ驚いた顔をしたが、小夜は「すみません」と柔らかく頭を下げる。彼女の「すみません」は謝罪というより、目立たないように空気を平らにするための言葉だ。

「詩、読む?」

 カップが運ばれてきて、窓の外を眺めていた小夜にそう訊くと、彼女は「ときどき」と答えた。

「どんなやつ?」

「海とか、夜とか、そういうの」

「ストレートに来るな」

「比喩も好き。月を果物にたとえるの、わかる気がする」

「葡萄とか?」

「たぶん、柑橘」

「丸いから?」

「皮が剥けるように見えるから」

 俺は笑って、テーブルナプキンの端に小さな円を描いた。皮がくるりと剥がれて、内側の房が露わになるみたいに、輪郭がほどける月。彼女の発想は、絵が浮かぶ。
 蓮花が「何それ」と覗き込み、「可愛い」と言って小さなハートを付け足した。甚太は「俺は焼肉の詩なら五章まで書ける」と遠い目をして、すぐに蓮花に殴られた。

 日が傾くのが早い日、帰りのバス停で四人並んで座った。海からの風が強くなって、電線がかすかに歌う。
 俺は上着を脱いで、小夜に差し出した。

「寒くない?」

「……大丈夫だよ」

「遠慮すんなよ」

「ほんとに大丈夫だよ。ありがとう」

 彼女は言葉に少しだけ力を込めた。強い否定ではないけれど、これ以上は踏み込まないで、という線が見える。俺はそれ以上押さずに、上着を膝に戻した。
 バスのライトが角から現れて、停留所に寄せられる。座席が揺れ、吊革が触れ合う。車窓に街灯の橙が連なる。
 ふと、車内広告の医療センターのポスターの赤が目に入る。指を切った日のことが頭を過った。小夜の反応。あれは、ただの心配ではなかった。言葉にできないある種の「ざわめき」だった。
 俺は窓の外へ意識を逃がす。海沿いの道に出ると、黒い広がりに月の薄い輪郭が浮かぶ。満月ではない。けれど、波に映る月は形を問わない。揺れながら、そこにある。

 別の日、蓮花の家で勉強会をした。名目は勉強会、実質は共同で課題を片付け、最後に蓮花が作る簡単なごはんを食べよう、という会だ。
 キッチンに立つ蓮花は手際がいい。玉ねぎを刻むリズムが心地よくて、甚太が「包丁のBPMが上がってる」とか意味不明な感想を言う。俺も「これは悪魔の旋律か」と中二病的なノリで返すとキッチンに立つ蓮花に「黙って座ってろ」と怒られる。鍋から立ち上る湯気に、家の匂いが混ざって、安心する。
 メニューはカレー。中辛。
 テーブルにつくと、小夜は「少しだけ」と言って、ほんとうに少しだけよそった。スプーンで二口、三口。水をひと口。蓮花が「辛かった?」と訊くと、小夜は小さく首を振る。

「美味しいよ。……でも、今日は、これで十分」

「無理しないでね」

「うん。ありがと!」

 ありがとうという言葉が、いつもよりやわらかい。蓮花はほんの少しだけ目を細めて、追加のサラダを差し出した。
 食後、課題を進め、プリントの山が低くなっていく。甚太が眠気と戦い、蓮花が容赦なく問題を振り、俺は小夜のノートを覗いて綺麗な字に見惚れる。
 帰り際、玄関で靴を履きながら、小夜が蓮花にそっと耳打ちをしているのが見えた。内容は聞き取れない。けれど、蓮花は「任せといて」と軽く頷いた。俺の視線に気づいたのか、蓮花は「何みてんのよ」と笑ってごまかした。
 俺は聞かない。四人でいるとき、それぞれの二人の間にだけ流れる話がある。俺と甚太、甚太と蓮花、蓮花と小夜、小夜と俺。どの線も、同じくらい大事だ。

 図書室でも四人で並んだ。と言っても、席は二人ずつ離れて取る。つられて喋らないように。
 静けさの中、小夜はよく詩集を読んだ。ページのめくり方が丁寧で、紙への触れ方がやさしい。ときどき書庫から戻ってくるとき、指先に紙の粉がついている。
 俺が数式と格闘していると、影が差した。顔を上げると、小夜が一枚のメモを机に置いた。そこには、短い詩の一節と、聞き慣れない詩人の名前。
 読み終えて顔を上げると、小夜は少し離れた席で、こちらを見た。その目に何かを問うような光が宿っていて、俺は小さく頷く。
 好きだ。言葉の重ね方が、静かなのに届く。
 小夜は目を伏せ、わずかに口角を上げた。

 そして、海へ行く日が来た。
 まだ本格的な夏ではないから、海水浴というよりは、海風を浴びる散歩の日。四人で駅に集合し、海沿いの歩道を歩く。護岸の向こう、水平線は薄く白く、テトラポッドに当たる波が細かい音を立てて弾ける。
 蓮花がコンビニ袋からグミを取り出し、「海グミだって」と笑って配る。甚太は「海でも陸でもうまい」と無駄なコメントをつける。小夜は受け取って、少し匂いを嗅いでから、俺にそっと渡した。

「鉄、食べて」

「いいのか」

「うん。グレープは、ちょっと……」

 俺は礼を言って口に入れる。人工的なぶどうの香りが広がる。小夜は水をひと口飲む。
 堤防に腰を下ろし、四人で同じ方向を見る。漁船が小さく点になって、遠くの音は風に溶ける。
 蓮花が足をぶらぶらさせながら、ふいに俺の肩を小突いた。

「鉄。最初に小夜のどこが好きになったの?」

「今、本人の前で訊く?」

「今だから訊く」

 小夜は目を丸くして俺を見る。甚太はにやにやしている。逃げ道は完全に塞がれた。
 俺は息を吸って、正直に言った。

「笑い方。……あと、言葉の選び方」

 小夜の肩が、わずかに震えた。笑ったのだと気づくまで、半拍かかった。

「鉄のそういうところ、好き」

 言われた言葉が、波より速く胸に届く。蓮花が「よかったじゃない」と背中をどん、と叩いた。俺は前のめりになり、海に落ちる寸前で踏ん張る。危ない。

「お前ら、ここで青春の一ページを海に捧げるなよ」
 甚太が笑い、蓮花が笑い、小夜が笑う。俺も笑った。
 その笑いの余韻の底に、しかし、小さな棘のような不安が引っかかる。
 小夜は、時々、まるで長い距離の向こうからここに来ているみたいな目をする。今も、そうだ。近くにいるのに、遠くにいる。
 手を伸ばせば届く場所にいるのに、触れたら消えてしまいそうな、不安。

 夕方、雲が切れて、月が早い時間から姿を出した。満ちきってはいないが、海に白い道を落としている。
 帰り道、堤防から降りたところで、小夜が立ち止まった。月を見上げる姿は、初めて出会った日の教室で見た横顔と、重なる。

「月、好きだなあ」

 ぽつりと零れた言葉は、ため息より軽く、祈りよりやさしい。

「俺も」

「鉄は、どうして好きなの?」

「……海に浮かぶと、近く感じるから」

「近く、感じるだけ?」

「だけ。でも、それで十分だって思える」

「そっか」

 小夜は目を細め、海に映る月を見た。その横顔は、どこか哀しくて、どこか満ちていた。
 俺は何か言おうとして、言葉をやめた。言葉は道具だ。便利で、時に鋭い。今、ここで必要なのは、たぶん沈黙のほう。
 四人の足音は、帰りの歩道に規則正しく刻まれる。コンビニの前、ポスターの赤がまた目に入る。血の色。
 小夜は視線をそらした。ほんのわずかに、呼吸が乱れた気がした。
 俺は何も言わなかった。ただ、歩幅を合わせた。

 日々は流れていく。
 四人で笑い、四人で移動し、四人で同じ景色を見た。
 店からの帰り、雨に降られて、四人で一本の大きな透明傘に入ったこともある。透明な天井に雨粒がたたきつけるたび、光が歪んで、四人の顔に不規則な模様を描いた。小夜の頬に水滴が滑り、顎で砕ける。拭く布を差し出すと、彼女は「ありがとう」と言って受け取る。肌が冷えているのは、雨のせいだけではない気がした。
 校舎の陰で、上から落ちてきたテニスボールを甚太がノールックでキャッチして「手が勝手に」と笑った日、蓮花は素直に「すごい」と言った。小夜は「目がいい」と拍手した。俺は「お前らの反射神経、どうなってんだ」と悪態をついた。
 図書室で、俺が書いた稚拙な短文を小夜に読ませてしまった日、小夜は「好き」と短く言った。照れ隠しに「具体的にどこが」と訊くと、「鉄の声が聞こえる」と返ってきて、俺はしばらくのあいだ、紙と向き合えなくなった。
 そんなふうに「四人の当たり前」が重なって、日記のページがいくつもめくられていく。

 そして、気づく。
 俺の心は、どんどん小夜に惹かれていった。
 それは、派手な音もしないし、誰かに見せられるドラマでもない。水面の下で潮が満ちていくように、静かに、確かに、進行する。
 好きな音楽が似ていた。
 好きな言葉の手触りが似ていた。
 食べ物の好みは違うのに、選び方の基準が似ていた。
 風の匂いの嗅ぎ分け方が似ていた。
 ――そして、どこか、懐かしかった。

 まるで、幼い頃から知っていたかのような感覚。
 実際には会っていない。記憶をいくら探っても、小夜という名前の子どもは出てこない。けれど、感覚が先に頷く。「知っている」と。
 この感覚の正体を、俺はまだ知らない。
 ただ、その正体を知る必要は、今はないと思った。
 知ろうと焦って、何かを壊してしまうくらいなら、知らないまま、隣で笑っていたい。そう思えるくらいには、彼女の笑顔が、俺の毎日を整えてくれた。

 四人でいる時間は楽しい。
 でも、四人の中で二人になる時間が、少しずつ増えた。
 たとえば移動の廊下で、ふと歩幅が揃って、前後の二人が少し遅れてくる瞬間。
 たとえば教室で、蓮花が誰かに呼ばれ、甚太が先生に捕まって、二人だけで窓辺を眺める瞬間。
 たとえば帰り道、信号のタイミングで二人だけが横断歩道を渡り切って、向こう側で立ち止まって待つ瞬間。

「鉄って、どうしてそんなに海が好きなの?」

 そんなとき、小夜は唐突に質問をする。
 俺はうまく答えられない。
 いつから好きだったのか、わからないのだ。気づいたら、好きだった。
 だから、こう言うしかない。

「泣けるから、かな」

「泣くの?」

「泣ける、かな。海見てると、涙腺の上にふたがない感じになる」

「ふた」

「そう。ふた。普段は乗ってるんだよ、多分。日常の重し、みたいなのが」

 小夜は楽しそうに笑った。
「ふた、ね。……鉄には、必要なときに開くふたがあるんだね」

「小夜には?」

「私は、ふたがないと、困る」

 そこで彼女は言葉を止めた。
 俺も、それ以上を訊かなかった。
 彼女の「ふた」は、彼女が自分で開けるか、閉じる。
 俺はその手元を見てればいい。
 必要なら、隣で蓋の縁を押さえることはできる。けれど、無理に開けるのは違う。

 そんなふうに、俺は彼女に近づき、彼女は俺に少しだけ傾き、四人の輪はほどけず、日々は静かに進んだ。
 その静けさの底に、ごく小さな濁りが生まれていることに、俺はまだ気づかないふりをしていた。
 掲示板の紙、匿名の噂、すれ違いざまの囁き。
 それらがやがて形を持って俺たちの前に現れることも、まだ先の話だ。

 今はただ、窓の外の光がきれいで、机の上の影がやわらかくて、廊下の風が塩の匂いで、隣にいる彼女の笑い声が、波の音に似ていた。

 ――そうやって、俺の恋は、静かに深く、満ちていった。
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