怪奇談士と訳あり妻

しきしまそう

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8.部屋のものたち

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朔夜が自室の障子を開けると、その部屋の中には、たくさんの書物と、よく分からない物たちが所狭しと並べられていた。人形であったり、お面のようなものであったり、不気味な女性が描かれいる絵であったりと、普通の人の部屋には置いてなさそうな物ばかりが置かれてあった。

光の入らない部屋なので、薄暗さも相まって、より不気味さを増していた。

しかし彗星は叫び声をあげたり、怖がったりする様子もなく、部屋の中をゆっくり見渡していた。

部屋の中の物たちはそれぞれ彗星に語り掛けているのだ。その言葉を聞き逃さないよう、物たちに向き合っている。

「…怖くはないんですか?」

「…はい。見た目は確かに不気味…なものもありますが、ここに置いてある物たちは私を怖がらせようとはしていませんから…むしろ…喜んでこの部屋に迎えている感じがします」

物たちは口々に、おお!初めて朔夜の嫁が部屋に来てくれた!朔夜が頑なにこの部屋にいれてくれなかったからな、私たちのことちゃんと紹介してくれたらいいのに…と、彗星に好意的な言葉をかけていた。

この物たちの声に聞き覚えがある。朔夜の自室の前に訪れた時に聞こえてきた声だった。

部屋の中から女性のような声が聞こえてくるとは思ったが、その声の主は女性が描かれている絵からだった。彼女は他の物たちよりおしゃべりで声が大きい。彗星が持っている人形の気配にも気づいたのか、新入りよ!新入りが来たわ!とはしゃいでいる

「ここにある物たちの声も聞こえているんですね」

「はい…」

「そうなんですね、ここにある者たちは先ほど言っていた、家の前に置いていかれた多分曰く付きの物たちです」

そうか、ここに置いてある物たちはこの人形のように、何か恐ろしい出来事に耐え切れなくなり、持ち主が朔夜に託した…勝手に置いていったものなのかと彗星は頷いた。

物たちは口々に自分の来歴を話始めるのだが、あまりにもいっぺんに喋るので、さすがの彗星も全てを理解するのは困難だった。

「あの、もしかしてこの物たちの持ち主や、物の曰くを私に聞いてほしいということですか?さすがにたくさんあるので時間はかかりますけど…」

「いや、別にそういうわけではありません」

彗星の頭の上に疑問の記号が浮かぶ。彗星は自分のこの特異な能力は、朔夜の仕事の役に立てるのでは?そう思っていた。実際、今回の出来事も彗星が朔夜を想う気持ちが行動を起こしたのだ。だが、当の本人である朔夜は、彗星の能力を使いたいという気はあまりなさそうだった。

「じゃあなぜこの部屋に…?」

「私にはここにある物たちがどんな物なのか分かりません。中にはかなりの呪力を持つ物があるかもしれない…そう思っていました。もし強い呪力があれば貴方にも影響を及ぼすかもしれいない。でも今の話を聞いたところ、それはないようなので安心しました」

つまり朔夜はここにある物たちが彗星に悪影響を及ぼす物ではないか、彗星自身に確認してほしかったということだった。

「えっと…部屋に連れてきた理由はそれだけですか?」

「まあ…そうですね、それに一度はこの部屋を見てもらわないととは思っていましたし。泣いて逃げられるかと不安はありましたが」

逃げられるか不安だった。その一言が彗星の胸に突き刺さった。この人は自分に逃げられるのは嫌だと思っている…?それは世間体なのか、どうなのかは分からない。でも自分と婚姻関係を続けたいと思ってくれている。それだけでも彗星の心を満たしてくれたのだ。

「あの…私が物の声が聞こえるというのは…あまり気にしないんですか?」

ずっと気になっていたことを自ら聞いてみることにした。彗星に物の声が聞こえるかということは聞いてきたが、そのことについてどう思っているかどうかはまだ朔夜は言及していたなかった。

彗星の胸が脈打つ。自分から聞いたことだが、今までの経験のことを思い出すと自然と体が固まってしまう。朔夜はゆっくりと口を開いた。

「貴方が物の声が聞こえるというのは、縁談の話が来た時に聞かされていましたし」

「えっ!?」

彗星の驚きの声が部屋の中に響き渡った。

ああやはり…自分の特異な能力を知っていたから、自分にはあまり好意的ではなかったのかな…と彗星は落ち込み、項垂れる。

「…まあ私も似たようなものなので」

という朔夜の言葉に彗星は首を傾げた。
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