いなくなって、若返ったお父さんは、私のヒーローになって、永遠の共犯者になった。

かざみはら まなか

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第3章 混じり気のない黒は、濁りのない白と同じくらい純粋で強烈。だから、惹きつけられる。

27.取り除いて仲良しだと笑い合う医者の家族に、いつまでも膿む傷を残して、医者のことを忘れずにいさせる方法。

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医者を誹謗中傷していた人は、今、医者ではない別の誰かの誹謗中傷で忙しい。

誹謗中傷には、中毒性があって、一度手を染めると、自分では止められないのかもしれない。

医者がターゲットになっていないなら、構わない。

私のすることの妨げにならないなら、中毒者がどこで何をしていたって、私は気にしない。

医者が、注目を集めていない、この好機を活かそう。

仕事で、医者を誹謗中傷していた人に、私が働きかける方法はない。

私は、仕事を依頼するわけじゃないから。

ネットで医者を貶めたかった人をさらして、貶める行為は、やりたいと思って、やる気がある人がやる分には止めないけれど。

今まで、医者のために正義を掲げる人がいなかったのは、誰にもおいしい役回りじゃなかったせい。

これからのことは、これから。

今の医者を誹謗中傷しても儲からないから、ネット上の医者は無風。

まず知りたいのは、良い噂と悪い噂のどっち?

信じるのは、どっち?

どっちを信じて行動する?

医者は、一般社会からはフェードアウトしたも同然だから、誹謗中傷したところで、誰からも見返りがない。

見返りがない、つまり儲からない。

医者を誹謗中傷する仕事が発生しない。

どちらからも、医者が、ターゲットになっていないなら、私には都合がいい。

気分よく、医者の家族を見守りに行ける。

私は、大きな口を従えて、姿を隠して医者の家族を見守る。

医者の家族の元には、これから、来訪者が相次ぐことになる。

外出していた息子の元を訪れた来訪者はカメラを回していた。
「お父さんにお礼を言いたいのですが、なかなかお会い出来なくて。いつ頃なら、会えそうか、聞いてきてもらえませんか?」

奥さまの元に訪れた来訪者は、人目もはばからずに、大きな声でお礼を言って去っていった。
「ご主人に感謝を伝えてください。ご主人に救われました、と。」

娘の元に来た来訪者は、あなたのお父さんは、素晴らしいと人前で大絶賛。

息子と娘は、父親について、奥さまは、夫について、周囲に話をしていなかったため、それぞれ、出先から急いで引き上げてきた。

三人が、家にいるタイミングを狙って。

患者だった人が、時間差で家にくる。

「ご主人にお礼を伝えたくて。誹謗中傷が大変なときに、応援できなくてすみませんでした。」

「お父さんがいてくださったから、人生を悲観せずに生きてこれました。ありがとうございます。」

お礼を言っては、去って行く人達は、夜の九時前まで断続的に続いた。

医者の家族のご近所さんにも聞こえているだろう。

誹謗中傷している人は一人もいない。

全員、医者を讃えて、感謝の言葉を残して去っていく。

医者の住んでいない家に赴き、いない医者への訪いを家族に告げ。

医者を切り捨てた家族に、医者への感謝と共に、誹謗中傷に対して戦えなかった懺悔や後悔を伝える患者だった人達。

医者を切り捨てた家族によって、医者が家族の元には帰れないことを知らない患者は、家族のことも医者のことも悪く言わない。

人を追い詰める方法は、人を貶すだけじゃないって、教えてあげる。

誹謗中傷は、匿名でも、賞賛するときには、匿名じゃない人もいる。

追い詰めるために、褒めて、褒めて、褒め称える方法もある。

医者の家族は、斬りつけて、切り捨てて、いなくて良かったと安堵していた医者が、とても価値のあるものだったと、今になって知る。

気分がいい。

久しぶりに、すっとする。

大きな口が、私の横でケハケハと笑う声は、まるで拍手喝采しているかのよう。

患者の何人かは、かつて、誹謗中傷に参加していたみたいだけど、家族にそのことを告白した人はいないから、家族は知らないまま。

切り捨てた医者のこと、心と人生に刻みつけて生きていけ。

傷になれ。

深くなくていい。
浅くていい。

残る傷になればいい。

じくじくと膿む傷になって、いつまでもあとを引いていればいい。

医者が負うた傷には見合わないままでも。

それでも。

何もないよりは、いい。

楔と共にあれ。
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